ARMORED CORE Another Story
013
「なんだよ、しっかり護衛のACいるじゃねえかよ。妙に報酬が良いと思ったらこういう事かクライアントめ、やってくれるねえ。」
と襲撃に来たレイヴン---ハルべルト・ファリヴァンがボヤく。どうやら契約時の情報に不備が有ったようだ。
「どうするんです?」
「んなもん聞くまでもねえだろ。俺がACをやる、そのスキにお前らはMTとトレーラーをやれ。」
と部下と思われる人物に答えると、
「分かりました、出来る限りの最善は尽くしますが・・。」
自信のなさそうに答える部下に
「分ってる、予想外の自体だ。マズイと思ったら素直に退け。お前らの葬儀代なんか出したかぁねえぜ?」
と冗談交じりで言い、
「生きてりゃまた会おうか。」
各自、自己の目標に向かう。
「まあ、正しい選択かな。MTは装甲車に任せて自身は俺と一騎打ち。とは言えこの戦力で襲撃すること自体にムリがある気がするけど。」
そんな風にのんきに相手の対応について批評をするレヴィン。
「とりあえず、挨拶と行こうか!」
とロックしていたミサイルを連射する。相手も冷静に迎撃・回避し最小限の損傷に留める。
「中々かな。腕は悪くなさそうだね。なら遠慮なく行かせてもらおうかな?」
レヴィンは何時になく気分が高揚していた。レイヴンだった頃の彼に戻りつつあるのだ。
元々こういうスリルあふれる事が好きではあった、経験無いだろうか?
例えば大きな坂が有ったとしよう、自分はマウンテンバイクに乗っている、こういう時に”この大きな坂を全速力で下ってみたい”と。
途中脇道からクルマが飛び出して来るかもしれないのに、理性では理解していても本能的にやってみたいと強い衝動に駆られる事が。
そして下り終わり、何もな無く無事に終わるとそのスピードとスリルに病みつきになる。
何かあっても相手に怪我をさせない限りまたやってみたいと思ってしまう。
今の彼、---レイヴンの時の彼はそれに限りなく近い状態にあると言っていい。
敵との戦いを心底楽しんでいるのだ。まるで人が変わったかのように。
レイヴンを辞めてからこういう事とは程遠い生活を送ってきたが故に今までは鳴りを潜めていたが、ここ最近になってACに乗るということが頻繁に有ったために現れてきたのだ。
幾度と無くレヴィンのACとハルベルトのACの射線が交錯する。
だが戦局はレヴィンの方が優勢であった。
レヴィンの機体は近距離でのマシンガンの瞬間火力を重視し、一定以上のスピードを維持しつつ戦う比較的軽量な中量二脚型。
対してハルベルトの機体は両肩にチェインガン・腕にショットガンと突出型ブレードを装備し重装備ながらも四脚型の機動力を活かし敵に張り付き強烈な一撃を見舞うスタイル。
しかし、ハルベルトのそれは相手に張り付く事が前提となる戦い方である。
つまり相手のスピードが自身以上だと通用しないのだ。
互いの機体を比べた時、純粋なトップスピードならハルベルトの方が上だろう。
しかしどんなに一発のスピードが速くともそれを維持できなければ意味が無い。
構えの動作なしに肩のキャノン・チェインガンが撃てるのは大きなアドバンテージだがタンク型の様に空中で撃つことはできない。
それに元々四脚型はEN管理の難しい脚部と言われているのだ。使いこなせれば強力だが癖のある機体であることも確かである。
「ちぃぃっ・・・、なんて野郎だ! こうも動き回るなんて・・!!」
逆にレヴィンの機体はENの燃費の良さを重視した中量機体であり、その中でも軽量の部類に入る。
一発のトップスピードこそそこまで高くは無いが、長時間持続的にブーストを吹かす事が可能で結果的に隙が少なくなる。
「さすがに機動力はあるけどその分EN切れも早いね。ちょっと期待外れかな、もっと上手いかと思ったのに。そろそろ決めるよ!」
とつぶやくと同時に機体の動きが更に隙のないものへと変わる。
「なっ・・?! ついて行けない!?」
先ほどまで辛うじてレヴィンの動きに付いていたハルベルトだが、ここで完全についていけなくなった。
「しまっ・・!? いつの間に!!OB!!」
急いで機体を逆旋回させようとするが既に時遅し。
「チェックメイトだ。」
の声と同時にレヴィンのマシンガンの弾が至近距離でハルベルトの機体にぶちまけられる。
残弾全てを放ちハルベルトの機体が停止しているのを確認しナタルに無線を入れる。
「こっちは終わりました。そちらは?」
「大丈夫です。半数程を撃破した所で向こうが退きました。この辺りに敵影はもう確認できないようなので先に帰還してます。団長が敵の機体で使えそうな部品を取りたいそうなので今からそちらにいきますね。」
「分かりました。と言っても使えそうな部品なんて有りそうにも無いんだけどなぁ。」
と撃破したACを見やりつぶやく。
作品名:ARMORED CORE Another Story 作家名:TaMaNeGi