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IS  バニシングトルーパー 017-018

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 会話に入れないシャルルだけが、困ったような顔で乾笑するしかなかった。

 「さっさと黙らんか問題児ども!!」
 パっ! パッ! パッ! パッ! パッ!
 綺麗な五連コンボで、クリス、一夏、鈴、隆聖そしてセシリアが一斉に頭を抱えた。処刑人は勿論、鬼軍曹ごと織斑千冬である。
 「何で私まで……」
 巻添えを食らったセシリアが、目尻に涙を溜めながら不満そうに呟く。

 「ほう~口答えするか、オルコット。丁度いい。オルコットと凰、前に出ろ!」
 「「えぇ~!」」
 「早くしろ。別にお前らをどうこうする気はない、戦闘の実演をしてもらうだけだ」
 公開処刑じゃないのが分かって、女子ふたりは胸を撫で下ろしながら行列の前に出て、千冬の後ろに立った。

 「知っての通り、学年別トーナメントは近い。なので今日からは射撃と格闘の実戦訓練を始める。しかし訓練の前に、まずはここに居る代表候補生の二人に実演してもらう」
 「何であたしが……」
 「……私も、何が見世物みたいで、気が進みませんわね」
 千冬が二人を選んだ理由を聞くと、二人は文句をぶつぶつと呟き始めた。しかし千冬にとっては予想内のことみたいで、口元を吊り上げて二人の近くまで歩いて彼女たちしか聞こえないような小声で呟いた。
 「少しやる気を出せ。あいつらにいい所を見せられるチャンスだぞ」
 「「……っ!」」 
 千冬の言葉を聴いた二人の目の色が一瞬に変わった。
 「ここはやはりイギリス代表候補生であるこの私、セシリア・オルコットの出番ですわね」
 「ふん、実力の差を見せてあげるわよ! 専用機持ちの!」
 二人揃っていきなり気力150状態になった。

 「ねぇ、今織斑先生はあの二人に何を言ったのかな」
 「さぁ……ちゃんとやらないとぶち殺すとかそういうのじゃないか?」
 「否定できないな」
 「一夏の姉貴って、やっぱ学校でもずっとそういう感じなのか?」
 シャルルの疑問に対するクリスの返事に一夏は頷き、隆聖は微妙に顔を引き攣っていた。

 「それで、相手はどなた? わたくしは別に鈴さんでも構いませんが」
 「ふふん。こっちのセリフ。返り討ちよ」
 「慌てるな馬鹿ども。対戦相手は――――」

 キィィィン・・・・
 千冬の言葉が終わる前に、グラウンドの上空から空気が引き裂かれる音と共に、聴き慣れた女性の声がが生徒全員の耳に伝わってきた。
 「わぁぁぁ~!!ど、どいて下さい!」

 「「「ぎゃぁぁ!!」」」
 何があったのかは分からんが、何かが落ちてきたのは確実だ。それを理解した女子達は列から離れて四方へ逃げ出す。

 「隆聖、シャルル、こっち来い」
 早くにも事態を理解したクリスは、転入生二人の手を引いて安全地域に退避させる。そして残ったのは、間抜け面して空を見上げている一夏だけだった。

 「うっ、うわぁぁぁ!!」
 ドカーンッ!!
 上空からの不明墜落物は逃げ損ねた一夏と衝突して、グラウンドの地面に塵煙をあげた。

 「「一夏……!!」」
 青ざめた顔で、クリスと隆聖が友人の名前を絶叫する。さっき見捨てたくせに、などと言うシャルルの呟きをスルーの方向へ。

 しかし煙が晴れた時周囲の目に晒したのは、世間で一般的にラッキースゲベと呼ばれる光景だった。
 教員用の緑色ラファール・リヴァイヴを纏った副担任山田真耶先生に、一夏は下に押し倒されていた。さっきはISの制御を失敗した真耶が空から落ちてきたのだろう。
 しかし今重要なのは、一夏の両手が真耶の胸を鷲掴みしていることだ。普段の真耶はサイズの合わないスーツのお陰で分かりつらいが、体のラインがはっきり分かるISスーツを着ている今では、その過剰なまでに発育した乳房の大きさがより引立たされる。

 「あっ、なるほど、山田先生の胸をクッション代わりにしたか。一夏やるな」
 「いやいや何変な感想述べてんだ、絶対違うと思う」

 「一夏! 何破廉恥のことをやっている!!」
 クリスと隆聖が話している間、ファースト幼馴染の嫉妬が爆発し、さらにセカンド幼馴染は実行に移した。
 「い~ち~か!」
 二振りの青龍刀を連結して、一夏に向けて投げた。
 「うわあぁぁ!!」

 「やれやれ」
 ヤキモチしている女の子は可愛いって言うが、さすがにIS未展開状態であれを喰らったらただじゃすまない。エクスバインの右腕だけとライフルを展開して、クリスは青龍刀を打ち落とそうとするが、その前に行動した人間が居た。

 パンッ! パンッ!
 狙撃ライフルの二連射で、青龍刀は軌道が変えられて、地面に落ちた。銃撃したのは真剣な表情でスコープを覗き込みながら、相変わらず一夏の上に覆っている真耶だった。

 「へえ~」
 いままでただのマスコットキャラだと思っていた副担任の実力を垣間見えて、驚いたクリスは小声で驚嘆した。姿勢も整えてない状態で行った精密射撃を見る限り、少なくとも射撃の腕は中々の物だ。

 「山田先生はああ見えても元代表候補生だ、これくらいの射撃なら造作もない」
 「む、昔の話ですよ。それに代表候補生止まりでしたし・・・・」
 憧れの千冬に褒められて、真耶は照れくさそうに頬を赤く染めて立ち上がって、メガネをかけ直す。
しかし山田先生よ、ああ見えてって言われてるぞ。それでいいのか?

 「小娘ども、何時まで呆けてないで、さっさと始めるぞ」
 呆然としているセシリアと鈴に向けて、千冬はそう言った。
 「えっ、二対一……ですか?」
 「いや、さすがにこれは」
 「心配するな。今のお前らなら、直ぐに負ける」

 自分を甘く見ているような千冬の言葉が気に障ったか、二人は一斉にむっと不快な顔になって、各自の武器を構えた。

 「では、始め!」
 千冬の号令で、セシリア、鈴そして真耶は空へ飛び上がり、高機動射撃戦を始めた。

 「さて、今の間に・・・丁度いい。デュノア、山田先生が使ってるISを解説して見ろ」
 「あっ、はい」
 空中での戦闘を見上げながら、シャルルは解説を始めた。
 「山田先生が使っているISは、デュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代最後期の機体ですが、そのスペックは初期第三世代型にも劣らないもの。安定した性能と高い汎用性、豊富な後付け武装が特徴の機体です。装備によって格闘・射撃・防御といった全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティーが多い事でも知られています」
 さすがに父の会社の製品情報だけあって、すらすらと流れるようにシャルルは機体を完璧に説明する。

 シャルルが解説している間、隆聖はずっとキラキラした目で空で撃ち合っている三人を見上げていた。IS戦闘をはじめて間近でみる隆聖にとって、新鮮に感じるのも当然の事。
 「なっ、クリス」
 「うん?」
 「あの先生、一対二だけど大丈夫か? あの金髪の方は知らないけど、鈴は結構強いって話だろう?」
 「大丈夫だよ。あの二人は連携とか全然ダメだから、互いにとっては邪魔なだけ。むしろ一対一の方が勝ち目があるかもな」
 「にしても、ISってやっぱすげぇな。俺もあんな事をできるようになれるか?」