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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (10)

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あとは、ゾロアを信じるしかない。

いきなり、足をくじいたから助けてくれなんて頼んだら、きっと驚くよね。

でも早く、プラズマ団を追いかけないと、逃げられてしまうかも知れない。

せっかく見つけたのに、アロエさんの大事な展示品が、取り返せなくなっちゃう。

みんな、頑張ってるのに…。

もう夜になったちゃった。

真っ暗な森。

レンジャーの人にもらった懐中電灯がなかったら、きっともっと暗いだろう。

白っぽい、電球を見つめる。

心細い気持ちが、少しだけ楽になる気がした。

ガサガサと再び草むらが揺れた。

Nが来てくれたんだろうか?

ほっとしながら見ていた暗闇から現れたのは、巨大なホイーガだった。

フシデの進化形。どくをもったポケモン。

座り込んでいて、姿が見えていなかったのか、トウコに驚いたホイーガは興奮していた。

どくばりを向けられる!

うそ!?

あんなの当たったら死んじゃうかもしれない。でも、ここでボールをはなっても、どくばりはきっと飛んでだろう。それを避ける足が今はない!

「キュイイイ!!」

ホイーガが、興奮した声を上げる!

どくばりがギラリと光る。

ダメだ!当たる!

トウコは目を閉じた。

「ガウウァーー!!」

大きく吠える声が聞こえたのはその時だった。

目を開けると、ゾロアがホイーガに吠えたてていた。

声に驚いたホイーガが、慌てて逃げ出していく。

「トウコ!」

Nの声を聞こえて、ほっと息をついた。

助かった…。

ゾロアの後を追いかけて、やってきたNは、息が切れていた。急いでやってきてくれたみたいだ。

ホイーガからも間一髪、助けられ、感謝し尽くしても足りないかも知れない。

「ほんとにありがとう、N…」

こんな暗闇の中、ここまで来るのも大変だったに違いない。

ゾロアはつんとした様子で、とことこと、トウコの周囲を歩くと、物言いたげにちらりと見た。

「ゾロアもありがとうね!」

お礼を言うと、ゾロアはつんとすましながらも少ししっぽを振った。

少し心を開いてくれたようでうれしかった。

「足を怪我したって、ゾロアから聞いたよ。動けないのか?」

心配そうにNが言った。

「ちょっと、1人じゃ厳しいの。N、悪いけれど手をかして」

手を伸ばしたトウコの手を、Nが引っぱっる。

勢いにまかせて右足に体重をかけると、なんとか立ち上がることができた。

そこから、左足を踏み出してみるが、激痛に顔が歪んだ。

痛っ!…一歩でこれじゃあ、高台に上がるまで、どれだけかかるんだろう。

「足、ひどく腫れているね」

屈んだNが、トウコの左足に触れた。

足首を曲げられると激痛が走った。

「N! いたっい!」

「歩かない方がよさそうだ」

そう声が聞こえた瞬間、かくんと膝の力が抜けて、体が軽くなった。

「?」

急に視界が変わった。

森の上を見ている。空が見える。Nの顔が近くに?!

トウコが気づいた瞬間、いわゆるお姫様だっこという格好になっていた。

ぼっと顔が火照る。

「ちょっと、ちょっと! こんなにしなくていいって!」

「大丈夫、トウコは思っていたより軽い」

焦るトウコに、Nはにっこりとそう言った。

何気に失礼なことを言ってくれている。

そんなことより、恥ずかしくて落ち着かない!

「いいよ、頑張って歩くから!肩を貸してくれれば十分よ!」

「ダメ。そうやって怪我がひどくなるんだ」

そうもっともな事を言って、Nは下ろしてくれなかった。

やっぱり……Nってけっこう大胆よね。

「ありがとう…」

上を見上げると、星が見える前にNの顔が目に入る。

目があうと、にっこりと微笑み返してくるから、どこに目線をやっていいやら困ってしまった。

トウコが落ち着けない中、Nが歩きだした方向は、高台とは全く正反対だった。

違う…そっちじゃなくて…。

遠ざかっていく高台に、トウコは少し焦った。

「……N、あのね…」

「…君がやらなくてもいいんじゃないのか」

話し出したトウコの言葉を、Nが遮った。

まるで知っているかのような口ぶりに、トウコは目を丸くして黙り込んだ。

冷めた声。冷たい眼差し。

声色も表情も変わらないはずなのに、なぜだかいつもよりNが冷たい人に見えた。

「その足、どうしてくじいたんだい?」

「これは…。あの高台から突き落とされたのよ、プラズマ団に」

トウコの言葉に、Nは少し視線を泳がせたように見えた。

「なんで君が……プラズマ団に?」

「シッポウシティの博物館で、展示品のドラゴンのホネが、プラズマ団に盗まれたのよ。私は、ジムリーダーと一緒に、盗んだプラズマ団を追っているの!N……、あそこの高台の先にそのプラズマ団がいるようなの!お願い、連れて行って!」

トウコの言葉に、Nは黙り込んだ。

そのまま、まっすぐ、急ぎ足で歩き続ける。

「N!!」

トウコが見ても、Nは視線を合わせてくれなかった。

「そんなことより、早く足の怪我を見てもらった方がいい。体だって傷だらけじゃないか」

いつもより口調が強い。怒っているようにも見えた。

「お願い、N! 勝手なのはわかっているけれど、どうしても取り返したいの!大切にされていたものなの!犯人の居場所がわかるのに、それを見て見ぬふりをするなんてできないよ!」

トウコの言葉に、Nが立ち止まる。

明らかに困惑した表情を浮かべている彼に気づいて、トウコは思った。

そうだよね、突然こんなこと言われても困るよね。Nを事件に巻き込むことはいけないよね…。

プラズマ団を追いかけようって決めたのは私だ。

Nを巻き込んでまですることじゃない。

「…無理言ってごめんね、N。ここで下ろして」

トウコが言っても、Nは下ろしてはくれなかった。

どこか遠くを見て、黙っている。

そして言った。

「いいんだ。……君のせいじゃない」

何かを決意したような、そんな表情だった。

Nは、急に逆方向へ向きを変え、歩き始めた。

N…?

「あの高台まで、行ければいいのかい?」

「…うん」

頷くトウコに、Nは黙って高台まで歩いてくれた。

空洞になった大きな古木の橋を抜けて、高台にたどり着くと、さっきのプラズマ団員はいなくなっていた。

逃げられたのだろうか。

仲間と合流したのかも知れないと、少し不安になった。

「この先だろう?君が目指している場所は」

「うん。でもありがとう、ここまででいいよ」

トウコがそう言って、体を動かしたが、Nは首を横に振った。

「かまわないよ。この先に行こうが、未来は変わらない」

そう言って、さきほど突き飛ばされて渡れなかった、古木の中をNは進んでくれた。

また、不思議なことを言っている。

いったいどういうことなのか、さっぱりわからないけれど……。

「…ありがとう」

さっきから、お礼をいうことくらいしかできていない。

ずっと体を預けたままだ。

何もできない、もどかしさを感じた。

古木の中、Nとゾロアの足音が響いた。

真っ暗な古木の空洞は、懐中電灯で照らしても、足下くらいしかよくわからなかった。