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思うにこれは恋

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霧はマークの後ろをなかなか離さないかのようだったが、それを振り切った。

「うわ!まぶしい!」
まるで厚い雲から出てきたように、森から出たマークの頭上には輝く太陽があった。
突然の環境の変化にマークは額に手を当てた。
そして、目をしかめながら、あたりを見ていた。
その場所は小さく開けた場所だった。
「ここは・・・」
そこは、イーリス城のはずれの森だった。
時々訪れる憩いの場所。
風が吹き木々が音を立てた。
石畳みが敷かれていて、近くには泉があった。
泉からはこんこんと美しい水があふれ出てきていた。
ゆらゆらと水面が揺れ、太陽の光を受けて光を放っていた。
その周りに黄色や白の花が咲き、ひらひらと蝶々が舞った。

そして、その場所にありえないはずの人物が立っていたのだった。

髪は深い赤色をしていた。
その人物は人の気配がして振り返った。
マークは振り返った彼と目が合い、目をあらん限りに丸くした。

「ぼ・・・僕!?」

それは、髪の色が赤いもう一人のマークも同じだった。
呼び止められたマークの目は死人でも見ているかのようだった。
「え!?なんで!?」

お互いが目を見張り、そして指をさした。

目の前に自分と瓜二つの人物がいるのだから驚いて当然だった。
「あなたは誰なんです!?」
「そ・・・それはこっちが聞きたいですよ。
 僕はマークです。
 あなたは誰なんです?」
「もちろん、僕もマークですよ。」

ううむ・・・。
自分はマークで、もう一人の自分と同じ顔の少年もマークだという。
これは一体・・・。

二人はしばし睨み合って腕組みをした。

マークは考えた。
自分は記憶喪失だ。
『ベースが記憶喪失の自分は、父や姉を忘れている意外に自分についてもっと忘れていることがあったかもしれない。』と。
それが、今目の前にしている自分と全く瓜二つの人物なのではないか?
姉を忘れているぐらいだ。
自分が双子であったっておかしくはないわけで・・・。
腕組みをし、マークはじぃーっと自分と同じ顔をした人物を見た。
前に父クロムをじーっと見たときに、何か思い出すかもしれないと思ってやった方法をここで使ってみても結果は同じだった。

「だめです!思い出せない!
 やっぱり、僕の姉弟はルキナさんだけなはずです!」
と、マークはなさけない表情で叫んだ。
「あなた、僕の双子の兄弟?なーんてことはないんですか?
 だって、とても他人とは思えない。
 こんなに顔が似ているんですよ!?」
そして、マークは彼に詰め寄った。
記憶喪失の自分が忌々しい!
思い出せ僕!と、ばかりに、頭をぽかっと叩いてみたが同じだった。
そんなマークの言葉と行動に驚いたもう一人のマークは、これまた意外だという顔をした。
「た・・・確かに、他人のそら似とはとても思えないんですけど。
 僕に双子の兄弟も、普通の兄弟もいないんです。
 僕は一人っ子なんです。」
そう、もう一人のマークはそうきっぱりと断言した。
「で・・・では!僕の親戚か何かなんでしょうか!?」
「し・・・親戚!?」
マークは悩んでしまった。
口の中で、なにやらぶつくさ言っている。
リズさん。フレドリックさん。ウード。は!もしかしてエメリナさんの子供!?
「うーんうーん・・・!
 思い出せない・・・!!
 そんな人いましたっけ・・・?」

突然のことに頭を抱えているマークに、もう一人のマークは自分とよく似ているマークを観察した。
「僕も親戚に、僕と同じような人はいなかったと思います。
 親戚ではないんじゃないですか?」
「親戚じゃないとしたら、なんなんですか!?」
こっちのマークは頭が混乱している。
まるでドッペルゲンガ―にでもあったかのような顔つきだ。
「ですから・・・
 あなたはマークなんでしょう?」
「はい。僕はマークです。」
「僕もマークだ。
 きっと、僕らは親戚や兄弟なんかじゃない。
 本当にマークなんですよ。」
「ええ!?」
「僕・・・あなたのことを失礼ですけど観察させていただきました。
 僕たち顔も着ている服も瓜二つなのに、ひとつだけ違うところがあるんです。」
そう、もう一人のマークは穏やかに答えた。

そうだ。
マークは、もう一人のマークから言われて、もう一人の自分自身によく似た男を見た。
頭の先からつま先まで。
まるで品定めするかのような目つきで。
混乱していたから見落としていたが、よく見ると、もう一人のマークは髪の毛が赤い。
それ以外は、やっぱり目・口・鼻・身長と共に声質、しぐさまで一緒だ。

「見た目からると、僕の髪の毛の色は赤。
 あなたは青色だ。
 ここが違う。」
もう一人のマークは自分の赤い髪の毛を左手で触って見せた。

そうなのだ。
もう一人のマークが言うように、髪の毛の色が決定的に違うのだ。
違和感があったのはこのせいだ。
では・・・もしかして。
マークははっとして思った。
前に聞いたことがある。

『異界の住人』

そうだ。これだ。
書物では読んでいた。
この世界は異なる次元があって、それが時に蜃気楼のように見え、すれ違う場所があるということに。
まさか!

「あなたのお母さんの名前はなんとおっしゃるんですか?」
「僕の母さんの名前はルフレです。」
「!」

「やっぱり!」
「というこはあなたも?」
「ええ。そうです。
 僕の母さんもルフレという名前なんです。」
「これはどうも偶然の一致ではなさそうですね。」

「どうやら僕はパラレルワールドに迷い込んでしまったようです。」
「なるほど!噂には聞いたことがあったのですが・・・
 本当にあるとは思ってもみませんでした。」
これで納得したとマークは思った。
目の前にいるのは、そう。
正に自分自身なのだ。
異なる次元の世界で生きる住人。
自分であって自分ではない存在。
妙に納得して、マークは笑顔になった。

でも、とすると・・・
謎は、もう一人の自分の髪の毛の色だ。

自分は青色をしているのに、もう一人の自分は赤色をしている。
これはひょっとしてひょっとすると・・・

赤い髪赤い髪・・・
誰かいましたっけ・・・
瞬時にさーっと背中に変な汗が流れるような気がして、マークは自分の軍の男性陣を思い出した。
何人かいたような気がする・・・

「すみません。
 では、あなたのお父さんはどなたなんですか?」
恐る恐るマークは確信についた質問を投げかけた。
あまり聞きたくはなかったが、それはやはり人情というものだろう。
マークはごくりと唾を呑みこんだ。
作品名:思うにこれは恋 作家名:ワルス虎