二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシング・トルーパー 009-010

INDEX|2ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

 「その通り。質量が体積と釣り合ってないか、若しくは衝突する前に減速でもしない限り、不可能な話だ。形が崩れてないところを見ると、中は空っぽだとは考えにくい。しかしもし減速をしたのなら……あれは人造物である可能性が極めて高い」
 「……」
 ここまで聞くと、イルムの顔に浮かべていた軽薄そうな笑みも一瞬で消えた。
 「人造物……」
 ウィンの言葉の意味を反芻するように、リンはウィンの顔を見て呟いた。
普通の人間が聞いたら、そんな馬鹿なと軽く笑い飛ばすだろうが、この宇宙に限りなく近い空の下まで来ているリン達にとっては、笑えない話だった。
 
 「だから君は、あれがイングラム社長が言っていた『来訪者』によるものだと思ったのか?」
 「……ああ。断言できるほどの根拠がないが、可能性が高いと思っている」 
 ウィンは絶対に絶対的な答えを言わなかったが、彼が語った不思議な点を考えると、否定できる余地はあまりない。そう考えると、これからは真相を確かめに行くのは危険かもしれない。

 しかし男二人が深刻な顔して考え込んでいる最中に、リンは手をテーブルにつけて椅子から立ち上がった。
 「そのための私だ。……いくぞ」
 ここで考え込んでも答えは出ないなら、自分の目で確かめるまで。じっとしているよりはまずはすべき事をやっておくのが、リンという女だ。
 「……そうだな。案内はまかせろ」
 「じゃ、俺もお供させてもらおうかな」
 立ち上がったリンを見て、考え込んでしまった自分達が馬鹿馬鹿しく思えてきた男二人もいつもの表情に戻って、椅子から腰を上げた。

 二キロメートルの距離は短い。車を使った三人はすぐに目的地の谷に到達した。
 ウィンが言った通り、そう深い谷ではない。
 「あれか」
 「……本当に衝突痕跡がまったくないな」
 谷の上から見下ろしたリンとイルムは、すぐに谷底に転がっている隕石の姿を確認できた。そして隕石を確認したリンは、コートを脱いでイルムに預けた。
 「下がっていろ」
 イルム達を少し下がらせて、リンは自分の首につけていたチョーカーを軽く触った。
 「……」
 無言のまま、リンは意識を集中して、自分のイメージをはっきりさせると、チョーカーは光の粒子へ溶かし、マオを体を包み、瞬きの間に青い鎧と化してリンの身に纏った。

 「……これが噂の凶鳥か。初めて見たよ」
 メガネを正して、ウィンは興味深そうな視線でリンが纏った鎧を凝視する。
 背部にある蝶状の小型重力翼、鋭い曲面のフォームを持つ手足の装甲。リンが今展開したISはまさに、かつて大事故を起こしてクリスの片手と大量の研究者の命を奪ったIS――ヒュッケバインMK-Iだった。
 二年前の事故から、密かに大幅な改良を加われた後再び組立てられ、今ではブラックホールエンジンが安定した状態で稼動している。
 「まあ、あんまり世間の目には触れられないISだからな」
 イルムは残念そうに肩を竦めて、そう言った。

 「では、行って来る」
 「リン」
 後ろに居る男二人に一言断って、リンはゆっくりと谷の下へ降りていこうとした矢先に、イルムに呼び止められた。
 「何だ?」
 「気を付けろ。状況がおかしいと思ったらすぐ戻れ」
 リンを心配しているイルムの顔は、心配そうな表情をしていた。
 「……そのためのヒュッケバインだ。余計な心配はするな」
 イルムの目を見返して返事した後、リンは軽く手を振って、再び彼に背を向けて谷へ降りていく。
 「……ふん、仲睦ましくて羨ましいよ」
 二人の遣り取りを見て、一歩ウィンは後ろイルムの肩を叩いた。そしてイルムは口元が薄い笑いをして、ウィンを見返した。
 「帰ったらグレースの所に行け」
 「……それは嫌だ」

 谷は見た目通りそれほど深くはないが、リンは慎重に、ゆっくりと隕石の所に近いて行く。
 「ハイパーセンサーも効かないとはな」
 さっきウィンの言葉を検証しようと思って、接近している途中にリンは一応ISのハイパーセンサーで隕石をスキャンしたが、役に立てそうなデータは得られなかった。これで人造物の可能性がさらに上がった。

 手で触れられる距離まで来たリンは、至近距離で隕石の外見を観察する。
 車ほどの大きさで、茶色の表面に少し暗い赤色の染みがついている隕石だった。
 僅かの小石が転がっている、凹みもない周囲の地面を見ると、とても隕石が墜落した後とも思えないが、隕石の下にある植物の潰された痕跡がまだ新しい。

 「……表面は普通だな」
 出したマグナビームライフルを握りながら、ゆっくりと左手を伸ばして隕石の表面を触って確かめる。
 装甲を覆った手では感触がわからないが、表面の粗さは見た限り周囲の岩と大して変わらない。
 「……うん?」
 指関節で軽く叩きながら周囲を確認していると、少し離れた所にある草叢の中に金属の輝きを放っている物体の存在に気付いた。
 「これは……」
 近づいて摘み上げて見ると、それは小さくて薄い金属プレート一枚だった。その表面に幾つの丸い模様があった。
 「汚れや傷も少ない……最近に落ちたものだな」
 手の平に置いて両面をチェックして、どこにも所有者の情報がないのを確認する。とりあえず持ち帰ると決めたリンは、腰部の収納ケースを開けて、プレートを入れようと思った矢先に、プレートを摘んでいる指に、少し力が入った。
 ビィビィビィ――
 後ろにある隕石から低い電子音が響いた。
 「っ!!」
 その音から自分の後ろに何か異変が起ったと判断したリンは、一瞬で振り返ってライフルを隕石に向ける。
 驚くことに、視界に映った隕石はまるで燃えている炭のように、赤く光り始めた。
 「何っ!?」
 ポォォォン!!
 巨大な爆発音が、谷の中で轟いた。



 一方、リン達が仕事に励んでいるこの休日の朝に、セシリアはいつものようにクリスの部屋のドアを叩いた。
 「クリスさん?起きていますか?あの、もし良ければ、今日は私と……あっ」
 ドア越しでクリスと話している途中に、後ろからドアを開ける音がした。
 「ああ、オルコットか。クレマンならいないぞ」
 そこに現れたのは、千冬だった。
 「えっ、クリスさんはいませんの?」
 「ああ、何でも限定のケーキを買うために、朝早くその店に行くとか言ってたな。聞いてないの か?」
 「そ、そんな……」
 それを聞いたセシリアは、一瞬で落胆した顔になった。
 「みっしり詰まった二人の休日計画が……」

―三時間後―

 聖マリアンヌ女学院中等部の生徒会長である五反田蘭は今、とても悩んでいる。
 今は午前十時。そして蘭は隣町の一番大きい本屋の中に立っていた。
 「これは何というか……想像以上に多いな」
 彼女が今に向っているのは、IS関連書籍のコーナーである。
 「困ったな……どう選べばいいのよ……」
 蘭が本屋に訪ねた目的は、来年のIS学園入学試験に向って、ISの基本知識の書籍を購入するためだった。身近にISの詳しい人間が居なかったので、一人で来て見たが、大量に並んでいるIS関連の本を前にして、彼女は目をくらませていた。

 「うん~取り合えず、これとこれを……」