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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (5)

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ジムの前では、今度は緑色の髪をしたウェイターがレストランの受付対応をしていた。毎回顔が違うなんて、いったい何人いるんだろう。

ウェイターは、ジムに着いたトウコに声をかけてきた。

「…お客さんかな?」

「いいえ、ジムの挑戦できました。ジムリーダーはいますか?」

トウコがそう言うと、ウェイターの人の目つきが変わった。

真剣な表情。接客とは違う、トレーナーの顔になっていた。ジムの中の従業員だ。きっと、ウェイターもウェイトレスも、ジム専属のトレーナーに違いない。

「……そうですか、ジムの挑戦。それで、君……最初に選んだポケモンはなんですか?」

ジムに挑戦するとわかったなり、ウェイターが質問をしてきた内容。すぐにジムに案内されるものだと思っていたトウコは、正直戸惑った。

え?最初に選んだポケモン?

なんで、そんなこと?

「ツタージャよ」

戸惑いながら、トウコが言うと、ウェイターは穏やかな口調で言った。

「そうですか……。きちんと対策をしておいたほうがいいと思いますよ。では、中で待っていますね」

緑色の髪をしたウェイターは、足早にジムの中に入っていった。

どうやら、ジムリーダーは中に帰ってきているようだ。今度は探しに行かなくて良いとわかって、内心ほっとした。

対策なら、ヒヤップのおかげでばっちりだわ!

トウコは、レストランのドアを開いた。

中は、ちょっとレトロな、色の落ち着いた照明が、ランプに灯されていた。

きれいに並んだテーブル。

木の温もりあふれるしゃれた内装。

紅茶の香り。

とてもポケモンジムとは思えない。

「本日は、ようこそお越し下さいました。挑戦者の方はこちらになります」

かわいいエプロンに身を包んだ、ウェイトレスが声を掛けてきた。

案内されるままついていく。

店の一番奥の部屋。

開けるとそこは、ホテルみたいな真っ赤な絨毯と、白い壁にかこまれた、豪華な内装の部屋だった。

中央が舞台のようになっていて、そこに3人の男性が立っている。

赤、青、緑の髪の3人。トウコが入り口で代わるがわるみかけたウェイター達だった。

トウコは、そこに案内された。

「ようこそ、こちらサンヨウシティ、ポケモンジムです」

さきほどの緑の髪をしたウェイターが、丁寧なお辞儀をした。

この人がジムリーダー……。

そう思ったときだった。

赤い髪のウェイターが、緑の髪のジムリーダーを押し出すようにして飛び出してきた。

ジムリーダーを捜してこいといった人だ!

「俺は、炎タイプのポケモンで暴れるポッド!」

続けざまに、青色の髪のウェイターも自己紹介を始める。

「水タイプを使いこなすコーンです。以後、お見知りおきを」

3人の中では一番、整った顔。ちょっとかっこいい。

最後に、緑の髪のウェイターが自己紹介をした。

「そして、ぼくはですね。草タイプのポケモンが好きなデントと申します」

落ち着いてて、一番礼儀正しい気がする。

えーっと、3人?

このジムは、兄弟でやってるとはきいたけれど、いったいジムリーダーはだれ?

困り顔で黙り込んでいるトウコに、緑の髪のデントが声を掛けた。

「どうして、ぼくたち3人がいるかといいますとね……」

「俺が説明するッ!」

後ろから、赤い髪のポッドが出てきて、デントを押しやった。さっきから妙に自己主張が強い。

なんて、出たがりな人だ……。

「あのなぁ、俺達3人はッ!相手が最初に選んだポケモンのタイプに合わせて、誰が戦うか決めるんだッ!」

「そして、君が選んだのは草タイプ」

青い髪のコーンがクールに言った。

「ということで、炎タイプで燃やしまくる俺!ポッドが相手をするぜ!」

トウコは、ビシッと指を指された。

えーー!一番うるさそうなこの人!?

ポケモンによって、タイプを変えてくるとはこういうことか、そう思いながら、なんだか気乗りしない相手だった。

こういうガツガツした人、ちょっと苦手。

そんな思いからバトルは始まった。

ポッドが先に出してきたのは、ヨーテリーだった。

迷わず、タッくんを登場させる。

ヨーテリーには、一番戦い慣れてるんだから!

でも、相手はジムリーダー。油断はできない。

とっしんしてきたヨーテリーを、タッくんは慣れた様子で、ひらり、ひらりと避けた。

「だいぶ戦いなれしているなッ!ヨーテリーふるいたてる!」

「デリー!」

ヨーテリーの気力が増して、毛がぶわっと大きく逆立った。

「タッくん、せいちょうよ!」

「ターッ!」

タッくんも身体に力を入れ、自身に生えた植物を大きく成長させた。

「ヨーテリー、再びとっしんだぁッ!」

「デリデリー!」

勢いも、威力も増した、ヨーテリーが力任せにタッくんに飛び込んだ!

タッくんをつけねらう!

「避けてタッくん!」

すばやくかわすタッくん。

ヨーテリーは勢いを殺せず、タッくんをすり抜けて、壁の柱に身体を打ち付けた。

起きあがろうともぞもぞしている。

スキあり!

「タッくん、つるのムチ!」

「ジャ!!」

パシンッ!!と勢いよく音が響く!

ヨーテリーはころりと身体をねじってよけたが、タッくんが二度目のつるのムチをくりだし、さすがにそのつるのムチからは逃げられなかった!

「デリ~……」

くるくると目を回すヨーテリー。

ポッドは、ボールにもどすと、すぐに2匹目を登場させる!

「さぁて、対策はしてあるか?」

「バォーー!」

鳴き声を上げて、いきり立ったバオップが、舞台上に現れた。

「タッくん、交代よ。お疲れ様」

迷わず戻す。

チェレンとの戦いを活かさなきゃ!

トウコは新たなボールをつかんだ。

「いけ!ヒヤリン、たのむわよ!」

ヒヤップのヒヤリン。

さっき仲間になったばかりの新人を送り出した。

「ヒヤヤァン!」

バオップとヒヤップが対面する!

「バオップ、ふるいたてる!」

バオップの闘志がさらに燃え上がる。

でも、相性はこっちのほうがいい!

「ヒヤリン!みずでっぽう!」

「ヒーッヤー!」

勢いのあるみずでっぽうが、バオップにかかる!

明らかに嫌がっている。

逃げようとするが、それを追いかける広い範囲にヒヤリンのみずでっぽうが炸裂し、舞台上は水たまりだらけ。

バオップは弱ってきていた。

「負けるな、バオップ!みだれひっかきだッ!」

「ヒヤリン、もう一度みずでっぽう!」

爪を光らせ、飛び込んだバオップに、みずでっぽうは直撃した!

くらくらしながら倒れ込んだ。

それをみて、デントが言った。

「そこまで!勝負ありだね。ポッドの負けだ」

挑戦者の勝ち。

そう言われて、笑顔になる。

やった!勝った!

「ヒヤリン、あなたのおかげよ!」

トウコがぎゅっと抱きしめると、ヒヤリンは照れくさそうに笑った。

チェレンの時は、あんなに苦労したのに、ヒヤリンがいるだけで、全然違った。

勝負に余裕が生まれるくらい。

タイプでこんなに勝負が変わる。それがはじめてよくわかった試合だった。