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こらぼでほすと ニート15

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「そんなところだ。ハイネが戻るのが六時か七時だろうと、トダカさんが言ってたから、それに合わせたんだよ。」
「それなら、食事してください。早く寝ないと。」
 早朝ということは逆算すると、四時とか五時なんて時間に起きることになる。いつものように、ゆっくりしていたら寝ている暇がない。
「大丈夫だ。時間が不規則なのは慣れてる。」
「いやいやいや、そこじゃないですよ。・・・・とりあえず、食事して早く帰って休んでください。なんなら、こっちに泊まりますか? 」
 緊急事態でもないのに、そんな無理は必要ではない。毎日、そんなふうに出勤するなら、睡眠時間の確保をしないとダメでしょう、と、ニールが、さっさと食事の準備に入る。そんなニールに、アマギも苦笑する。そういうことを気にしてくれるのが、ニールのいいところだ。
「しょうがないな、じゃあ、さっさと退散するとしよう。」
「もしかして、毎日の予定でスケジュール組んでくれたんですか? アマギさん。」
「ああ、きみを、こっちに固定しておくと、『吉祥富貴』のほうはローテーションが厳しいだろう? 同じくらいの時間に帰ってくれればいいさ。もし、あちらで泊まりになるなら、私が、こちらに泊るから。」
 トダカと打ち合わせをして、アマギのほうは予定を組んだ。『吉祥富貴』は人員が少ない。そんなところへ、シンとレイが休んでいるから、リジェネのほうは、なるべく、こちらで処理することになった。
「今の所は、それほど忙しくありません。それに、俺が泊まりの場合はアイシャさんが現れます。」
「わかった。では、私がトダカの出勤後から、きみらが帰宅するまでの時間の担当だ。今日は、大人しくテレビ鑑賞をしていたから、これといって会話もなかったよ。」
「ありがとうございます。」
 リジェネが余計なことをしでかさなければ気楽な監視だ。とりあえず、会話には注意しているが、それだけなのでアマギだけで、なんとかしてくれるらしい。用意ができました、と、ニールが声をかけて、こちらにやってくる。リジェネに声をかけるが、無視されるので、録画処理してテレビの電源を落とす。
「あーーーーーーっっ。」
「ごはんだ。録画したから、後で見られる。」
「僕、後で食べる。」
「ダメだ。食事は、みんなにするほうがいい。」
「食事なんて、どうでもいいっっ。」
「ダメだって、いってんだろーがっっ。」
「ママ、僕は僕の予定で動いてるの。だから、それでいい。」
「そんなの、うちでは認められません。」
 リジェネとニールの言い合いは、完全に子供と親の喧嘩だ。内容が低レベルなので、アマギは笑っているし、ハイネも呆れていたりする。
「おい、ママニャン、漢方薬飲んだか? 」
 ぎゃあぎゃあとリジェネが暴れるのを見ながらのハイネの一言で、リジェネが停止した。そして、慌てて冷蔵庫に走る。大きなペットボトルを取り出して、コップに注ぐ。
「ママ、クスリの時間。」
「・・・・おまえな・・・」
「僕の仕事は、ママの看病だよ? 午後の食間は飲んでないよね? 」
 キラもトダカも、みな、頼むことは一緒だった。三度の食事と漢方薬とクスリを、きっちり摂らせて昼寝をさせろ、と、命じられた。これだけは確実にクリアーしなければならない。ほら、飲んで、と、コップを差し出す。
「そんなに、きっちりしなくてもいいんだよ。」
「ダメ。」
 もう、と、文句を吐きつつニールも飲み干す。すかさず、ハイネが水の入ったコップを渡す。後味最悪の漢方薬は、口を漱がないと、延々とマズイ味が口内に広がる。
 飲み干すのを確認すると、リジェネがテレビの前に戻ろうとするので、ハイネが、その首根っこを捕まえた。
「メシだって言っただろ? 座れ。」
「テレビは逃げない。」
「面白かったのに・・・」
「また、後で見ればいいだろ? 」
 おまたせしました、と、ニールも食卓につく。本日は、夏バテ防止メニューだ。トマトと豆腐のスープ以外に、玉子豆腐や、インゲンの胡麻和えもあるが、メインは豚肉のしょうが焼きだ。タマネギたっぷりで、ショウガが利かしてあるから、あっさりした味だが、ボリュームはある。それに箸休めの煮豆と漬物がついている。トダカが帰ったら、晩酌するので、そのためのアテにするから種類も多い。
「ビールですか? アマギさん。」
「そうだな、最初はビールを貰おうか。」
「リジェネは? 」
「僕は、ウーロン茶。」
 ハイネは、すでに勝手に缶ビールを飲んでいるから、食事開始となる。野郎二人は飲んでいるから、ごはんは後だ。リジェネには、じゃことわかめの混ぜご飯も用意されている。
「アマギさん、洗濯物とかあったら持って来てくださいよ。」
「そこまではいい。それを頼んでしまったら、私までダメ人間になってしまう。どうせ、晩御飯は相伴するんだ。」
 アマギの社宅は、トダカ家のご近所だ。歩いて十数分だから、洗濯なんかも持って来てもらえば、こっちでやってしまうのも簡単だ。だが、アマギも、この万能家政夫さんに慣れてしまうのは危険だから断る。
「ダメ人間にはならないでしょう。俺、たまにしかできませんよ。」
「トダカさんが、危険すぎるって言ってたぞ? 」
「そうかなあ。」
「ママニャン、三蔵さんを見ろよ? 縦のものを横にもしねぇーだろ? あれ、おまえの所為だからな。」
「別にいいだろ? 強制されてるわけじゃないし、三蔵さんも今まで、独りで大変だったんだろうからさ。」
「ばーかぁ、三蔵さんは、元から何もしない人だ。悟空が家のことをしてたんだ。」
「でも、境内とか墓の掃除はしてたみたいだぜ? 今も、自分でやってる。俺がやったら、怒るんだよ。」
「「え? 」」
 体調がいい時は、ニールも境内や墓の草むしりはしているが、最近は、それもしなくていい、と、亭主が言うのでやっていない。それには、アマギもハイネもびっくりだ。てっきりこき使われていると思っていたら、そうでもないらしい。
「こっそりとやってただけだろ? おまえは知らないだけさ、ハイネ。」
「うーん、そうなのかなあ。まあ、俺も寺に入り浸るようになったのは、おまえが嫁にいってからだからな。」
「じゃあ、寺のことは、ニールはしてないのか? 」
「はい、季節ごとに、アマギさんたちが大掃除の手伝いをしてくださるから、普段の簡単な拭き掃除ぐらいです。」
「そうなのか。いや、それぐらいにしておけばいい。きみは、動きすぎだ。」
「らしいですね。三蔵さんにも叱られてますよ。昼寝しないとハリセンが飛んできますから。」
 あははは・・・と、ニールは笑っているのだが、アマギとハイネは、どんだけいちゃこらしてたんだろう、と、感心する。なんだかんだと坊主は、女房を構い倒しているらしい。
 ニールは、食事に手をつけるでもなくウーロン茶で相手をしている。それで、リジェネは手を止めた。フォークで豚肉を突き刺すと、ニールの口元に運ぶ。
「ん? 」
「食べて。」
「はい? 」
「ママは食べてない。だから、食べて。」
「ああ、はいはい。食べるよ、リジェネ。ありがとさん。」
 突き出されたフォークの先をリジェネに咥えさせて、ニールは玉子豆腐を口にする。スプーンで、すくうとリジェネに逆に差し出した。