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IS  バニシングトルーパー 015-016

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 誤解だと分って、女性はすぐ素直に頭を下げて謝った後、
 「……妹を助けていただいて、有難う御座いました」
 穏やかに微笑んで、男三人に礼を言った。

 綺麗に整った腰まで及ぶ黒髪ロングストレートを切り揃えた姫カットと上品な顔立ち、そして穏やかな雰囲気と優しい笑顔から、心に余裕がある年上女性イメージを人に与える。
 白いノースリープシャツと膝までの黒いプリーツスカート、そしてスカートの中から伸びる美脚を包む黒ストッキングというシンプルな格好ですか、そのまるでモデルのようなすらっとした長身体型によって、自身の魅力を最大限に引き出している。

 「いえいえ、正義感を持つ人間として、当然の事をしたまでですよ。礼には及びません」
 臭い台詞を吐きながらキザの笑みを浮かばせて、クリスはその女性の手を握った。
 黒いロングヘア+黒ストッキング+年上で優しそうな雰囲気。目の前の女性はクリスにとって、まさにストライクゾーン真ん中に入った理想な女性であった。
 握っているこの女性の手から感じたのは柔かい感触ではなく、かなり荒れている感触だった。
 しかしそれがクリスにとってはむしろプラス要素だった。
 (苦労してる家庭的女性な感じだ。いい、実にいい!)
 
((キャ、キャラ変わってる……))
 後ろにいる一夏と隆聖が呆れていた。

 「っいた」
 熱い視線でその女性の瞳を見つめるクリスの脛に、さっき助けた少女にローキックを入れられた。
 「お姉さまに触らないで」
 どうやらさっきクリスの悪人面をまだ忘れていないようだ。これ以上妹の反感を買わないように、クリスは一旦女性の手を離す。

 「ラト、助けて貰ったのに、そういう態度はダメでしょ?」
 「いえいえ。さっき不良達と揉めたとき、妹さんに少しばかり嫌な場面を見せましたのでな、多分私のことを怖い人だと思っているのでしょ。本当に申し訳ない」
 「そうですか? こちらこそすみません、ラトに代わって謝らせてください」
 「気にしてませんよ。私の名前はクリストフ・クレマン。宜しければ、お名前を教えてくれませんか?」

 「あっ、すみません、すっかり自己紹介を忘れていましたわね」
 手を胸にそっと当てて、女性はクリスに微笑みかけながら自己紹介を始める。
 「私の名前は、桜花凪沙。よろしくお願いしますね」

 「桜花凪沙さんですか。本人に似て、綺麗な名前ですね」
 「くすくす、お世辞上手ですね、クレマンさん」
 「本心ですよ。それと私を呼ぶときは、クリスって結構ですよ」
 「わかりました。ラト、あなたも自己紹介しなさい」
 「……ラトゥーニ・スゥボータです」

 「……?」
 妹の名前を聞いて、男三人の頭に疑問が浮かび上がった。
 姉の桜花凪沙は明らかに日本人の外見をしているが、妹の外見はどっちかと言うとロシア人に見えるし、名前もロシア語の単語だった。

 「私たちは孤児施設出身ですから、本当の姉妹ではありません。今は引き取ってくれた夫婦と一緒に生活してます」
 まるでクリス達の考えを見通したように、桜花は自ら説明した。

 「そうですか、さぞ大変だったでしょ。でも互いに思いやる気持ちがあれば、血縁なんて関係ありませんよ。私も家族は義理の姉しかいませんので、よく分ります」

 「「そうだったの!?」」
 後ろの一夏と隆聖が驚いた。クリスに姉が居るって話を一夏は知っているが、まさか義理で、しかも姉以外に家族がいないとは予想外だった。

 「あれ、言ってなかったけ? 俺、親の顔も知らないよ?」
 「言ってねえよ! というかそういう重い設定をさらっと言うなよ!」
 「何を言っている。お前らも大差ないだろう」
 「いや、そりゃそうだけど……」
 一夏は両親が行方不明のため、家族は千冬しかない。隆聖は父親が小さい頃に亡くなったため、今は病気がちの母親とふたりで暮らしている。

 「そう……貴方達も大変そうですね」
 手のひらを頬に当てて、桜花は心底から心配しているような表情をしていた。

 「いえいえ、うまくやってますから気にしないでください。そんなことより、二人は急ぎの用事がなければ、あっちの喫茶店で少し休んではどうですか? 妹さんもまだ完全に落ち着いていないでしょし」
 ラトゥーニをダシに使って桜花をお茶に誘いながら、後ろの二人に目を配って援護を要請する。

 「そうだな。あんなことにあったばっかりだし、少し休んだ方がいいかもな」
 ナイス援護だ、隆聖。今度お前が欲しかっているボル○スVの超合金をプレゼントしよう、と密かに心で誓ったクリスだった。

 「そうね。今日は私の落ち度で、ラトに怖いはさせてしまいましたし、皆さんにも迷惑をかけました。お詫びとして、私が奢りましょう」
 「いや、流石に女性に金を出させるわけにはいけませんよ。ここは私が奢ります」
 「ダメですよ、妹を助けってもらったお礼くらい、させてください」
 「そうですか。では今回だけはお言葉に甘えさせてもらいますよ」
 桜花たちの荷物を引き受けて、クリスは姉妹二人を喫茶店へエスコートする。

 「今回とか、あいつもう次回のことを考えてるよ……」
 「でもこれで、オルコットにいい報告材料が出来たな。千冬姉にちくった報い、受けてもらうぞ、フフフ」
 「お前、シスコンも大概にしろよ」
 クリスへの復讐計画を立てながら不気味に笑う一夏を放っておいて、隆聖はクリスの後を追った。