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IS  バニシング・トルーパー 006-007

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stage-7 ブレスレットとケーキと斬艦刀と



「貴方、レディとの待ち合せに遅れてくるなんて、恥かしいと思いませんの?」
 オーブンカフェのテーブルに座っている、青いワンピースを着た金髪少女はふんっと頬を膨らませ、息を切らして走ってきた、目の前に居る少年に非難の言葉をかけた。
 「……す、すまん。待っただろう?」
 乱れた呼吸を整えて、少年は少女に詫びながら、テーブルの椅子を引いて座った。
 「そんなに待ってませんわよ。ただ遅刻は気に入らないだけです……ただの5分でも」
 素っ気無い態度で少女は否定したが、彼女の前に置いてある、空になったカップが事実を語っていた。
 それに気付いた少年は、やれやれと微笑みながら、ポケットから小さな紙袋を取り出して、少女に差し出した。
 「本当にすまんな。お詫びにこれをやるよ」
 「それは?」
 紙袋を受け取り、少女は中の方を覗く。

 「まあ、一応姉さんに相談したんだけどさ、選んだのはオレだ」
 「これって……」
 少女は袋の中身を指で摘み出して、そこに見えたのは、可愛い銀のブレスレットだった。
 「いつもお前に付き合ってもらってるばかりだし、感謝の気持ちということで、貰ってくれ」
 ブレスレットを手のひらに乗せて凝視する少女に、少年はプレゼントの意図を話した。
 「そ、そうですか。なら、貰ってやってもいいわよ」
 眉を寄せて、赤らせた顔を俯せて隠しながら、少女はブレスレットはバッグに入れた。
 「ああ、そうしてくれ」
 少女が素直にプレゼントを受け取ったのを見て、少年もうれしそうに笑った。

 「こ、コホン。それで、今日私を呼び出した理由は何です?」
 軽く咳ばらいして、顔がまだ赤のまま、少女は少年に待ち合わせの目的を問う。
 「実はな、その……勿論お前の意志を尊重するけど、もしよかったらさ、俺と……」
 「えっ、なに?よく聞こえませんわよ?」
 耳を澄まして少年の声を聞き取ろうと努力するが、少年の声は段々小さくなっていき、よく聞き取れない。ふっと周囲を見ると、周りの風景も段々溶けて行き、そして……

 「……嫌な夢だったわね」
 部屋の天井を見て、ベッドで仰向けに寝ている少女・レオナ・ガーシュタインは、今日一日最初の言葉を発した。
 顔を横に向くと、枕元に置いてあった銀もブレスレットが目に入った。
 「……馬鹿」


 IS学園にいるクリスと一夏達が、クラス代表決定戦を行った次の日の朝に、ドイツ首都方面軍基 地、首都軍指揮官エルザム・V・ブランシュタイン少佐の勤務室に、一人の来訪者が居た。
 「ギリアムのために朝早く起きて焼いたものだ。ゆっくり味わってくれ」
 「……食べるのは久しぶりだが、相変わらずにいい腕だよ。エルザム」

 来訪者の名は、ギリアム・イェーガー。国際IS委員会の情報工作員であり、エルザムのプライベートでの友人でもある。
 真っ黒のコートを着て、長い紫色の髪が顔の半分を隠したギリアムが、エルザムの机の向こうにある椅子に座って、彼と会話していた。
 二人の前に置いてあるのは、エルザムが自ら作ったチョコケーキ。ギリアムの好みに合わせて味付けを苦めにしており、一口食べたギリアムも満足そうな表情をしていた。

 「それはよかった。ゼンガーは全然ケーキを食べてくれなくてな、腕が落ちてないか、不安だったんだ」
 エルザムの最大の特技は、料理とお菓子作りである。その腕はプロも舌を巻くほどのもので部下の間にも人気が高いことは、ドイツ軍の中ではかなり有名な話。

 「そういえば、ゼンガーはどうした? 朝稽古か?」
 いつもエルザムと一緒にいる彼の戦友の姿が見えないことに不思議に思い、ギリアムは疑問を口にした。
 「いや、今は勝負に備えて、精神統一をしているはずだ」
 背を椅子に預けて、エルザムが紅茶を飲みながら、ギリアムの疑問に答えた。

 「勝負? 剣道の試合か?」
 「それは後で君自身の目で確かめてくれ」
 エルザムの口元に、不敵な笑いが浮かべた。

 「もったいぶるね……まあいい。今日俺を呼んだのは、ケーキの味見をするためではなかろう?」
 ケーキを平らげたギリアムは口を拭いて、話の本題に入る。エルザムもカップを机に置いて、真剣な顔して仕事モードに入った。
 「これからの話は、軍の内部でも知る人間は極僅。君を信頼して話すが、漏らさないようにしてくれ」
 「わかった」
 エルザムの注意に、ギリアムがすぐ頷いた。
 親友の信頼には信頼で返す。それがギリアムのポリシーだ。

 「……ギリアムは、イングラム・プリスケンという男と会ったことはあるか?」
 「名前は知っているが、実際にあったことはない。国際IS委員会の会議は、いつもヴィレッタという女が彼の代役として出席していたのでな」
 ISと関わるものなら、だれでもハースタル機関のトップ、イングラムの名は知っているが、ギリアムはその男と直面する機会はなかった。

 「……私はあの男と何回か会ったことはある。なんというべきか……時にやっていることが矛盾しているように思えて、意図が読めない男だった」
 あの青い長髪の男の顔が目に浮かべて、エルザムは眉を寄せた。
 「そうか。あの男はどうかしたのか?」
 「実はな……何時の間にか、あのイングラムがマイヤー総司令と極秘に接触したらしい。しかもマイヤー総司令もどういう訳か、上層部と話をつけてハースタル機関に新型ISを注文して、二つのコアも渡したのだよ」 

 そこまで言うと、エルザムは指を組んで顎に当てた。
 ドイツ軍部の総司令マイヤー・V・ブランシュタイン、つまりエルザムの父親は軍のトップに立つもの。いくら繁盛しているとは言え、民間企業の社長が簡単に面会できる人物ではない。まして押し売りされるなんて、信じ難い話だった。
 「私も数日前までこの話を知らなかった。いきなりIS二機が運び込まれて、慌てて総司令に確認を取って見たが、総司令はただパイロットを指定して、私に緘口令を敷くように命じただけだった」
 「……それは確かに妙の話だな」
 「しかも驚くべきことはそれだけではない。総司令が指定したパイロットはなんと……」

 エルザムの言葉の最中に、彼の机にある電話が鳴った。一旦言葉を止めて、エルザムは電話のボタンを押した。
 「エルザム少佐」
 電話から、エルザムの副官の声が聞こえた。
 「どうした?」
 「レオナ・ガーシュタイン少尉が到着しました」
 「了解した。そのままIS演習場に行って、準備を進めろと伝えてくれ」
 「分かりました」

 「さてっ」
 再びボタンを押して電話を切ったエルザムは、椅子から腰を上げた。
 「口で説明より、君自身の目で見た方がいいだろう。ついて来てくれ、ギリアム」
 「……そうか。何を見せてくれるか、楽しみとさせてもらおう」
 多分新型ISの演習だろうと思って、ギリアムも立ち上がって、エルザムと一緒に勤務室を出た。

 「レオナと言えば、彼女最近は軍からIS専用機を受領したそうではないか。大したものだよ」
 移動の途中に、ギリアムは最近聞いた話を話題にエルザムに振ってみた。