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胡蝶の夢 (Fairy Tales epi.3張飛)

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「張飛……、だめよ、こんな」
「お願い。ちょっとだけでいいから、確かめさせて。……姉貴の本気を、さ」
「っ……」

 大人になりたい、関羽に追いついて彼女を守れる男になりたい。そんな願いを持つ自分が、こんな子供っぽいことをする。それとも子供っぽいことをするから、大人になりたいと、自分は願うのだろうか。どちらにしろ、所詮こんなことは只の自分のわがままだということも、張飛はちゃんとわかっていた。勝手に自分が見た夢で彼女に「嫌い」と言われ、勝手に不安を覚えて、こうして彼女を求める。
 だからこれは賭けだ。彼女が自分を受け入れてくれるか、只の子供のわがままとして見るのか、恋人の戯れとして見るのか。

「ちょ、張飛、わかったわ。わかったから……お願い、少しだけ、話を聞いて」
「うん」

 素直に頷いて、張飛は少しだけ距離を空けた。至近距離で瞳が交わる。関羽はすっと息を吸い込み、張飛に目を向ける。その瞳に宿るのは、まるで武将に対峙しているときの様に、負けるものかという闘争心にも似た光。あ、と張飛は声を漏らしかける。張飛の好きな瞳だった。この瞳に、いつも憧れていた。