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IS  バニシングトルーパー 022-023

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 「クリスは大根役者だな。あんなあからさまに動揺したから、一夏でも気付いたよ」
 「……馬鹿な」
 女の気持ち一つ気付かない唐変木に見抜かれるなんて、少しショック。

 「でも、クリスから話してくれて、嬉しいよ」
 そう言いながら、シャルロットはクリスの背中に回した腕に力を篭める。
 「……だから、甘えてもいいよ」

 「いや、同年代の女の子に甘えるのは主義じゃないから遠慮しておくよ」
 「私に抱きついてきてるくせに、何を言っているのかな?」
 「うぐっ」
 言い返せない。でもまだ離れたくない。

 「抱きつきたいなら別に構わないけど、私の気持ちを忘れないでね」
 「分かってるって。ちゃんと返事するから」
 「いつ?」
 「うん……シャルロットが俺の出した条件を果たした時?」
 友人だと思っている範囲内の人に、自分の正体を話す。シャルロットを助ける時彼女に出した条件だ。

 「本当?」
 「ああ、本当さ」
 「じゃ、学年別トーナメントが終わったら皆に言うから、覚悟してね」
 「わかったよ。でももしその前にお前の気持ちが変わったら、遠慮なく言ってくれ」
 「ふんっ!」
 「くうっ!」
 クリスの腕の中で、シャルは彼の腹部にボディブローを放った。まったく手加減してなかったパンチで肺の空気が一気に体内から逃げ出す。

 「……馬鹿なこと言わないで」
 「はい……」
 黙って、シャルロットの抱き心地を堪能することにした。

 ♪――
 しかしまるで二人の時間を邪魔するように、ノートPCからメールの着信音が響いた。
 「誰だよまったく……」
 シャルロットから少し離れて、クリスは片手でキーボードを操作してメールを開く。
 「……げっ」
 メールの内容を読み終わった後のクリスの顔は、まるで猫に追い詰められたネズミのように絶望に満ちていた。


 更衣室に入って、隆盛は自分の制服を脱いで、用意して貰った白地に青いラインを入れた専用ISスーツに着替える。
 最初は着替えるだけで一苦労だが、最近じゃすっかり慣れてしまった。
 着心地も悪くないし、女子達は半分くらいISスーツ着たままで生活してるって話だから、そのうち着たまま授業を受けてみてもいいかもしれんと思った。

 今は金曜の午後。放課後のこの時間は自主練習だと相場が決まっている。昨日はアメリカの新型ISの適格者選抜で第四アリーナが立ち入り禁止になったせいで、他のアリーナがいつもより混んでたが、今日は大丈夫だろう。
 本当は新型ISも見てみたかったが、一年生はダメだと言われた。相当ピーキーなISだったのだろう。
まぁいい。今はR-1の全性能を引き出すことに専念しよう。

 この学園に転入してきて早くも一週間が過ぎた。最初は女だらけの学園で基礎もないまま転入して大丈夫だろうかと不安だったが、知り合いが居るし、何よりクラスの皆もいい人ばっかり。はっきり言って、この学園は好きだ。
 何より、ISを操縦できるのが楽しい。

 「やべぇ、先生の話が長いから遅くなっちまったぜ。一夏達はもう練習してるんだろうな……」
 ロッカーのドアを閉めて、隆聖は慌ててグラウンドへ向かう。そこに行けば、いつものメンバー達が練習しているはずだ。他のやつはともかく、一夏は三月の時まで素人だったって話だから、あいつにだけでも負けないようにしないとな。
 グラウンドに出て、一目で友人達を発見した。一夏、シャルル、セシリアそして篠ノ之。鈴はまだ更衣室だろう。
 しかしクリスの姿が見かけない。まっ、トイレか何かだろう。

 「今日もよろしく頼むぜ、R-1!」
 胸元のドッグタグを握って、相棒の名を呼んで展開を始める。トリコロールカラーの装甲が完全形成された後、手を振って友人達へ近づく。

 「悪い、遅くなっちまった」
 「ああ、隆聖」
 オレンジ色のIS「ラファール・リヴァイヴ・カスタムII」を纏っているシャルロットが、手を軽く振って隆盛を迎えた。近くにいる一夏達も一旦手を止めて、隆聖と軽く会釈する。

 「クリスはどうしたんだ? トイレか?」
 「クリスさんなら、保健室へ行きましたわ」
 隆聖の疑問に返事したのは、ライフルを握っているセシリアだった。

 「保健室? 体調でも悪いのか?」
 「いいえ、目薬を切らしましたから、貰いに行くと言っていましたわ」
 「そうか。じゃあとりあえず練習を始めようか」
 コールドメタルナイフを呼び出して、隆聖は一夏に声をかける。

 「一丁模擬戦ってのがどうだ? 一夏。負けたままじゃ気がすまねぇんだよ俺は」
 「いいぜ。今度もハンデつけようか?」
 「言ってろ。吠え面かかせてやる」
 「するかバカ」
 二人の会話を聞いたシャルロット達が自主的に空けたスペースで、二人が対峙する。
 
 しかしこの時、周囲の生徒達が別のものに注意を惹かれて、騒ぎ立て始めた。

 「ねぇ、あれってドイツの第三世代?」
 「うそっ! まだ本国でトライアル中って聞いたのに!」
 グラウンドで騒いでいる生徒達は皆、発進口の方に見上げている。

 「何だ?」
 「何を騒いでるんだ?」
 対峙中の二人も武器を下ろして、周囲の視線に辿って発進口を見上げる。すると二人の目に入ってきたのは、一機の黒いISだった。

 特徴的の大型レールカノン、そして物言わぬ真っ黒な装甲から発している冷酷な雰囲気は、人に「鉄血」という単語を連想させる。そしてそのISの中心部分に居るのは、一組の転入生ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
 体が小柄のせいか、それともそのISが発している威圧感のせいか、彼女が纏っている黒いISはとても大きく見える。
 ラウラの視線は今、真っ直ぐに一夏を捉えている。その目の中には、怒りが滾っているように見えた。

 (あの目は……!)
 彼女の目から滲み出ている感情に、隆聖は見覚えがあった。
 子供の頃、警察官だった父親が他人の子供を銃弾から庇って死んだのを知って、その庇われた子供を見る時の、自分の目だ。
 向ける対象が間違っていると分かっていながらも、行く場のない怒りと悲しみに理性を失いかけた目だ。

 「織斑一夏、今すぐ私と戦え!」
 先端が尖っている装甲に覆われた指で、ラウラは一夏を指差して戦いを要求した。
 「断るよ。アンタと戦う気はないし、戦う理由もない」
 一夏からして見れば、わけも分からずに吹っかけられてきた喧嘩だ。応じるわけがない。
 「貴様がなくても、私には理由がある」
 「知るか。とにかく戦う気ないから、帰ってくれ」
 一夏は背を向けて、交戦意志のない態度を示す。

 「あくまで拒否するのならば……」
 一夏に戦いを断られたラウラは、レールカノンの砲身角度を移動して、一夏に照準を合わせた。
 どうやら、一方的に攻撃を仕掛ける気だ。
 (ヤバイ……!)
 唸り始めたレールカノンの銃口を見た隆聖は、スラスターを噴かして二人の中に割り込む。

 「その気にさせるまでだ!」
 トォォン!!!
 まったく躊躇のない一撃だった。低い砲撃音と共に、レールカノンから砲弾が撃ちだされた。一夏は慌てて振り返るが、もう間に合わない。