二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

黒と白の狭間でみつけたもの (10)

INDEX|6ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

それでも恐くないのは、Nと一緒だからだろう。

彼の鼓動を感じる。温かい体温も。

Nは何も話さない。ずっと黙っていた。

Nの表情は暗くて見えない。

安心感さえ感じるのに、なぜだろう、心がもやもやと気持ち悪かった。

不安を感じた。

近くにいるNが、手の届かない遠くへ行ってしまうような。

なんでそんなことを感じるのか、彼と離れてしまうのが恐いと思うのか、よくわからないけれど。

目指している先に進むのが、少し恐く感じた。

空洞を抜けた先、そこも暗くはあったけれど、古木の中と比べたら随分と明るかった。

それに、さきほどの森の中とは、景色が変わってきている。

草むらはあるが、わりと整えられた所が多い。

もしかしたら、森の出口が近いのかも知れないと思った。

Nは黙って進む。

トウコが顔を見上げても、ただまっすぐ前を見ているだけだ。

話しかけようと思ったのに、言葉を喉から出せなかった。

Nに抱えられたまま、まっすぐ進むと、整った草むらを抜けた先に、芝生が整った小さな壇上になっている場所が見えてきた。

その近くで立ち止まると、Nはトウコに言った。

「君のポケモンを出して」

「え?」

突然のことで、トウコは戸惑った。

「ボクは人を待たせている。ここまでしか行けない」

あとは、君のポケモンにつかまって、歩いていって欲しいとNは言った。

人を待たせてたの?

そんなこと、一言も言っていなかったのに…。

ほんとは迷惑だったのかな。もっと早く言ってくれれば良かったのに…。

トウコは、Nに言われるがままテリムをボールから出した。

たぶん、仲間の中では一番、今、背が高いと思う。

「デリデリィ!」

テリムはボールから出るなり、Nはトウコをゆっくりと下ろし、立てるようにしてくれた。

Nはテリムに言う。

「いいかい?君は、トウコの足を支えるように歩くんだ」

Nの言葉に、テリムは頷いて見せた。

タッタカと歩いて、トウコの左側に立った。

「トウコ、この子につかまりながら歩けば、歩きやすいはずなんだ。後は、1人でできるよね?」

Nの言うとおり、テリムにつかまってみると、思った以上に歩きやすかった。

テリムも左足を気づかってくれている。

ほとんど左足をのせてくれているようなものだった。

歩調もそろえてくれる。

「うん…これなら大丈夫そう。ごめんなさい。人を待たせているなんて、知らなかったわ」

はじめに、聞くべきだったのかもしれない。

Nを頼りにしすぎてしまった。

「いいんだ、すぐ近くにいるはずだから。足の怪我、早く誰かに見てもらうんだよ」

Nは笑顔でそう言った。

いつもと変わらない笑顔。

それでもなぜだろう。

「うん…色々、ありがとう」

トウコも笑ってみせる。

お礼を言いながら、不思議と胸がそわそわしていた。

なんだろう、今日のN、何かが違う。

「じゃあね、トウコ」

違和感の消えないまま、Nが離れていく。

なぜか、この先へ行くことなく、元きた道へ帰って行くNとゾロア。

暗い森。

あんな中で、人と待ち合わせ?

いつもと違う、わだかまりが胸の中にもやもやと残った。

「デリー?」

浮かない顔のトウコを、テリムが心配そうにのぞき見た。

「ありがとう、テリム。行こっか!」

「デリー!」

明るく頷くテリムに、トウコも笑顔でかえす。

そこから、まっすぐトウコはテリムに支えられて進んだ。

小さな壇上をのりこえた。

芝生が整っていて、小さな広場みたいになっていた。

その周りに木が生い茂っているから森らしさをのこしているが、この場所だけを見たら自然公園の一角みたい。

そこに、周りをきょろきょろと見渡しながらいたのは、プラズマ団員の男だった。

盗んだドラゴンの骨を持っている。

トウコの姿を見つけるなり、慌てふためいている。

逃げる様子もない。

もしかすると、アーティーさんやアロエさんが、道路を塞いだおかげで逃げられずに、行き場がなくなって、戸惑っていたのかも知れない。

博物館で見かけた、他の団員を統括していた団員。

今回の事件のリーダーと思われる男だ。

「あなたね、盗んだホネをもっていたのは!」

「追っ手だと? まさか仲間が倒されたのか、こんな子供に!?」

突然、現れたトウコに、男は動揺していた。

トウコに他の団員が倒されたことが納得できないようだった。

ボールをつかんで睨み付けてくる。

「仕方ない、オレが相手だ!」

男はミネズミをくりだしてきた。

やっぱり、こうなるか……。

トウコはボールを握りしめた。

体半分、テリムに預けているせいか、いつもより、どうしても動作が遅くなった。

「お願い!タッくん!」

「ジャノノ!」

飛び出したタッくんは、それでもトウコの遅さをカバーするくらい、素早く移動した。

ミネズミの動きを見て、せいちょうを始めている。

トウコの怪我を気遣ってか、自分で判断しているようだった。

ここはタッくんの様子をみよう。

トウコは見守りながら、指示を出すことにした。

ミネズミは、みきりで技を封じようとしていただけに、空振りする。

「タッくん、グラスミキサー!」

タッくんは、大きな緑のつむじ風を起こした。

「ズミミ!」

はじき出されて、ミネズミは倒れた。

「くそ!このままですむと思うなよ!」

プラズマ団の男は、急いで2匹目を繰り出す。

次に現れたのは、メグロコだった。いかくをしてきたメグロコに、タッくんがにらみつける!

すかさず、素早い動きでつるのムチをはなつと、メグロコは目を回して倒れてしまった。

タッくんは、息が切れている。

「タッくん、無理はしないで!」

ボールを示すと、タッくんは首を横に振った。

戻る気はないみたい。

タッくんのいじっぱり!

仕方なく見守る。

「くっそー!これでどうだ!」

男が3匹目のポケモンを出す!

ミネズミが登場した!

タッくんは、そのまま決着をつけようとつっこんでいく!

疲れてるせいか、バトルを早く終わらせようと焦ってる。

そんな行動は、相手の思うつぼだ。

「それじゃだめ!タッくん!せいちょうよ!」

トウコの声に、タッくんは一瞬戸惑ったが、なんとかスピードを殺し止まった。

いつもより遅れてタッくんがせいちょうを始めた。

技を防ごうとした、ミネズミは、またまた技が失敗して、プラズマ団の男が慌てている。

「か、かみつけ!ミネズミ!」

「タッくん、グラスミキサーよ!」

大きな緑のつむじ風!

飛び込んできたミネズミをまきこみ、宙へと放り出す!

目を回してミネズミは倒れた。

「プラーズマー!これではポケモン達を救えない!」

男が嘆いた。

戦闘が終わって、ぐったりしているタッくんを、トウコは急いでボールに戻した。

もう戦闘は無理だ。

「もう、無茶して!」

タッくんは、ボールの中でもぐったりと寝そべっている。

トウコはため息をついた。

でも、タッくんのおかげで助かった。

犯人は追いつめられた。

「早く、盗んだ物を返してください!」