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こらぼでほすと ニート14

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 飲めないことはないが、気分的は、そうじゃないから断った。それなら、好きにしていなさい、と、トダカも放置する。寺ほどではないが、トダカ家もオールフリーな環境だ。
「ニールが静養に帰ると言ったから、明日からアマギも顔を出す。それほど詰めてくれなくても、適当にしてくれていいよ、ハイネ。」
「助かります。じゃあ、明日、ちょっくらラボまで遠征してきますんで。」
 リジェネの監視ばかりしていられない。『吉祥富貴』は、少数精鋭だから、ハイネが休めば、その負担が他に廻る。今回は、アイシャがハイネの代理に、ラボの管制室の担当をしてくれているのだが、当人も日々のデータはチェックしておきたいので、何日かに一度はラボに戻りたいと思っていた。
「アマギも、ニールには甘くてね。うちのは、みな、ニールのことが可愛いいらしい。静養していると言ったら、見舞いがてらに顔を出すんだよ。」
「あの性格だし、トダカさんが、甘やかしまくってるんだから、そうなるんじゃないですか? 」
「あははは・・・心配もしてるんだ。体調のことは、みな、知ってるからね。」
 トダカーズラブの面々にしてみれば、トダカが娘として可愛がっているニールのことになると、同じように接することになる。時折、里で静養するほど体調が悪いとなると、やはり心配になるし何年も、それと付き合っているのだから、トダカーズラブの面々にとっては気分的には、トダカさんの可愛い子供ということになるからだ。トダカとニールのツーショットは、ほのぼのと癒されるから好評だったりもする。
「最近までは安定してたんですがねぇ。そろそろ漢方薬でも限界なのかもしれない。」
 漢方薬治療を始めてから、ニールの体調は格段に安定した。だが、あれから三年近く経過している。数値からみても、以前ほどの安定はしていないから、ハイネも、じじいーずたちも気にしている。細胞異常自体は広がっていないのだが、異常な部分の悪化は止められない。クスリで広がる速度自体は抑えているのだが、それでも徐々に悪化はする。
「限界って、なに? ハイネ・ヴェステンフルス。」
 横で、果物を摘んでいたリジェネが慌てて聞き直す。それは、とてもマズイことだったはずだ。
「細胞異常の増殖を抑えてるんだが、抑えきれなくなるかもしれないってことだ。・・・・これは、ママニャンにはオフレコでな? リジェネ。だから、身体を休めさせるために、里帰りしたんだ。おまえも看病してくれるつもりなら、無理に動き回るのは止めてくれ。」
「ママは死ぬってこと? 」
「そこまでじゃない。疲れすぎて寝込まないようにするのが、最善だからだ。あいつ、案外、神経が脆いんだよ。だから、寝込めば悪いことばっか考えるし、それで落ち込んで余計に回復が遅くなるという厄介な性格なんだ。だから、何も聞かせたくないんだよ。」
「随分と愚痴は言うようになったけどね。」
「俺には吐きませんよ、トダカさん。」
 ぐいっとコップ酒を煽って、ハイネは自嘲する。三蔵には、いろいろと吐いているらしいが、ハイネには、あまり言ってくれない。長いこと、一緒にやってきている仲間としては、それは寂しいものだ。
「ハイネが、気にするからだろ? 三蔵さんは、愚痴ったらハリセンで叩くらしいからね。」
 ハイネも、ニールには甘い。それに、カルテで状況を把握しているので心配度合いも大きいから、ニールのほうも極力、心配させないようにしている。寺の坊主は、心配はするが、それを絶対に顔には出さないし、ニールが愚痴っていても、適当に流している。だから、言い易い。どちらも対応が違うのだから、ニールも相手で変えている。それらをトダカが説明したら、ハイネも苦笑する。まったく、その通りだからだ。
「けっっ、わかってますよ、トダカさん。・・・・ママニャン、人の表情を読むのが上手いんで、俺のはバレるんです。」
「だからね、リジェネくん。看病とか難しいことは考えなくてもいいんだ。とりあえず、うちの子の側にいて話しかけてやってくれればいい。ティエリアくんだって、そうしているよ? 」
 リジェネに解るようにニールの取り扱い方を説明すると、概ね、そういうことになる。要は一人にしなければいいのだ。一人で考えて落ちこまさなければ、体調は早く回復する。何もできないリジェネがいれば、自分がしてやらないと、と、思うから、ニール当人も復調しようとするからだ。
「ティエリアも? 」
「ああ、最初の頃は、看病の実務のほうは八戒さんやハイネがやっていた。ティエリアくんは、側に居て何かと話しかけていたんだ。最近は、すっかり看病の実務も理解したから、一人でやってくれてるけどね。」
 それでも家事能力は低いので、食事をさせたりは難しい。そこいらは、レイやシンがフォローしている。
「それって、何もしなくてもいいってこと? 」
「ニールが、何か頼めばやってやればいいし、思いついたら、きみが自主的にやってみてもいい。例えば、きみが喉が渇いたら、ニールにも尋ねてやればいいんだ。同じように過ごしていれば、喉が渇くのも同じ頃になるだろ? 難しく考える必要はないんだよ。」
 じじいーず筆頭のトダカになると、スーパーニートも取り扱えるらしい。まあ、あの表は爽やか、内はガタガタの難解なニールも攻略したのだから、スーパーニートぐらいなら軽いのだろう。ハイネは口を挟まず、成り行きを見守ることにした。こういうのは、年の功だ。
「そんなことで、ママは回復するわけ? 」
「あの子の場合は、回復するんだ。きみらの世話が焼きたくて、うずうずしているからさ。」
 あははははは・・と、トダカは軽快に笑って酒を口に含む。世話好きで、できるだけ普通の生活を体験させてやりたいと考えているニールは、その対象が目の前にあれば、簡単に回復する。何年も、そういう生活をしているから、そういうクセが身体に染み付いているのだ。

 ガチャリと、扉の開く音がして、「リジェネ。」 と、呼ぶ声がする。ほらね? と、トダカが、行っておいで、と、手のひらを上にして、リジェネを促す。リジェネも呼ばれたほうに顔を出すと、ニールが衣服を持って立っていた。
「パジャマと下着。風呂の入り方わかるか? ああ、おまえさん、どこで寝る? 客間か、俺んとこになるけど。」
「ママの横がいい。」
「同じベッドでいいか? ちょっと布団敷いてやれる根性がなくてな。」
「うん、それでいい。」
「じゃあ、そろそろ風呂に入れ。場所は、こっちだ。」
 勝手知ったるなんとやらで、ニールがリジェネを風呂場に案内して使い方の説明をする。そこにあるバスタオルやらタオルも一通り用意してやると、居間のほうへ顔を出した。
「寝てたんじゃないのか? ママニャン。」
「うとうとしてたんだけど、アスランが持って来てくれた服の整理してなかったから、思い出してやった。ハイネ、客間の布団、自分で敷いてくれ。」
 それだけ言うと、ハイネのコップを取上げて、少し口に含む。誰かが傍にいないと眠りが浅いのは、毎度のことだ。
「娘さんや、冷酒は身体が冷える。こっちにしなさい。」