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IS  バニシングトルーパー 017-018

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 「今のお前は重要なサンプルとして各国に注目されている。だがもしお前がISを起動できる理由が解明され、男がISを使うこと自体珍しく無くなったら、お前は特殊性を失う。その時お前はISに乗り続けるのか? それとも、普通の人生に戻る?」
 「……」
 クリスの言葉を聞いた一夏は、すぐに返事できなかった。

 「セシリアや鈴たちは、自分の実力で専用機持ちになった。優秀だからね。彼女達はこれからの人生もISと一緒に歩いていくのだろう。だがお前はどうなんだ? 自分の意志でIS操縦者として生きていく覚悟があるのか? 今はスポーツでも、本質は所詮兵器。この世界にはISを所有しているテロ組織だってある。お前は戦争ができるのか?」
 それを言い終わった後、クリスも口を閉じて、やや混乱している一夏の目を見据えた。

 襲撃事件の時、一夏はただ夢中になって抵抗していた。
 深く考えていなかったが、あれは命の遣り取りだったのかもしれない。
 
 「クリスは……もう決めてるのか?」
 「俺か? とっくに決めているさ。俺にはISに乗り続ける理由と覚悟がある。そして、俺は俺の前に立つ敵に、容赦は絶対にしない」
 このセリフを口にするクリスの目は、冷酷そのものだった。

 「そうか……」
 一夏の目は迷っている。
 IS学園への入学は政府の強要だったが、彼はこの境遇特には反感も持たなかった。要は状況に流されていた。
 だが自分の意志はどうなんだ? これからはずっと白式と一緒にやって行けるのか?  
 そう思って、一夏は自分の腕で静かに眠っている相棒に目をやった。もし自分はISを起動できる男ではなかったら、白式も自分の相棒にならなかったのだろう。しかし自分は本当に白式に相応しい男なのか?
 
 その仕草に気付いたクリスは、椅子から立ち上がってベランダのドアを開けた。

 「あっ……」
 雨交じりの風が一夏の顔に当り、彼を混乱した思考から解放する。

 「まっ、何も今すぐ答えを出す必要はない。卒業まで未だ三年間ある。この三年間でお前はお前なりに決意できなら、それでいいさ」
 一夏に背を向けて、クリスは淡々と述べる。
 「しかし、世界は決して優しさだけでやっていけるほど甘くないってことくらい、覚えておけ」

 「……分かったよ」
 それが一夏が今、出来る精一杯の答えだった。
 
 その時、部屋のドアを叩く音がまだ響いた。
 「開いてるよ、どうぞ」
 クリスが返事した後ドアが開いて、ジャジ姿の千冬が入ってきた。
 「おいクリス、悪いが何か飲み物を……って、一夏が居たのか」

 「先生……生徒をたかるのも程ほどにしてくださいよ」
 文句を言いつつも、クリスは冷蔵庫からドリンクを取り出して、千冬に渡す。
 「悪いな。ちょっとビールを切らしてて」
 誤魔化すように笑って、千冬はドリンクを喉に流し込む。

 何気ない遣り取りだが、それを見た一夏は驚いて口を開く。今の姉は教師ではなく、普段家にいる時の表情をみせている。何時の間にクリスとそんなに親密になったのか、かなり意外だった。

 「男の子二人で何をしている?」
 クリスと一夏の顔を交互して見て、千冬は尋ねた。

 「実は一夏が一夫多妻制の国ってどこなのかって聞いてきたから、ネットで調べてました」
 「そんなこと一言も言ってねぇ!! 」

 「そうか。しかし今一夏の国籍はちょっと微妙なことになってるから、自由にできないかもしれんぞ」
 事実である。最近の国際IS委員会はずっと一夏の国籍問題で揉めている。

 「つっこむ所そこ? そこだけ? 千冬姉の意見は?!」

 「ドリンクはサンキューな。私は部屋に戻るから、お前達も早く休めよ?」
 「わかってますよ。織斑先生」
 簡単に注意した後、千冬はクリスの部屋から出て行った。そして部屋の中は再び男二人だけに戻った途端、
 「……何が疲れた。俺も帰るよ」
 「おっ、じゃな」
 疲れた顔して、一夏も部屋から出て行った。

 「さて、と」
 一夏を見送った後再びノートパソコンを開くと、クリスは新着メールの受信を確認した。
 「……ヴィレッタ姉さん?」
 クリックして操作画面を開いて、そこに書かれているメールの差出人の名前を見ると、眠気が一気に飛んだクリスは椅子に腰を下ろして、メールの正文に目を通す。

 「新しい念動力者を確保したから、R-1と一緒にIS学園に転入させる、か。イングラム社長、また強引な手を使っただろう……」
 苦笑いして、クリスはマウスのホイールを転がす。
 「まあ、うちの傘下企業の推薦枠を使えば簡単だけど……って、こいつかよ!!」
 メールの最後に添付されているプロフィール写真を見て、クリスは素頓狂な声を上げる。

 そこに映っているのは、日本に来てから知り合った少年の顔だった。