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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (3)

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タッくんが思ったこと、ヨーテリーが言いたかったことが、情景となって浮かんできた。

1番道路の草むら。

ほんとにすぐそばの林の中に、ミネズミがいる。

ちょっと大きなふとっちょミネズミ。

大きな石の上にふんぞり返って、なんだかえらそう。

まわりには、食べ物だとか、ガラクタだとかがごちゃごちゃと並んでて、次から次へとヨーテリー達が同じようなものを持ってくる。

ミネズミは、それを奪うように受け取ると、ケラケラと得意げに笑っていた。

それとは逆に、周りのヨーテリー達は怯えているみたい。

このミネズミに、いじわるされてるんだ。

トウコは目を開けた。

「ありがとう、タッくん。よくわかったわ」

タッくんは、不思議そうにトウコを見上げていた。

トウコはヨーテリーに向かって微笑んだ。

「大丈夫よ、あなた達にいじわるしてるミネズミをこらしめちゃいましょ!ね、タッくん?」

「タージャ!!」

まかせろとやる気を見せるタッくん。

ヨーテリーはきょとんとしていたけれど、状況がわかったのか、やっと笑ってくれた。

それから、トウコはヨーテリーとタッくんに案内されて、林の中のふとっちょミネズミの住みかまでやってきた。

辺りには、ミネズミがヨーテリー達に持ってこさせて集めたガラクタが散乱していた。

ふとっちょミネズミの前までやってくると、ヨーテリーは落ち着かない様子で、トウコの後ろに隠れた。

よっぽど恐い目にあってたにちがいない。

きっと、草むらのポケモンがビクビクしていたり、少なかったのだって、このミネズミが原因だろう。

トウコ達をみるなり、ミネズミは住みかを荒らしにきた敵と思ってか、臨戦態勢だった。

「ズミズミ!ッネズミー!!」

飛びかかってきたミネズミを、タッくんは容易に避けた。

ふとってるせいか、動きが鈍い。

「ズミ?!」

「もう、いじめっこなんて許さないんだから!」

あなたのせいで、せっかくのポケモンデビューが、ちょっとおかしくなったんだから。

せっかく、1番道路で新しい仲間をつくろうと思ってたのに!

責任とってもらうわ!

「タッくん、たいあたり!」

「ターッジャー!」

ミネズミのふとっちょ腹に、タッくんのたいあたりが直撃する!

「ズミー!?」

ミネズミは後ろに飛ばされながら、回転して、頭とおしりをすりむいた。

すっかり泥だらけだ。

もぞもぞと重たい身体を起こす。

「ズミミ!」

何するんだと言いたいのか、ミネズミはえらそうにタッくんを指さした。

ギロリとにらみ返すタッくん。

迫力負けしたのか、ふとっちょミネズミの顔がおじけずいた。

「ズッミィー!!」

やけになったのか、ミネズミは、自分がヨーテリーに集めさせた、きれいな石やおもちゃの破片だとか、側にある物を手当たり次第に投げつけはじめた。

たいして力はないのか、投げたものは、ほとんどタッくんまで届かない。

「ジャッ、ジャッ」

かろうじて届いてきたガラクタを、しっぽで軽々とタッくんが、はたき落とす。

あわあわと慌て始めるミネズミ。

ついには、走り出して逃げようとし始めた。

「タッくん、決めるわよ!つるのムチ!!」

「タジャー!!」

パシンッ!と音を立てて、逃げるミネズミの背中に直撃!

ミネズミは、あわをふいて倒れた。

「いっけー!」

トウコがボールを投げ込むと、モンスターボールはカタカタ音を立ててから、すぐに静かになった。

これでもう、ヨーテリー達もいじわるされることもないはずだ。

トウコがミネズミの入ったボールを拾っていると、林の側からヨーテリー達がひょこひょこと顔をのぞかせた。

じぃっと遠くから様子を見ているヨーテリー達。

その様子がおかしくて、トウコはクスリと笑った。

「もう大丈夫だよ」

これで、草むらのポケモン達も元にもどるよね。

「テリー!」

案内をしてくれた、ヨーテリーが嬉しそうにしっぽを振って駆け寄ってきた。

ありがとうって言ってくれてるみたい。

何かを口にくわえていた。

なんだろう?

トウコはそれを手に取った。

ちょうど掌の大きさぐらいの、金色の四角いキューブ。

小さな正方形がたくさん集まってできていて、中央は空洞になっていた。

立体的なパズルのようだ。

1つ1つに記号のようなものが書かれているけれど、ずいぶん使い込まれているのか、文字はかすれてしまっている。

切れたチェーンがついているから、キーホルダーだったのかもしれない。

「どうしたの?これ」

「テリィ!」

得意げな表情をみせるヨーテリー。

お礼のプレゼントのつもりらしい。

もしかして、拾ってきたのだろうか。

ヨーテリーはよくものをひろうことで有名だ。

誰の物でもなければ、もらってもいいのだけれど、それにしては砂や泥がついていない。

さきほどまで、きれいに使われていたようだ。

誰かの落とし物なのかもしれない。

「ありがとう、ヨーテリー」

うれしそうにしっぽを振るヨーテリーの背中を、トウコは優しくなでた。

落とし物なら、もしかしたらカラクサタウンで探せば、持ち主を見つけられるかも知れない。

そう思って受け取ることにした。

ヨーテリー達に別れを告げると、トウコは1番道路に戻った。

急いでチェレンとベルを追いかける。

1番道路の最終地点、カラクサタウンの入り口では、すでに2人と博士が待っていた。

「トウコ、おそーーーい!!」

「一本道なのに、いったいどこで道草をくってたんだい?」

チェレンは腕を組んでイライラしているようだった。

「ごめん、ごめん!本当にごめん! 博士も待たせてしまってすみません!」

「ハーイ、大丈夫よ!気にしてないわ。それより、勝負はどうなったのかしら?」

アララギ博士はあいかわらずのハイテンションだ。

「ちょっと、なんでかポケモンが少なくてさ、僕たちは1匹ずつしか捕まえられなかったんだ」

チェレンが言った。

なんだ、やっぱりあのミネズミのせいで、2人とも苦労してたんだ。

トウコはちょっと安心した。

2人は軽々捕まえているような気もしたから。

「私も捕まえたのは1匹だけよ」

「それでよくこんなに時間がつぶせたもんだね」

チェレンは大きくため息をついた。

だからほんとに悪かったってば!

「まぁまぁ、勝負は引き分けってことね!みんなよく頑張ったわ!!」

「ねぇねぇ、トウコが捕まえたのって、そのヨーテリー? かわいいよね!私も同じの捕まえたんだぁ」

「え?ヨーテリー?」

足元を見ると、いつの間にかさっきのヨーテリーがついてきていた。

トウコを見つめてしっぽを振っている。

「あら!すっかり懐いてるじゃない。トウコ、まだ渡したモンスターボールは残ってるかしら?」

「あ、はい!」

博士に言われるまま、トウコはモンスターボールを取り出すと、しゃがみこんだ。

泣き虫のヨーテリー。

はじめは事情も知らないで、タッくんと攻撃しちゃったのに、ついてきてくれたんだ。

トウコが笑ってみせると、ヨーテリーは嬉しそうに鳴いた。

「仲間になってくれる?」

「テリー!」