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魔法少女リリカルウィッチーズvol.1

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1st MISSION


 
新暦0077年・ミッドチルダ首都クラナガン。
 
地上本部へと出向いていた執務官、フェイト・T・ハラオウンは所用を終えて本部から出てきていた。
 
『これでこの件は一件落着かな』
そう思いながら駐車場にある自分の車へと向かうフェイト。乗り込むとエンジンをかけ、車を発進させる。
 
この日の仕事はこれで最後だったため、しばらく車を走らせて自宅へと向かう。
 
家へ着くと車を止め、降りて家の中へと入っていく。
 
「ただいま」と言葉を発するも、一人暮らしのため応えてくれる人はいない。
最初こそ何だか寂しさに似たものを感じていたものの、今ではすっかり慣れていた。
 
その後、着替えを済ませてから夕飯の用意を始める。と、その準備の合間に15年来の相棒であるデバイス『バルディッシュ』を通して本局からの通信が入る。
 
〔ハラオウン執務官、緊急事態につき大至急出撃してください〕
 
 
時は少し遡り、次元航行艦内。
ミッド沖合いに突如、大規模な雲のようなものが出現、同時に次元境界線の歪曲も認められた。
 
「何だ、あの巨大な雲は!?」
「わかりませんが、現在解析中です!」
「次元境界線が歪曲しているんだ。何が起こるかわからない、急げ!!」
管理局本局勤めの執務官、クロノ・ハラオウン提督の怒号が響き渡る。
 
突如として現れた黒い雲は、何かの機会を伺うかのようにその場に停滞している。相変わらず次元境界線は歪んだままだ。
 
「一体、何だと言うんだ…」
突然の事態に、落ち着かない様子で推移を見守るクロノ。
「解析結果、出ました!」
管理局員が叫ぶ。
「あの雲はミッド他、この次元世界のどの世界のものでもありません。恐らく、この次元空間とは別の次元空間から転移してきたのではないかと思われます」
解析結果を伝達していく局員。

「別の次元空間だと…?」
眉をひそめながら訝しげに呟くクロノ。
別の並行世界からというのは経験したが、そんな事態は経験したことがないため、彼自身も状況を飲み込めないでいるのだ。だが同時に、彼は1つの事象を思い出してもいた。
『まさか、騎士カリムの言っていた予知は…』
 
「とにかく、地上と海の魔導士に出撃命令を出すんだ。このままでは、何が起こるか本当に判らない」
状況の詳細な調査は後に回し、今は目の前の事態をどうにかするのが先決だったためクロノはそう指示を出した。
 
 
「出撃…?」
通信を受けたフェイトは、通信士に聞き返す。
 
〔はい。ミッド沖合いに謎の雲らしきものが出現したとのことで、地上と海の魔導士の方には召集がかかっているんです〕
「なるほど…わかった、私もすぐ行くよ」
フェイトは返事をすると市街地単独飛行の許可を得るようにだけ言って通信を切り、素早く着替えて家を出るとバルディッシュを起動、変身して飛び立ち現場へと向かった。



フェイトが現場に向かうと、すでに何人もの魔導士が待機していた。
そしてその中には、彼女のよく見知った顔がちらほらとあった。
「なのは、シグナム、ヴィータ!」
その面々にフェイトは声をかける。
「フェイトちゃん!」
「テスタロッサか。遅かったな」
「おっせーぞ、フェイト。お前は来ねぇかと思ったじゃんか」
それぞれに返してくる三人。
「それよりこれ、何なんだろう…?」
雲を見上げながら問いかけるフェイト。
「私達も、何も聞かされてないんだ」
「ったく、急に出撃命令出されるなんて思わなかったぜ」
なのはとヴィータがそれぞれ言う。
 
「待て、何か変だ」
雲の様子が変わったことに気付き、シグナムが三人を制する。すると話していた三人も、その場にいた魔導士も全員が雲の方に注目する。
 
それから少しの間の後、雲の中から黒い兵器のようなものを象った物体が出現する。
「何だありゃ!?」
ヴィータが驚いて声を上げる。周囲の魔導士も動揺しているようで、ざわめきが上がっている。
 
と、その物体から唐突に赤い光線が放たれる。
「ッ!!」
咄嗟にプロテクションを展開することでこれを防ぐなのは達。
他の魔導士も防いだ者は防いだが、大半が一撃でプロテクションを破られ墜とされてしまった。
 
「何て威力だ…」
その威力に戦慄を覚えるシグナム。
シグナム始め元・機動六課の四人はまだ平静を保っているが、他の魔導士は今の威力を見て動揺し始めている。
そんな間に、もう一度光線が迸る。海に直撃すれば海を割いて激しい荒波を起こすその光線は、二度目ともなれば一般魔導士達の心をへし折るには充分だった。未知の敵を前にし、次々と魔導士達は戦意を喪失していく。

「怯んでる場合じゃないよね」
そんな中、エース・オブ・エースこと高町なのはが口を開く。
「そうだな」
「うん」
「あぁ」
それに続いて返事をするヴィータ、フェイト、シグナムの三人。四人はこの未知の敵を前にしても怯む様子は見せなかった。それどころか、勇敢に立ち向かう姿勢を見せる。
 
「行くよ、レイジングハート!ディバイィィィン……!」
なのはは構え、ディバインバスターを放つための溜めを開始する。
フェイト、シグナム、ヴィータの三人は溜めの間に近接戦に持ち込むため接近していく。
 
「バスタァァァァーーー!!」
なのはが砲撃魔法を放つ。それは未知の敵に直撃すると、表面を浅くだが砕いた。
 
「紫炎…一閃!!」
シグナムはレヴァンティンの刀身に炎を纏わせ、光線を回避しつつ斬りかかる。その剣戟は、未知の敵の翼のような部分を見事切り裂いた。
 
「プラズマランサー、ファイア!!」
フェイトは中距離から電気の属性を持った魔力の矢を多数放つ。これにより未知の敵の表面を浅くだが無数に砕く。
 
「ブチ抜けぇぇぇぇーーーっ!!」
ヴィータはグラーフアイゼンのハンマー部分を巨大化させ、叫びながら渾身の力で振り下ろす。それは未知の敵の後ろ半分を粉々に砕いた。
 
これで終わるかに見えた未知の敵。しかし、
 
「!?」
思わず息を呑む一同。
未知の敵は、自身の再生を始め元通りになったのだ。
 
「再生、した…?」
「冗談だろ…?」
唖然とするなのはとヴィータ。
未知の敵は再び光線を放ってくる。
 
それらを回避しつつ攻撃を続けていく四人。だが、一向に未知の敵は倒せない。


いよいよ魔力もカートリッジも限界に近づいて来た頃、雲の中からまたしても何かが出てきた。
 
「あれは、何だ?」
シグナムが気付き、声をあげる。
 
「ネウロイ確認。全機、攻撃開始!!」
突如現れた、足に見慣れない機械を取り付けた少女が号令をかけると、一斉に同じような格好をした少女達が未知の敵に向けて攻撃を開始する。
ある者は風を操り攻撃し、ある者は電撃を操り攻撃し、ある者は狙撃でサポートし、ある者は果敢に突撃して攻撃し……やがて核のようなものが出てくる。それをある者が撃ち抜き砕くと、未知の敵はあっという間に粉々に砕け散ってしまった。
 
「す、すげぇ…」
感嘆の声を上げるヴィータ。
 
「とりあえず味方…みたいだね」
フェイトが助けてくれたことから考えて言う。
と、なのはがその少女達に近づいていく。