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IS  バニシングトルーパー 017-018

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 「努力次第だな。R-1のポテンシャルは途轍もなく高い、操縦者の技量によってはあの三機をまとめて相手できるほどの力を発揮する」
 「そう、なのか」
 クリスの返事を聞いた隆聖は、顔が興奮の色に満ちて手も震えてきた。

 「そんなに凄いの? そのR-1って機体」
 上空の戦闘を見上げながら、一夏も二人の会話に割り込んできた。
 「操縦者の技量次第って言っただろう? 例えば今山田先生が使っている機体も第二世代の量産型だが、それでも鈴とセシリアは完全に抑えられているだろう? 要はどんな機体でも使い手の腕がものを言う。それはお前の白式も同じだ……そろそろ終わりだな」

 男子三人の会話がひと段落ついた頃、真耶のグレネードの直撃を食らったセシリアと鈴が空から落ちてきた。その後、勝者の真耶もゆっくりと着陸した。

 「これで教職員の実力が分かったのだろう。以後は敬意を持って接するように」
 千冬の言葉に、真耶が再び照れくさそうに髪を掻きながら笑う。さっきの戦闘で生徒達は彼女の実力を思い知らされたが、やはりそういう可愛らしい仕草が彼女のイメージに合うな、と生徒全員が思った。

 「さて、次はグループに分けて練習機を使って実習を行う。専用機持ち達はリーダーになって監督するようにな。それと、伊達とクレマンはこっち来い」
 千冬が指示を飛ばした後、女子生徒達は専用機持ちの元に集まって、訓練用の打鉄とラファール・リヴァイヴを使って練習を始めた。しかし女子生徒達は一夏とシャルルの元に集まりすぎたので、千冬の命令で出席番号でグループを編成することになった。

 「何ですか? 織斑先生」
 「俺、早く実機乗ってみたいんですけど」
 指名されて千冬の所に来た男子二人は、その理由を尋ねた。

 「慌てるな、伊達。ハースタル機関から用意されたお前の専用機が届いてる。今から装着作業を済ませて、簡単な初歩操作を覚えろ。クレマンは伊達の面倒を見てやれ」
 そう言いながら、千冬は顎でグランドの隅の方に置いてあるコンテナを指す。いつの間に運び込まれたそのIS一機分大きさのコンテナの外壁にはハースタル機関のロゴと「Real personal trooper type-1」の文字がプリントされていた。

 「おおおお! あれに入ってるのが俺のR-1か! うひょぉぉ!」
 まるで子供が新しいおもちゃを発見したように、隆聖は興奮な声を上げて、他の生徒達の好奇な目線を気にすることなくコンテナに向かって全力で走り出した。

 「やれやれ、子供かあいつは。クレマン、伊達は任せたぞ」
 苦笑して頭を横に振りながら、千冬はクリスに子守を命じた。
 「分かってますよ。元々そのつもりです」
 「……なっ、クリス。なぜ伊達なんだ? お前の所の社長さんが偶然に発見したって話だが」
 「さあ……社長が偶然って言ったら、偶然じゃないかな」
 「能天気に見えても、伊達は伊達なりに大変だ。私はイングラム社長という人物はよく知らんが、お前を信じて、伊達のことを頼んだぞ」
 「はいはい、分かってますよ。貸し一つということで、そのうち飯でも奢ってください」
 「無茶いうな、教師の給料は安いぞ」
 「なら、うちで就職します? 先生ならいい条件出せますよ?」
 「……遠慮しておくよ」
 「それは残念ね。では」
 千冬からコンテナのカードキーを受け取って、クリスはコンテナの外壁に顔を擦っている隆盛の方に向かった。

 「やれやれ、生意気なやつめ」
 離れていく銀髪少年の後ろ姿を見て、千冬は口元を吊り上げて、安心したように笑った。

 「はいはい、ご開帳だ、退け!」
 外壁に張り付いている隆聖をコンテナから蹴り落として、カードキーでコンテナのロックを解除すると、鈍い音を立ててコンテナがゆっくりと開いていく。やがてトリコロールカラーに塗装されているIS一機が、二人の視界に入った。
 各細部の形はエクスバインに似ているが、トリコロールカラーのせいか、全体的な印象はまったく違う。肩装甲の後側に反重力翼と推進ユニットが取り付けられ、サイドスカートアーマーには実弾拳銃「G・リボルバー」がマウントされ、そして両腕アーマーには念動力発生装置が実装されている。塗装はエクスバインより鮮やかに見えるが、形状はよりシンプルになっている。
 この念動力者専用IS「R-1」は、ヒュッケバインシリーズのような重力制御能力はないが、代わりに操縦者の念動力を最大限に引き出して戦えるように設計されている。こういう風にすることによって、まだ素人の隆聖でも無意識に念動力を頼って操縦技術の低さをある程度カバーできる。

 「おおおおお! こ、こいつが俺のR-1か! って、なんかスーパー系っぽくないな」
 R-1が視界に入った時、隆盛の反応は微妙だった。しかし彼の反応を既に予測できたクリスは、このロボマニアの扱い方を心得ていた。
 「まっ、今の所はな。だがR-1はSRX計画の第一歩だ、機体とお前の成長によってSRXが完成したら、最終的にスーパー系感じな機体になるさ」
 「おっ、そうか。何だがよくわかねぇけど、よろしく頼むぜ! R-1!」
 R-1の外部装甲を指で叩いて、隆聖は自分の愛機となる機体に挨拶を交わす。なんだかんだで、結局は気に入ったようだ。

 「遊んでないでさっさと装着位置に座れ」
 「おっ、了解!」
 「お前が基本を覚えるまで武装にロックをかけておくから、銃とか出しても撃てないぞ」
 「えぇ~まっ、危険だもんな。分かったよ」
 クリスは隆聖に適切な指示を与え、それを素直に従う隆聖は順調にR-1を起動していく。やがて起動し終えた後、クリスは一夏に教える時のように、隆盛に飛行やハイパーセンサーの使い方、武器の切り替えなどの基本を教える。

 しかし夢中になっている二人は気付いていないが、グラウンドに居る女子生徒の一部の視線は彼らに釘付けだった。
 「羨ましい……私もクリス君に手取り足取りに教えて欲しいな~」
 「伊達君もいきなり専用機か……いいな~」

 そして、極一部な女子の間では不穏な会話をしていた。
 「クリス君×織斑君は鉄板だと思ってましたが、どうやら私の勘違いだったわね」
 「でも、伊達君は織斑君の中学クラスメイトだったらしいよ?」
 「じゃ、三角関係?」
 「でもでも、クリス君×デュノア君も捨て難いし」
 「「「「……どうしよう」」」」

 「今日はここまででいいだろう、授業時間もそろそろだし。帰ったら関連教科書を読んでおけ、分からない所があったら遠慮なく俺に聞け」
 隆聖が二組なら、鈴に聞いた方が早いかもしれん。隆盛と鈴はよく口喧嘩しているが、真面目の勉強問題なら、鈴もちゃんと教えてくれるだろう。
 「おっ、悪いな、何から何まで」
 そろそろ午前の授業時間が終わりそうなので、クリスと隆聖も練習を一段落つくことにした。

 「気にするな、友達だしな。それにこの機体はうちの会社にとって重要な意味を持つ。使いこなして貰わないと困る」
 「そうかい? まっ、このR-1は必ず俺がものにしてみせるぜ」
 「そうしてくれ。それと隆聖、学園の訓練機はなるべく乗るな」
 「えっ、なんで?」