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IS  バニシング・トルーパー 011-012

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 ワイヤーから相手の力を感じた瞬間、クリスはバックパックのスラスターを噴かして、加速して相手と距離を一気に縮めて、相手が振ってきたパンチを避けて、ワイヤーに体重をかけて相手の腕を中心に迂回して、敵の背後を取った。
 そしてその時、クリスの手は既に新たの武器・M13ショットガンを握って相手の背中に突き付けた。

 「砕けろ!」
 パンっ!パンっ!! パンっ!!! パンっ!!!! パンっ!!!!!
 一回撃って、ポップアクションしてもう一回撃つ。電光石火の速度で至近距離から相手に散弾五発を連続に撃ちこんだ後、
 「未だだ!」
 ショットガンを仕舞って更に新武器を呼び出す。
 「貫け! Gインパクトステーク!!」
 新たに手に握った大型パイルバンカー・Gインパクトステークの銃口を敵に当てる。
 トォォンッ!!
 トリガーを引いて、低い爆発音が響いたと同時に、相手はグラウンドの中央から一瞬で辺縁まで吹き飛ばされて、地面に落ちた。
 Gインパクトステーク、それは炸薬の爆発で内蔵の杭を撃ち出して敵を打撃するという、至近距離でこそ威力を発揮できる武装である。

 「やったのか……!?」
 「いや、まだよ!」
 一夏の疑問を答えた鈴が言う通り、塵煙の中から所属不明のISがふらふらと立ち上がる。
 ショットガンとGインパクトステークの直撃を受けて、パイロットの本体皮膚表面を覆う装甲は酷く破損して、中の部分が顕になった。
 「無人機!?」
 視界に入ったものが信じられないみたいに、鈴と一夏が驚異な声を上げた。あの所属不明のISの破損した部分から見える中身の部分は、人の皮膚ではなく金属部品だった。

 しかし地面まで降りたクリスはそれを見て、まるで予想内のことみたいに動じることなく、ただGインパクトステークを戻して、新たの武装を呼び出した。
 「まだ動けるとはね。とどめは俺のお気に入りで刺してやるよ」
 トンッ!
 重物がクリスの足元の地面に落ちて、大きな鈍音が響く。
 「あれって……!」
 クリスが呼び出した武器を見て、一夏が素頓狂な声を上げた。
 エクスバインの右手に握っている長いチェーン、そしてその末端に取り付けている刺つきの巨大鉄球。クリスはそれを振り回して、高速に回転させる。

 「食らえ! ブーストハンマー!!」
 腕を振り下ろして、慣性に沿って鉄球が無人機ISへ飛んで行き、鉄球に内蔵されているバーニアが噴き、ハンマーを更に加速させてその威力を増大させる。
 ドガァァン!!
 重い衝撃音が響き、ふらふらして既に崩壊寸前の状態で巨大なハンマーの一撃を食らった無人機はコンクリートの壁に叩きつけられ、盛大に爆発した。
 「我に砕けぬものなし! ってね!」

 「やべっ、あれ欲しい……」
 羨ましそうな目線で、一夏はクリスが握っているブーストハンマーに凝視していた。
 「うん?今なんか言った?一夏」
 「い、いや。何でもない」

 「やりましたわ! 鮮やかな手際でしたね、さすがクリスさんです」
 「あ、ああ。何が予想以上に凄かったな」
 三分もかからない内に所属不明の無人機ISを完全破壊したクリスの戦いに、セシリアは嬉しそうな顔になり、箒は呆気に取られ、コーヒーカップを持って苦い顔していた真耶もうんうんと頷きながら僅かな笑みを浮かばせた。
 「……ふん」
 口元が僅かに上がり、結び付けそうな勢いで寄せていた眉を元の位置に戻した千冬は椅子から立ち上げて、通信機を手に取った。

 「さて、これでステージ1クリアだな」
 ブーストハンマーを戻したクリスは警戒を解けることなく、再びパイパーセンサーの索敵感度を最大にしたが……
 「馬鹿者!」
 その時に、アリーナ内のスピーカーを通して、千冬の声が響いた。
 「そんなに壊したら、調査が出来んだろうか!」
 「……すみません」
 「ピットのシャッターは貴様が修理しろ!」
 「ってえ――! 無理ですよ!」
 「まったく! システムの回復は後もう少しだ、そこで待ってろ!」
 「……はい」
 口調では怒っているように聞こえるが、千冬の声はいつもより柔らかな感じがした。しかしクリスはそれに気付く余裕がなく、ただハイパーセンサーのレーター画面を注目していた。
 ハイパーセンサーは相変わらず何も捕捉出来ていないが、ダイレクトに脳に伝わっている危機感が、クリスにこのアクシデントが未だに終わっていないことを告げている。

 「あんた、意外とやるじゃない? 見直したわ」
 クリスの近くに来た鈴はクリスの戦いに、素直に感心していた。
 「クリス、とりあえずピット内に戻ろうぜ」
 エクスバインの肩装甲を叩いて、鈴と一緒にクリスに近づいた一夏はひとまずピットに戻ることを提案した。
 「ああ、お前達は先に戻れ、俺は……」

 ビィビィビィ—!
 「……っ!」
 その瞬間に、ハイパーセンサーが何かを探知し、レーダーの警告音が響いた。

 「上か!」
 アリーナを覆うエネルギーシールドより更に上空にある反応が、クリスの視界に点滅している。
 「おいクリス、どうしたんだ?」
 上空を見上げるクリスを見て、一夏と鈴も彼の視線を追って上空を見上げた。
 「気をつけろ! 来るぞ!!」
 「来るって、何が?」

 ビシャァー!!
 一夏がクリスに質問した瞬間に、甲高い砲撃音が響いた。
 パリンっ!!
 「うわっ!」
 「キャっ!」
 アリーナのエネルギーシールドが砕かれた音がして、凄まじいエネルギーの激流が一夏と鈴へ降り注ぐ。
 「危ない!」
 砲撃が二人に直撃する直前に、クリスは二人の前に立ち、ビームから二人を庇った。
 グラビティウォールは既にさっきで一回使用して、チャージが間に合わないため、クリスはエクスバインのエネルギーシールドでその砲撃をそのまま受け止めるしかない。
 「うわぁぁ!!」
 ビームの直撃を受けたクリスは地面に叩き付けれられて、大量の塵が舞い上がる。

 「クリス!」
 「何っ! 外からの砲撃なの?!」
 自分を砲撃から保護したクリスを心配する一夏はすぐに高度を下げて彼の安否を確認し、鈴は双天牙月を構えて、警戒を強めて砲撃元の元に視線を向ける。
 「……あれって!」
 鈴の視界に映ったのは、エネルギーシールドの開けられた大きな穴から静かに降りてきた、凶悪の オーラが漂う蒼い闘士の姿だった。


 一方この頃、IS学園から数百キロメートル離れた場所の上空に、一機の輸送ヘリが飛んでいた。機身にペイントされている文字から、一目でそれがハースタル機関に所属していることが分かる。
 「なに? それは間違いないな!?」
 輸送ヘリの中で、一人の男が緊張した面持ちで携帯電話で会話していた。黒いコートに顔を半分を隠した長い髪の特徴から分かるように、この男はギリアム・イェーガーだった。
 そして彼の隣に、ロープを来た学者風貌をしている中年の男が浮かない顔で電話をしているギリアムを見ていた。
 「大変です、ハミル博士。どうやら一歩遅かった様です」
 携帯をポケットに仕舞って、ギリアムは視線を学者風の男に向けて話をかけた。
 「まずいな……今のエクスバインでは太刀打ちできん」