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思うにこれは恋

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ギャンレルは土の曜日が来るのを待った。
その日は誰にも見られないようにして、城を出て、イーリス城の城西の砦へと向かった。

丁度、日が地平線へと沈むころだった。
砦の裏に林があった。
そこに目を凝らし、腕を組みながら、ギャンレルは言った。
「よぉ!いるんだろう!
 ファティス!」
すると、ギャンレルの目線の先から、人影が動き、彼の方へと歩いてきた。
高位の呪術師のコート着た男は、ギャンレルの前へ行くとフードをとった。
そして、その人物は恭しく跪くと、
「お久しぶりです。ギャンレル様。」
ファティスと呼ばれた男は、ギャンレルよりもやや年下の男だった。
中肉中背で黒髪のくせっ毛の男は、顔を上げた。
「ご無事で何より!噂は違ってはいなかった。
 お懐かしいです・・・。ギャンレル様。」
そう、答えた。
「はん!確かにおめーの顔を見ると懐かしいわ。
 ペレジアを思い出す。」
ファティスと呼ばれた男は、ギャンレルの乳兄弟だった。
乳兄弟といっても、身分が低いものではない。
彼の母はペレジア王家の遠い親戚で、乳兄弟となり、もともと頭のよかったファティスは側近として出世し、ペレジアでも交換の地位を得ていた。
「ギャンレル様。私は心底驚きました。
 あなたの生きている姿を見て。」
感動したのだろう、少しの間ファティスはギャンレルの顔をしげしげと見ていた。
「あなた様の遺体は、あの混乱の中、とうとう探しても見つけ出せなかった。
 それから国中という国中を血眼になって探させませましたが、やはり見つからなかった。
 そうした頃に、風の噂が私の耳に入りました。
 そうしたらなんと!あのあなた様らしい人物がイーリス軍にいるというではありませんか。
 私は真実を確かめるべく、その噂を探りました。
 すると、本当にいるではありませんか!」
ファティスは本当に心底驚いたのだろう、ギャンレルはそんな彼に苦笑した。
「はは。確かに、驚くはな〜。
 これには色々と事情があるんだ。
 なんせ、オレは国王から一転海賊にまで成り下がっちまったこともあるんでね。」
皮肉げに笑った。
その笑いに、ファティスは頷き。
「ギャンレル様、やはりあなたは面白い方ですね。」
と、答えた。
「なんだ?乳兄弟のおめーまで、オレのことをバカにするのか?」
「いえいえ、とんでもありません。」
そのちょっとからかった挑戦的な態度に慣れているのか、ファティスは手をひらひらと振った。
「ええ。あなた様も事情がいろいろあったでしょうこと、このファティスよく理解できます。
 しかし、あなた様もいろいろあるように、ペレジアもいろいろあるのですよ。
 それをお分かりで?」
優しい口調だが、どことなく厳しいさも含まれていることを笑顔でファティスは話した。
彼はギャンレルのことを自由にさせてはくれるが、国のことに関しては手厳しい乳兄弟に、ギャンレルは首をすくめた。
「今や、ペレジア王国の王政はファウダーとあの女によってひどい有様です!
 そのやり方にギムレー教に回収されていないまともな国民は反発しました。
 すると、その民をファウダーは次々と処刑して回っているのです!」
ファティスは、その光景を思い出し、苦虫をつぶしたような険しい表情になった。
「なに!?そいつはひでぇ!!
 まるで、オレの昔と同じじゃねぇか!」
「・・・確かに、ギャンレル様のやり方も褒められたもんじゃありませんでしたけれどね。
 私はあなたのせいで何度殺害されそうになったか分かりませんから。
 身分はあれど、肩身が狭かったですよ。」

「しかし、あなた様は一部の裏切りを行った者に対してだけ制裁を課していました。
 ファウダーは違います。
 国民の誰かれかまわずなのです。
 今やペレジアでは、反体制派のレジスタンスが結束されつつあります。
 そして、そこにあなた様が生きている噂が流れ、あなた様を王に戻せと、民は口々に申しております。」
「・・・。」
ファティスの話を聞き、ギャンレルは過去を思い出していた。
いい政治をしたとは自分では思えなかったのに・・・。
今さらのように、過去の自分の行動が悔いてならない。

「あなた様の政権下では、民は潤っていましたから・・・。
 民にとって、あなた様は悪いことだけを行う国王ではなかったということです。」
「くっ!」
ギャンレルの苦しそうな表情に、ファティスは少し笑顔になった。
「あなた様の行ってきた行為は、あなた様の手によって償うべきではないでしょうか?
 私は、あなた様のことを精一杯サポートさせていただきます。」
そして、ギャンレルの傍に寄って行き、肩をぽんと叩いた。
「くそっ!
 ファティスすまねぇ!
 オレは今は帰れねぇ。」
「どうしてです?」
「帰りたい!
 今すぐにでも帰りたいが、オレにはギムレーを倒すという仕事が残っているんだ。」
「神を倒すのですか・・・。確かに、西の空に浮かぶ不気味な竜を見ました。
 それと関係があるのですね。」
「オレのことをサポートしてくれるっていうなら、オレの代わりに・・・それまでどうか持ちこたえてくれないだろうか?」
ギャンレルの目は真剣だった。
ファティスは静かに目を閉じた。
これまでギャンレルに仕えてきて、一度でも主人が自分に対して謝罪をしたことがあっただろうか・・・
本当に、自分の主人は変わりつつあると、彼は確信していた。
しばらくして、目を開け、笑顔でファティスは答えた。
「わかりました。」
「そうか!わかってくれるか!」
その答えに、ギャンレルの顔は明るくなった。
「いいですか、できるだけのことはやります。
 決してファウダーのいいようにはさせません。
 あなた様の王座も私が死守します!
 ですから、必ずペレジアへお戻りください!
 ペレジアには、やはりあなた様が必要なのです!」
ギャンレルの胸は熱くなった。
どんなことがあってもペレジアのことだけは忘れたことはない。
彼はもちろん誰よりも深く故郷のことを愛していた。
「当たり前だ。」
その決意を聞き、ファティスは深くうなずくと、フードを被った。
「必ずです。
 次に会うときは、ペレジアです。」
そう言い残し、その場を後にした。

残されたギャンレルは西の空を見た。
赤く染まっている。
この向こうに我が故郷ペレジアがある。
「必ず帰ってみせる。
 ペレジアへ。」
そう、心に誓った。
作品名:思うにこれは恋 作家名:ワルス虎