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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (10)

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レンジャーの男性は、真剣な表情でトウコを注意した。

もっともな意見。

でも、できない。

「ごめんなさい。私、ジムリーダーから頼まれているの。シッポウシティ博物館の、ドラゴンの骨が盗まれて、プラズマ団を捜しているんです」

「プラズマ団? 最近、演説をやってる連中じゃないか」

「この辺りで、見ていないですか?」

レンジャーの男性は黙って、考え込んだ。

「……そういえば、そこの道を進んだ先で、人影が見えたっけ。注意する前に逃げられちゃったけれどね。プラズマ団かどうかはわからないな…」

「本当ですか!?」

もしかしたら、この道の先にいるのかもしれない。

行ってみないと…。

トウコがお礼を言って、歩き始めようとすると、レンジャーの男性が呼び止めた。

「待った。話は聞いていただろ?最近、遭難が多いって」

「でも私…」

「君、森に入るために何か持ってきた?準備はした?」

「……してないですけど…」

する暇もなかった。

レンジャーの男性は、これ以上進ませないつもりなんじゃないかと、トウコは不安になった。

「じゃあ、仕方ない。事情が、事情みたいだし、僕のお古だけれど、持っていきな!」

渡されたのは、使い古した折りたたみのナイフと、懐中電灯、おいしい水1本。

「いいんですか?」

「予備があるからかまわないよ。無理はしないようにね。もし、遭難することがあったら、朝まで動かずその場所にいてくれ。僕の仲間が、毎日パトロールしているからね。動かないでいてくれた方が、早く見つけられる」

「ありがとうございます」

「ただし、次に森に入るときには、しっかり準備をしておくように!」

レンジャーに念を押され、トウコは大きく頷いた。

もらった物を鞄にしまい、お礼を言うと、レンジャーの男性と別れて、先へ進む。

濃い草むらの茂みを抜けて、その先へ。

左側へ続く道へ足を踏み入れようとした時だった。

がさりと、前の方で物音がした。

とっさに、木の茂みに身を隠した。

声が聞こえた。

「なんてしつこい連中だ。ヒウンシティまでの橋は封鎖されちまうし、カラクサタウンまでのゲートもダメだって連絡があった」

「どうすればいいのよ!」

「どうにも、こうにも、これを届けないと我々の計画が!」

話しているのは、銀色のコスチュームの4人。

プラズマ団だ。

見つけた!

盗まれた骨を抱えている男もいる。

トウコは、木の茂みから飛び出した!

「見つけたわ!盗んだホネを返しなさい!」

勢いよく飛び出したトウコに驚いて、4人は慌てふためいていた。

「なに!?追っ手!」

「なんなのよ!早すぎるわ!」

プラズマ団が走り出す。

逃げ足だけは速い!

「待ちなさい!」

追いかけるトウコに、プラズマ団の1人が立ち止まった。

あとの3人が逃げていく!

「しつこい子供め! 追いかけられないよう、ここで痛みつけてやる!」

プラズマ団の男がボールを放り出した。

メグロコが唸りながら飛び出してきた!

勝負で足止めする気だ。

「タッくん、おねがい!」

ジャノビーに進化した、タッくんが飛び出した!

「ジャノー!」

メグロコが、いかくをはなってきたが、タッくんは負けじとにらみ返している。

すばやいタッくんが、先制を取った!

「グラスミキサー!」

緑のつむじ風。

植物の多い、森の力を借りてか、大きくなっている。

メグロコの体を刻む!

「グロロゥッ!」

はじき出されるように、地面に叩きつけられたメグロコが倒れた。

「なんだよ!子供のくせに!!しゃらくさいんだよ!!!」

負けて吠えるプラズマ団の男。

一撃できめたものの、タッくんは息が上がっていた。

キズを薬で治しただけ。体力はそこまでもどっていないんだ。

「ありがとう、タッくん」

無理させられない。

急いでボールに戻した。

「残念! 俺は何も持っていない。とりかえすつもりなら、仲間を捜すことだな!」

プラズマ団の男は、トウコにそう言い放った。

「言われなくたって、そうするわ!」

イライラしながら、他の団員が逃げていった森の奥へと走る!

姿は見えない。

でも、そこまで遠くには行けていないはずだ。

辺りはすっかり暗くなってきた。

まだわずかに空が明るいのと、目が暗さに慣れたせいで、懐中電灯をつけるまではない。

でも、それも時間の問題。

静けさの増した草むらを、かき分けて進むと、森の道にしては珍しく視界の良い、すっきりとした道にたどり着いた。

そこで待っていたのは、女のプラズマ団員。

ボール片手に、息を切らしたトウコに言う。

「あら? 何かお探しかしら?」

白々しい。

「盗んだホネはどこ?」

「さぁね、あたしを倒したら、教えてあげてもいいかもね」

プラズマ団の女は、チョロネコをくりだしてきた!

「チョロチョロロ~!」

トウコもボールを投げる!

タッくんは休ませたい。次は…。

「テリム!おねがい!」

「デリリィー!」

ハーデリアに進化したテリム。

チョロネコをいかくした!

怖じ気づきながらも、チョロネコはみだれひっかきで攻撃してきた!

持ち前の技術で、器用によけるテリム。

しかし、だんだん動きが鈍くなり、4回目のひっかき攻撃を背中に受けてしまった!

テリムもやっぱり本調子じゃない。

早く決めないと!

「テリム!いわくだき!」

「デリリ!」

チョロネコの攻撃をすり抜けて、テリムが頭で思い切りつっこむ!

お腹に衝撃を受けたチョロネコが、悶えながら後退する。

「チョロネコ!おいうち!」

「テリム!たいあたり!」

2匹が同時に走り出す!

ほぼ同時に攻撃がぶつかり合った!

地面に降りたって、倒れたのはチョロネコだった。

「ちょ、ちょっと!立ちなさいよ!」

ボールに戻るチョロネコに向かって、プラズマ団の女が喚いた。

「デリ~…」

ふうと、息をつくテリム。

明らかに疲れている。

「ありがと、テリム。休んでてね」

ボールに戻すと、トウコは、プラズマ団員に迫った。

「ほら、教えなさいよ!盗んだものはどこ!」

「そんなに、怒らなくてもいいじゃない…。ゴメンね、あたし手ぶらなのよね。だってほら…女の子は重い物を持たないでしょ?」

とぼけるプラズマ団員にトウコはイラッとした。

誤魔化そうたってそうはいかないわ!

「どっちに行ったの!?」

じりじりと迫るトウコに、プラズマ団の女はたじたじだった。

「ああ…、もう来ないでってば!あっちよ、あっち!! なので、他をあたってね!」

そう言って、この先につながる道を指さした。

自然にできた森の段差との間に、古びた巨木が倒れて橋のようにかかっていた。

中をなんとか人が通れるくらいの、大きな空洞が空いた木。

その奥に、林が続いている。

あそこを登っていくの? でも、他に道もなさそう。

トウコは、プラズマ団の女を置いて、先へと走った!

大きな木の空洞を抜けて、さらに森の奥へとたどり着いた。

ぬかるんだ地面に、まだ新しそうな足跡が付いている。