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IS  バニシング・トルーパー 006-007

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 本来なら、連絡事項の通達は社長補佐であるヴィレッタの職務ではない。わざわざ仕事の合間を見てそれを引き受けたのは、ヴィレッタも弟の顔が見たいと思ったのだろう。
 「……まずはAMパーツだが、ボクサーの方は既にロールアウトしたが、調整の人でが足りなくて、そちらへ送るのは再来月になりそうだ」
 「そうですか。……ガンナーの方はまだ掛かりそうですか?」
 「ガンナーの方の人手は今全部MK-III本体の方に回しているわ」
 「えっ?でもMK-III本体はもうエンジンを仕上げるだけという話だったのでは……」
 「例のトロニウムエンジンは普通の制御方式では安定できないと、研究チームが判断したのでな、T-LINKシステムと連動する方式に変更することに決めたわ。その意味、分かるよね」
 「はい。つまりMK-IIIの本当の力を発揮できるのは、念動力者だけになった、ということですね……私のような」
 ヴィレッタを見据えるクリスの目に、強い意志が宿っていた。

 「そういうことだ。そのため、今組み立てた本体、つまりタイプRの方は通常エンジンに換装して、グルンガスト参式と共にドイツ軍の方に納品した。因みにこの二つのコア、いずれも性別制限を解除してある」
 「ドイツ軍に納品したって、大丈夫ですか?」
 世間にはあまり知られていないが、ハースタル機関にはISコアの性別制限を解除する技術を持っている。しかしそれを公開すれば、せっかく安定しつづある世界にまた大きな混乱を招く可能性があるため、機関内ではイングラム社長しか扱えないトップシークレットとされている。その技術の存在を知る極一部の社外人間もいるが、殆ど国や軍隊の上層部の人間であるため、無闇にばらすこともしない。クリスの存在についても、あくまで一夏のような特殊例として扱っている。
 「心配はいらないわ。ドイツ軍との取引は軍上層部との間で内密に行っている。お前も、他言無用だぞ」
 「はい、分りました」
 本来なら、機関のトップからテストパイロットに漏らすような情報ではない。それをクリスに知らせたということから、クリスの立場の特殊性を窺える。
 「とにかく、システムを見直した後、改めてタイプLを組み立てる予定だが、今のところロールアウトの具体時期は不明だ。当分の間はエクスバインボクサーを使ってもらうことになる」
 「それについては問題ありません。エクスバインには気に入ってますから」
 「ならいい。あと、提出した報告書も大体読んだが、その『白式」というISは確かに色々と興味深いところがある。こちらからも調べておくわ」
 「はい」
 「……連絡事項は以上だな。あっ、そうだ」
 「うん?」
 何かを思い出したように、ヴィレッタは手元の資料を置いて、机の引き出しから和菓子の箱を持ち出した。
 「……送ってきたお土産がもう私のところに届いた。美味しかったわ、ありがとう」
 「はい、機会があったらまた送ります!」
 「程々にな。っと、もう時間切れのようだ。私はこれから社長との打ち合わせがある。お休みなさい、クリス」
 「はい。姉さんも仕事の方、無理はしないでください」
 「ああ、分かったわ。クリスも、学園生活を楽しみなさい」
 手を振って別れの挨拶をした後、通信ウインドウからヴィレッタの姿を消えた。

 「相変わらず忙しい人だ」
 ヴィレッタはクリスに専属テストパイロットの座を譲ってから、ずっとイングラムの右腕として働いてきた。その大量な仕事をいつもそつなくこなして来たが、弟としてはそれでも心配したくなる。

 「まあ、ヴィレッタ姉さんなら、大丈夫か……うん?」
 パソコンの電源を落として洗面所に入ったクリスは、歯磨きを始めた。さっきまで千冬が使ってたため、室内の地面には少し水が残っていた。
 「拭いておこうか。雑巾、雑巾っと……あれ?」
雑巾を探している途中に、地面に落ちている黒い物体を気付いた。

 「これは……」
 左手でそれを摘みあげて見ると、滑らかな質感がクリスの指に伝わってきて、一瞬でそれがシルク製品だと理解した。
 そう、ストラップ、ベルト、そして二つのカップによって構成されているそれはまさに、
 「ブブブ、ブラジャー!? しかも黒!?」
 衝撃のあまりに、歯ブラシがクリスの口から地面に落ちた。
 今クリスが握っているのは、黒くて縁にレースが付いている、かなりセクシーなブラジャーだった。
 しかもカップの部分は結構ボリューム感がある。

 「はっ、ははは、参ったな。一夏のやつ、こんなものを俺の部屋に忘れたなんて、困るじゃないか……て違うだろう! これは普通に考えたら織斑先生のものだろう! 馬鹿か俺!」
 自分の担任先生のブラジャーを摘んで、一人漫才を始めたクリス。
 「いや待て。ということはさっきの織斑先生はノーブラ……?!」
 ブラジャーを凝視したまま、クリスはさっき部屋に居た千冬を必死に思い出そうとするが、
 「ってジャージじゃよく分からねえよ! 落ち着け! いつものクールな俺になれ!」
 深呼吸して、クリスは自分に落ち着かせる。

 「うむ、88か。これはなかなか……って、冷静になってもやる事同じじゃねえか!」
 冷静になってブラジャーのタグを確認する自分に突っ込みを入れた。

 今まで大人びいた言動を取っていて、同年代の女の子に飄々とした態度を取って来たクリスとって所詮は思春期の少年、大人の女性の色気に抗える術はなかった。 
 「と、とりあえずここに置いて、明日にても織斑先生に取りに来てもらおう」
 ブラジャーを脱衣カゴに入れて、胸の鼓動を無理やりに押さえ込んだクリスは洗面池の前に戻った。
 「うげっ、歯ブラシ粉を呑んでしまったよ……」

 「ああ、もう十一時だ。そろそろ寝ないと明日の授業は……」
 ベッドに戻ったクリスに、さっきまで消えていた眠気が一気に襲ってきた。
 「そういえば、明日の夜は一夏の就任パーティーって話だったけ。あっ、後バニーガールが……」
 朦朧としていく意識の中、クリスは明日の学園生活を考えて小さな声で呟きながら、眠りについた。