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IS  バニシングトルーパー 017-018

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stage-18 二人の転入生



「ねぇ、例の噂、聞いた?」
 「えっ? なになに」
 「今度の学年別トーナメントで優勝すれば、織斑君と付き合う権利が手に入るだって」
 「えぇぇ!? 本当?」
 朝の教室で、女子たちがひそひそと変な噂話をし始めた。

 学年別個人トーナメント。それはIS学園の上半学期行われる行事の一つ。文字通り学年別で行う個人IS対戦。一週間をかけて、生徒は全員強制参加する。1年は先天的才能評価を目的とし、2年は成長能力評価、そして3年は実戦能力を評価する。3年の場合、IS関連企業からのスカウトや各国の重鎮などが顔を出す大掛かりなものになる。

 「おはよう。何の話をしているんだ?」
 噂の張本人である一夏が教室に入ってきて、女子生徒達に挨拶した。しかしどうやら噂話は女子たちの間だけの話みたいで、女子たちは一夏に簡単に挨拶を返した後、さっさと解散した。

 「よっ、お二人今日は早いな」
 解散した女子たちに不審と思いつつ、一夏は教室の後ろの自席にいるクリスと、その側に立っているセシリアに声をかけた。

 クリスはなにやら大量のプリントを読んでいて、セシリアはただ静かに彼の横顔を見つめていた。

 「あら、織斑君。御機嫌よう」
 「一夏か。おはよう」
 一夏に話しかけられ、クリスは視線を上げて挨拶を返す。

 「何を読んでるんだ?」
 「うちの新製品のマニュアルだよ」
 捲ったページを戻して、クリスは最初の一ページを一夏に見せる。
 昨夜のメールに付添されていた、R-1と呼ばれる新型ISの取扱いマニュアルだった。ヴィレッタのメールによれば、新型の操縦者は初心者なので、教育はクリスに任せるとのこと。

 「へえ~大変だね。じゃ、この新型の操縦はお前がやるの?」
 「いや、俺じゃない。最近スカウトした新人だ。俺たちと同年代で、恐らく今日か明日にでもこの学園に来るのだろう」
 「そうか。大変そうだけど、何か俺にできることがあったら言ってくれ」
 「有難うな。ところでここ数日、隆聖から連絡を受けたことあるか?」
 「隆聖?うん……ないな。あいつがどうかしたの?」
 「……直に分かるよ」
 クリスの曖昧な態度に、一夏は頭にクエスチョンマークを浮かびつつ自分の席に戻った。

 「ショートホームルームの時間だ、さっさと席につけ!」
 ハイヒールの足音が響いた後、一年一組の担任先生織斑千冬と副担任の山田真耶が教室に現れた。
 空気が一変して、生徒達は静かで速やかに着席する。さすがにこのクラスに千冬の指示を従わない生徒は存在したい。

 「では、山田先生」
 「はい」
 生徒達が着席し終わったのを見届けた後、千冬は教室の隅の椅子に座り、真耶は教壇に上がる。いつもならここは真耶が本日の連絡事項を伝える所だが、どうやら今日はちょっと様子が違う。

 「今日は皆さんに嬉しいお知らせです」
 「……」
 真耶のいつもと違う一言で、生徒達の目は好奇心に満ちてきた。だが副担任のこれからの台詞を既に予測てきたクリスは、動じることなくR-1のマニュアルを読み続ける。

 「今日このクラスには新しい転入生が来ました。入ってきてください」

 予想通りだ。次に来るのはあの能天気少年の自己紹介、女子の歓声と一夏の間抜け面、そして千冬の火力鎮圧だろうと、クリスは予想した。
 しかし、現実の展開は彼の予想を裏切った。

 「はい」
 教室の引き戸が引かれた音と同時に、声がクリスの耳に入ってきた。それは予想したあの暑苦しいまであと一歩の陽気な声と違って、とても柔らかい声だった。
 まるで女子の声みたいだった。

 「……あれ?」
 顔を上げて視線を教壇の上に向けると、そこに立っているのは予想中のその少年ではなく、まったくの別人だった。

 後ろに束ねているさらさらな金髪に、優しげな瞳。中性的な顔立ちをしていて、体のラインも細いが、その身に纏っているのは紛れも無くIS学園男子制服。
 つまり、この転入生は男である。
 ここまでは予想通り。しかし顔は写真と違う。つまり――

 「隆聖! いくら男の娘が流行っているからって、発想が安直すぎるぞ!」
 まさか数日前まで男前の顔していた友人がいきなり可愛い女の子みたいになってるとはサプライズ過ぎる。驚きを抑えきれずにクリスは席から立ち上がって転入生に向かって叫ぶ。

 「えぇ~!!!」
 クリスの唐突な行動でクラスメイト達の視線が彼に集まり、教壇に立っている転入生もびっくりしたように一歩後ろずさった、

 「勝手に席から立つな! この馬鹿者!」
 「くはっ!」
 いつの間にかクリスの後ろに立った千冬は、勝手な行動をした生徒に裁きを下した。出席薄の直撃を食らったクリスは、頭を抱えて席で身悶える。

 「転入生、自己紹介を始めろ」
 「はっ、はい」
 頭を抱えてるクリスを戸惑った目で見ながら、転入生はクラスメイト達に向き合って自己紹介を始める。

 「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、宜しくお願いします」
 「お、男……だよね?」
 「はい、此処には僕と同じ境遇の人がいると聞いて、本国から転入を……」

 人違いだった。一文字も合ってない。そもそも気品の差が大きすぎる。だが、今の自己紹介でクリスが別の気になる点を発見した。
 (デュノア……?)

 しかし、それを口にする前に、クラスの女子たちが大声で騒ぎ始めた。
 「きゃっ! 三人目の男の子だ!」
 「しかもクリス君と織斑君と違って、今回は守ってあげたくなる系!」
 「一組に入れてよかった!!」
 クリスの奇行でリアクションがすっかり遅くなってしまったが、女子達は大喜びしていた。

 確かに、シャルルと名乗ったこの転入生は男のクリスから見ても可愛い。丁寧な物腰と気さくな雰囲気で、人の保護欲を刺激する。今の一組では、真面目系の一夏は訓練一筋の上に箒と鈴の存在でアタックし辛いし、クールに見えて実は気さくでややS気のあるクリスはあまり本気で相手をしてくれない。ここでいきなり新しい男キャラの投入は、女子達にとって朗報以外の何物でもない。

 「皆さん静かに! 静かにしてください!」
 「騒ぐな! 静かにしろ貴様ら!」
 騒ぎを静めようとする真耶の努力よりも鬼軍曹、戻い担任先生の一喝の方が効果抜群だった。

 「織斑先生、一つ質問していいですか」
 教室が静かになった後、クリスは手を上げて発言許可を求める。
 「……言ってみろ」
 「転入生は一人だけですか?」
 「……このクラスでは一人だけだ」
 「このクラス?」
 千冬の言い方に、クリスは含みを感じた。

 「今日は二組にも転入生一人が来ている」
 「日本人ですよね?」
 「……ああ」
 クリスの質問に答えた千冬の顔は、やや微妙な表情をしていた。どうやらあの能天気と面識があったらしい。

 (そっちに行ったか……じゃ今頃鈴がびっくりしているのだろうな)
 そんなことを考えつつ、クリスは自分の席に着いた。

 「とにかく、同じフランスから来たもの同士、デュノアの面倒はクレマンが見ろ」
 「分かりました」