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思うにこれは恋

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第2話 湖面に浮かぶ花


その日は少し寝苦しく、なななか眠れない夜だった。
空気は重く、何度もルフレは寝所で寝返りを打った。
こんな夜に目を閉じてもいい考えなど浮かぶはずもない。
そんなときに、自室の窓の外からほんの少しの隙間風が入ってきたのだろう。
部屋の隅のほうで、ジジッと小さな音を立てて燃えていたろうそくがその風により消えた。
その消えた瞬間を横目で見たルフレは、隣でやすらかな寝息を立て眠る夫を起こさないようにとベッドから滑るように抜け出したのだった。

「ふぅ。」
ルフレは首にまとわりつく自分の銀髪を手で払った。
白いドレスの夜着の上にストールを羽織り、自分の執務室へと向かった。

入ると、自室の部屋のキャンドルを点け、彼女は自分の机を見た。
机の上は朝から晩まで仕事をしても減ることがない書類が積み上げられている。
そんな自分の机を見て、ルフレはくすりと苦笑いし、席へと着いた。
座って、その書類の間から見る景色は彼女に安心感を招いた。
「困りましたね。私も根っからの仕事人間のようです。」
ルフレはその積み上げられた書類から一枚を手に取ると、仕事を始めた。

「う〜んん〜!疲れました〜!」
あれから淡々と仕事をこなしていたルフレは、背伸びをした。
ふと窓の外を見ると低い位置にあった月が徐々に天井まで登ってきていることに気が付いた。
「ふふ。こんな時間に起きて仕事をしているのは、このイーリス城では守衛さんと私だけかしらね。
 イーリス軍のみなさんは、朝型の方が多いから。」
そんな朝のイーリス軍の情景を思い浮かべてか、ルフレはくすくすと笑った。
きっと、あと数時間の内に、あの執事兼騎士が朝早くから起きて、訓練場から掛け声が聞こえてくるに違いない。
そろそろ寝ないと、みんなの朝の掛け声を聞くのは辛くなるかもしれないと思い、ルフレは立ち上がった。
寝室に戻ったほうが賢明だろう。

こつこつこつ。
イーリス城の石の回廊に自分の靴音だけが響き渡った。
窓からところどころ、ぼんやりとした月明かりが漏れ、点在する木を組んで作られた篝火がなければ足元も見えない。
古れはファイアーの魔法で小さな明かりをつけながら階段を上った。
そんなとき、ふと、自分の後ろの窓を覗いたときだった。
下を見下ろすと、城の住人の誰かが森の入口へと歩いていく姿が見えた。
「まぁ!こんな時間に・・・」
彼女は思った。
こんな夜中に自分と同じく眠れない方もイーリス軍にはいたんですね!と。
「でも・・・一体誰なんでしょう?
 こんな夜更けに、もしかすると屍兵が潜んでいるかもしれない森へ入っていくのは危険じゃないですか!」
と、不意に思った。
そう思うと、彼女はその人物を止めるために走っていた。
もっとも、そんな優しい考えをするのはイーリス軍の中でも少ないかもしれないが・・・
賢いミリエルが同じ状況を見たなら、こんな夜更けに危険な森へあえて入って行くということは、何か企んでいるのかもしれないと思うに違いなかった。
いや、戦いを控えている緊張した状況でならそちらのほうの考え方のほうが当然かもしれない。

純粋な彼女は、そんなこと微塵も考える間もなく、その影が消えて行った森へと吸い込まれるように入って行った。
作品名:思うにこれは恋 作家名:ワルス虎