ARMORED CORE Another Story
008
「本来ならOBを使って一気に接近したいところだけどこの機体じゃ一発で熱暴走だな。」
OB(オーバード・ブースト)緊急加速装置とでも言えばいいだろうか。
大量のエネルギーと熱量との引き換えに通常では出せない速度で移動する事が可能である。
ただし前述した通り莫大な熱量とエネルギーを消費するので古いこの機体では文字通り”緊急用”なのだ。
今でこそ技術が進み熱量、消費エネルギー共に抑えられてきたとは言え、それでも結構な負担を機体にかける事になってしまう。
この機体で使ったらどうなるか想像に難くは無い。
レヴィンはそれを思い通常のブースト移動で接近しているのだ。
「よし。もう少しで射程に入る。」
といい、兵装を右手のライフルから肩のミサイルに変更する。そして・・。
「きた!!」
という声と同時にミサイルを発射する、それはゲリラ側も同じだった。
違う所と言えばその数であろうか。
レヴィンが放ったのは2発しかも5機いるうちの1機しか狙えない。
それに対してゲリラのMTはそれぞれが2発、合計で10発のミサイルを放っていた。
しかしレヴィンは臆する事無くキレイにミサイルを回避する。そして放った2発のミサイルが1機のMTに命中する。
「ぐああぁぁっ!!・・・。」
撃破を確認したレヴィンは次の目標に切り替える。
兵装をライフルに変更し弾丸を相手に撃ち込む。
「ぐはあっ・・・。」
ここでアラートがなる。
「ロックされたか・・!」
見ると反対側にいたMTがミサイルを放っていた。
しかし、レヴィンは行動不能になった敵MTを障害物にしてこれを避けると今度はそいつに向かって行く。
「やっぱりどこまで行こうとゲリラはゲリラだな。」
どうやら敵は仲間が2機やられたことで焦っているようだった。
結局は訓練された正規企業軍や、ACを駆るレイヴンなどに勝るような操縦技術や集中力は無い。
ミサイルを放った3機目も簡単に撃破されてしまう。
残りは2機。
小刻みにブースターを吹かしてエネルギー(以下EN)を絶やさないようにしつつ、少々離れた所にいる2機に接近していく。
「くそったれ!!」
最後の部下がリーダー機を庇うように前に出てきた、リーダーを逃がすための時間稼ぎといった所か。
「頭!!俺が時間を稼ぎます!!その内に撤退を!!」
「お。おいっ!」
「こいつ中々厄介だ・・。」
レヴィンは毒づいていた、他の機体とは明らかに動きが違う。
「くっ・・、そう簡単にやられてたまるかよ!!」
敵は間合いを的確に把握し攻撃を繰り出して来る。
「墜ちろ!!」
レヴィンは小刻みにブーストを吹かすのをやめ一気に敵MTへと間合いを詰める。
先程までのような戦法では長引いてしまうと判断、ブレードで墜とそうと考えた。
「なっ・・・!?」
今までの距離を保っての射撃戦からいきなり接近戦に切り替えられゲリラは対応しきれない。
”ザンッ!!”
レヴィンのブレードが敵MTを上下に両断する。
「な・・、何だと・・。あれだけの敵をこうも簡単に!?・・・、クソがぁぁ、舐めた真似してんじゃねぇぇ!!」
頭に血が登ったリーダーMTが突っ込んでくる。
『無謀だ、幾らこっちの機体が旧式だからってたった一機じゃ勝ち目は無い・・、せっかく部下が時間稼ぎしてくれてたのにこうもあっさりと無駄にするとは・・。』
突っ込んでくる敵MTに対し、斜め左後方にブーストで回避しつつ距離を取りライフルの弾をぶち込む。
「ち・・、畜生ッ・・・」
「チェックメイトだ」
トドメと言わんばかりにブレードを振るうレヴィン。
爆発と共に敵MTは沈黙。
「ふう・・・、全くレイヴンをやめたのにまたACに乗ってやがる、困ったもんだな。」
と独り言を言いつつシートに身をうずめる。
静寂。
[敵熱源反応消滅、沈黙したものと認識。これよりシステム、戦闘モードから通常モードに移行します]
無機質なOSのアナウンスだけがコックピットに響いていた。
作品名:ARMORED CORE Another Story 作家名:TaMaNeGi