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IS  バニシングトルーパー 015-016

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 クリスの発言に反応した一夏と鈴が噴いたのと同時に、楠葉は興味深々な視線を向けてきた。やはり女の子はそういう匂いする話題に惹かれやすいようだ。
 「うん……口で説明するより、実際に聞いた方がいいでしょ」
 意地悪そうに口元を吊り上げて、クリスは携帯をポケットから取り出して操作する。

 『なんて薄情なやつ! うちで何回ただ飯食ったか覚えてるの?!』
 携帯から、鈴の声が響く。間違いなく、クラス対抗戦の時一夏と鈴の会話だ。

 「録音したのかよ?!」
 顔が真っ赤になって、鈴が凄い勢いでクリスに襲い掛かり、電光石火の速度で携帯を強奪した。

 「消去だ消去! まったく油断も隙もないな」
 「エクスバインに記録された、というが正解だ。詳細な内容は既にレポートにして織斑先生に提出したんだけど」
 「「なにっ!!」」

 「まったく、お前もエグイ事するね。一夏がシスコンだと分ってて……うん?」
 携帯を操作している鈴を目尻にクリスと話している途中、隆聖は窓の外の何かに注意を引かれた。

 「あれは……!」
 クリスも隆聖の視線に沿って、窓の外に視線を向けた。

 道の向こうの裏路地に、小柄な少女一人が不良数人に絡まれていた。下品に笑っている不良たちに対して、少女の顔は不安と恐怖に満ちていた。
 
 「あいつら……!」
 それを見た隆聖は真っ先に立ち上げて、店から出ていた。

 「……やれやれ、熱い奴だな。一夏」
 「分かっている」
 どうやら一夏達も道の向こうの光景に気付いたようで、クリスに声をかけられて、すぐに立ち上がった。

 「俺も行こうか?」
 クリスと一夏が席から立ったのを見て、弾も腰を上げようとしたが、クリスは手で制した。
 「お前はここで女子達の面倒を見てくれ。俺と一夏がいれば十分だ」
 「おい、まさかISを……?」
 「違うよ。まあ、すぐ済むからそこで見物してろ」
 軽く手を振って、クリスと一夏も店から出て行った。そして残った弾は、女子達に説明する役目を引き受けた。

 「少しくらいいいじゃん~」
 「そうそう、暇なんでしょ?」
 一方、道の向こうの裏路地では、不良たちがいやらしい手つきで少女に迫る。
 「い、いえ。お姉さまを待ってるんです……」
 じわっと目に涙溜めて、少女は今にでも泣き出しそうな顔をしていた。
 「ほう? でもお姉さん来ないじゃないか」
 顔を近づけて、不良の一人は手を少女の肩に置いた。
 「い、いや……!」

 「おい、やめろ!!」
 路地の入り口から、ヒーローの声が響く。不良達と少女が一斉に目を向けると、そこには熱血少年・隆聖が立っていた。
 警察官だった父親の影響か、隆聖は昔から正義感が強い。大勢の男が女の子一人囲んでるのを目撃した以上、見逃すことなどできる性分ではない。

 「なんだてめえ」
 少女を放っておいて、不良達が寄ってくる。
 「やめろっつってんだよ!そんな人数で女の子一人囲んで、恥ずかしくねぇのか!」
 正統派熱血主人公的な台詞を口にしながら、隆聖は不良達に立ち向かおうとするが、肩に置かれたクリスの手によって制された。
 「少し待て」
 「止めるな! 俺は……」
 「まぁまぁ、お互いの為に、平和に解決しようではないか」
 そう言って、クリスは一夏を連れて不良達の前に出た。

 「関係ねぇなら引っ込んでろよ、てめえら」
 「ふん、貴様らこそ、さっさと失せろ。この男が誰なのか、知らんのか?」
 まるで見下すような口調で不良達と対峙して、クリスは隣の一夏を前に押し出す。
 「はあ? 知らねぇよ」
 「やれやれ、これだから頭の悪い連中は。織斑一夏も知らんのか?」

 「織斑? 誰それ……って織斑一夏!?」
 「そういえば、こいつの顔はテレビで見たことがあるぞ!」
 やや反応速度が遅いが、どうやら不良達もさすがに一夏のことは知っているみたいで、一瞬で顔色が変わった。

 「そうだ、ISを動かせる唯一の男だ。彼は政府の支援を受けて、専用のISを持っている」
 自分の事を棚に上げて、クリスはその青い瞳に残虐な光を宿して残忍な笑みを浮かばせた。
 
 「その意味が分るか? つまり、ここで貴様らのような下衆を処理した所で、テロリストに襲われて正当防衛したってことにすれば、何の罪も問われないぞ」
 「お、おい……」
 悪人面してるクリスを見て、隣の一夏がドン引きしてた。
 もちろん政府から支援を受けていると言っても、さすがにそこまでの勝手はできない。だが、不良を脅かすには十分に通用する嘘だった。
 
 「分ったら、さっさと失せる。それとも、ここで血祭りにあげてやろうか? 今日はちょっと殺し足りないとか言ってたし」
 一夏の袖を上げて、待機状態の白式であるガントレットを不良達に見せる。一夏もクリスにあわせて、ガントレットを発光させる。

 「ひぃっ! 逃げろ!!」
 「こ、殺される!!」
 不良達が蜘蛛の子を散らすのように、狼狽して逃げていく。

 「ふう……今日の平和、完了」
 「俺を殺人狂みたいに仕立てといて何が平和だ! お前の悪人っぷりにびっくりだよ!!」
 爽やかに笑いながら親指を立てるクリスに、一夏が渾身の突っ込みを入れた。

 「大丈夫か?」
 ふたりがコントをやっている間に、隆聖は囲まれてた女の子の方に歩いた。
 「う、うん。大丈夫です。有難う御座いました」
 地面に落ちていたメガネを拾い上げて、女の子は丁寧に頭を下げて礼を言った。その顔に、僅か涙の痕があった。
 「まったく、か弱い女の子を囲んで何を考えているだあいつら。ほら、ハンカチを貸すから、涙を拭いて」
 隆聖はポケットからハンカチを出して、女の子に差し出す。
 「有難う」

 襟元まで伸びてやや外側へ跳ねているラベンター色の髪と、メガネの奥にある大きな瞳。素朴な服装をしているが、その大人しい表情と控えめの身長で、男の保護欲を刺激する人形のように可愛らしい女の子だった。
 容姿から見れば、12歳前後に見えた。

 「えっと、一人か? 親は?」
 一夏も女の子に話しかけた。
 「お、親はいません。お姉さまと一緒だったの」
 頭を横に振って、女の子が一夏に返事を返した。

 「そうか。じゃ、お姉ちゃんの連絡方法は?」
 「きゃっ! ち、近づかないで!」
 「……あれ?」
 普通に話しをかけただけなのに、何故か女の子はクリスにだけ明らかな拒絶反応を示した。

 「お前の悪人面に怯えてるんだよ! ここはもういいから、お前は店に戻れ」
 「ひ、酷い……助けたのに」

 「ラト? そこにいるのはラトなの?」
 クリスが肩を落として店に戻ろうとしている時、路地の入り口の方に若い女性の姿を現れた。
 「お姉さま!」
 隆聖の隣に立っていた女の子はたたたと小走りして、その女性に抱きついた。
 「ラト!? どうしてここに? 遠くまでは行かないように言った筈ですよ」
 「……怖い人達にここに連れ込まれましたの」
 「怖い人?」
 顔を上げて、女性は警戒した視線で隆聖達を睨む。

 「ち、違うの! この人達は、私を助けてくれましたの」
 「あれ、そうでしたの? これは失礼しました」