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IS  バニシング・トルーパー 006-007

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 「ああ、自慢の部下だよ。少尉の階級で収める器じゃないさ。今はまだ若いが、その内私の上まで行くかもしれんな」
 レオナ・ガーシュタインの家、ガーシュタイン家はブランシュタイン家の分家であり、フランシュタイン家と同じ、ドイツの軍事名家でもある。
 長女としての彼女は家族の中でもずば抜けた天才で、既にトップの成績で飛び級して士官学校を卒業して任官されていた。一年前から本人の強い要望により、従兄のエルザムの部隊に配属されて、今に至る。
 色恋沙汰の話一つもなく、ただ軍人として生きて来たレオナは、誰の目から見てもかなりの美少女である。端正な顔立ち、サファイアのような青い瞳、明るい金色のロングヘア、そして同年代と比べて発育良好なプロポーションを備わっている。そんな彼女に縁談の話は後を絶えないが、全部彼女に断られた。家族が原因を聞いても、彼女は何も言わない。そのせいで、エルザムもよく彼女の家族から説得を頼まれる。

 「ついたぞ。ここだ」
 エルザムがギリアムに案内したのは、基地内のIS演習場の観戦室だった。強化ガラスを越して、下にある円形の演習場の全体を見渡せる。
 「座ってくれ。すぐ始める」
 室内に置いてある高級そうなソファを指して、エルザムは壁にある電話を取った。

 ソファに腰をかけたギリアムはガラス越しに、演習場を眺める。
 「そういえば、来る途中にだれとも会わなかったな」
 何かを指示したエルザムは、電話を戻して、ギリアムの隣に座った。
 「ああ、一応最高機密でな、人払いはしておいたよ」
 「そうか。益々楽しみだ」
 それほどの機密を見せるということは、それに巻き込むということ。だがエルザムはそれを自分に見せたいというのなら、長年の親友を信じるべきだとギリアムは判断して、エルザムに軽く笑って見せた。
 そしてエルザムもその意味を理解したように、嬉しそうに微笑み返した。
 「……ああ、期待していてくれたまえ 」

 
 「準備は良いか、レオナ」
 電話越しに、エルザムは待機室に居るレオナに問いかけた。
 「いつでもいいですわ、エルザム様」
 「……分かっていると思うが、手加減はしないほうがいい。相手が相手だけにな」
 「はい、全力を尽します」
 「ならいい。では、ご武運を」
 「はい」
 励ましの言葉を掛けて、エルザムは電話を切った。レオナも準備室を後にして、演習場のグラウンドの方へ行った。

 グラウンドに出て、眩しい日差しにレオナは一瞬手でそれを目から遮った。
 軍の支給品の黒いISスーツを着ている今のレオナを見て、その発育良好のプロポーションは訓練によって引き締まっていて、決して無駄な肉はないことが分かる。

 「エルザム様……」
 少し高い位置にいるエルザムとギリアムに敬礼して、レオナは自分の首に下げている十字架形ネックレストップを掲げて、ISの展開を始めた。
 「来なさい、ズィーガー!」
 一秒も掛からないうちに、光の粒子が既に彼女の身を纏って、形を成した。

 「ズィーガー(Sieger)……勝者か。強気の彼女にふさわしい名称だ」
 彼女の専用機の名を聞いて、ギリアムが感心したように頷いた。

 細い腕部装甲、大型スラスターを装備した脚部装甲、女性のイメージを醸し出しているハイヒールのような足パーツ、そしてハサミの形をしている特徴的な肩部装甲。青と黒のツートンカラーのIS・ズィーガーは今、レオナと完全に一体化した。
 専用IS・ズィーガーは、二年前ハースタル機関から譲渡してきたヒュッケバインMK-IIの技術データを元に、ドイツが独自に開発した機動性重視のレオナ専用機。スベック上は第三世代として分類されるはずだが、投入した技術の一部は使用者の制限が存在していて、汎用性が欠けているため、準第三世代として分類されている。

 「片方はレオナ。もう片方は新型か」
 そう思って、ギリアムは演習場のもう一つの入り口に視線を向けた。
 暫くして、入り口から人影は見えた。
 武人らしい精悍な風貌をしている男一人が、両の目を閉ざして瞑想するかのように、静かに歩いている。

 「ゼンガー?」
 そこに現れたのは、ギリアムとエルザム共通の友人、ゼンガー・ゾンボルトだった。
 「しかもゼンガーが着ているあれって、ISスーツ?」
 ギリアムの言うとおり、今のゼンガーは、ISスーツを着ていて、その筋肉隆々の体型をより引立てている。
 「まさか!?」

 演習場の中、ゼンガーが既に目を開けて、右手を前へ掲げた。
 その右手には、一つ大きな腕輪があった。
 「一意専心!!」
 叫びと共に、腕輪が桜の花びらが舞うような光の粒子と化して、ゼンガーの体を包んだ。纏った粒子は赤銅色の装甲と化し、その表面に黄色のラインが走り、骨太なフォームを形成していく。
 3秒ほど経つと、ゼンガーのIS展開も完了した。
 グルンガスト参式。それがゼンガー今身を預かっているISの名前だ。機動性重視のためスマートな体型に設計されたズィーガーと対照的に、ゼンガーの手足や胴体を覆う装甲は多い上にかなり厚く、背中に負っている巨大なドリル二つに合わせて、一目でそれがパワー重視型ISであることが分かる。

 「……なろほど。男が使えるISか。確かに極秘にする必要はあるな」
 手を顎に当てて、ギリアムは眉を寄せた。
 こんなことが漏れたら、すぐ新たな戦争の火種になりかねない。機密にする必要性は十分にあった。
 「因みにマニュアルの記載によると、あのISの名は『グルンガスト参式』だそうだ」
 「参式? 壱式と弐式もあるのか?」
 「……さあな」
 ギリアムの疑問に、エルザムは両手を広げて肩を竦めた。

 「今はとりあえず、ゼンガーのISでの初陣を見届けよう」
 「初陣? それでいきなりレオナ相手はきつかろう」
 ギリアムがそう言うのも無理はない。いくら示現流剣術の達人であるゼンガーでも、ISの戦闘経験が皆無。ISの操縦に慣れたレオナを相手にするのは、あまりにも無謀だ。
 「機密性の高い模擬戦は信頼できる人間でないとな。それに忘れたのか? ゼンガーは生身でISを勝ったことがあるのを」
 「あれは相手がわざとゼンガーに接近戦を挑んだのが原因だと聞いている。冷静なレオナならそんなことはしないだろう」
 「まあ、確かにレオナならゼンガーと接近戦はしないだろうが、今のゼンガーにはISがある。相手がしないなら、自分からしに行けば済む話だ」
 「問題は、IS経験の浅いゼンガーは、レオナ相手にそれをできるかどうかだな」
 「それは、すぐに分かる」
 そう言って、エルザムは観戦室のコントローラを操作して、模擬戦開始の信号を出した。

 「では参ります、ゼンガー少佐」
 試合開始のブザーが響いたと同時に、レオナは両手に武器を呼び出した。
 ブレードレールガンと呼ばれる、二丁の銃剣だった。銃身は短くて遠距離では対応しにくいが、弾速と連射性能が高く、加えてバレルの下方に実体剣が取り付けているため、近中距離での射撃と格闘両方をこなせる複合武装である。
 「うむ。遠慮は要らん、全力で来い」
 一方、ゼンガーはただその巨大な拳を握り締めて、身を構えた。