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IS  バニシングトルーパー 024

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 今ならお茶の味は分かるが、あの頃は苦い苦いと言って、茶菓子ばっかり食べてた。だがそれでもカトライアは怒ることなく、ただ頬張っている二人を見て微笑んでいた。
 カトライアはとても優しい人だった。レオナだけでなく、ブランシュタイン家やガーシュタイン家の皆から尊敬されていた。レオナの伯父、あの他人に厳しいことで有名なのマイヤー総司令もたまにだが、カトライアの和室に来て正座している時だけが、穏やかな表情をしていた。 
 だから、テロ事件で命を落としたカトライアの葬式でレオナは誓った。二度とこんな悲劇を起こさせないように、エルザム様のような優秀な軍人になることを。
 それなのに、訓練学校で変な奴と出会った。毎回毎回負けてるくせに、大人しく二位に甘んじてくれない。浮いている自分に構ってくるなと言ってるのに、毎日話しかけてくる。あまりのしつこさに負けて一緒にオペラを見に行った時、あいつは途中で寝てしまった。まったく女性のエスコートを何だと思っている。
 確かにあいつのお陰で、もう一度自分が笑えるようになった。でも、それでも勝手で節操のないやつであることに変わりがない。知り合った時も、投げ飛ばした時も、そして再会した今も。
 転入してからもう五日、なのに話もかけて来ないとは何事だ。他人にでも装うつもりか、それとも女から話かけるのを待っているのか、女性への配慮はないのか。
 というか、いつも隣に女が立っているってどういうことだ。
 学年別トーナメントで会ったら絶対泣くまで殴るのをやめない。
 そこまで思うと、何だかムカついて来たレオナはお茶を一気に飲み干した。
 (……少し外で風に当ててこよう)
 湯のみを机に置いて、レオナは部屋から出た。
 

 同時刻、第二アリーナの発進口に、小柄の人影が一つ立っていた。
 軍服風に改造したIS学園制服を身に纏い、銀色の長い髪を夜風になびかせながらグラウンドを見下ろしているその人物はドイツからの転入生、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
 今は夜だから、当然グラウンドの中にはだれも居ない。静かなグラウンドを見下ろしているラウラの頭の中では、午後のことを思い返していた。

 織斑一夏、思ったとおりの甘い奴だった。敵を前にして背を向けるなんて。あんな甘ったれのために織斑教官の履歴に汚点が付くのは我慢ならん。一刻も早く彼を倒し、教官を部隊へ連れ戻さねば。
 そしてもう一人、調べてみたら名前は伊達隆聖と言うらしい。高初速のレールカノン砲弾を叩き落す動態視力と反応速度は中々だが、拳でやるところを見ると頭が悪そうだ。しかし、あのISには少々気になる。 
 どの道、邪魔する奴は片っ端から排除するだけだ。例え、あのガーシュタイン家出身の少尉でもだ。どうせ彼女の転入も、ブランシュタイン家の差し金だろう。
 
 突如、ラウラの携帯から電話の着信音が響いた。通信ボタンを押して、ラウラは携帯を耳に当てる。
 「私だ」
 『クラリッサです。ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長』
 携帯の向こうから聞こえたのは、ラウラが率いるIS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」の副隊長である、クラリッサ・ハルフォーフ大尉の声だった。
 
 『例の件の調査結果が出ました』
 「そうか。それで?」
 『傘下企業の名義を使ってますが、あの機体を開発したのはハースタル機関で間違いありません。開示した機体スペックでは、レールカノンがまったく 効かないほどの強度を持ってないはずです。さらに言うと、あの伊達隆聖という少年の母親の履歴には、それらしい痕跡が見られました』
 「なら答えはほぼ決まりだな」
 『はい。伊達隆聖は……念動力者である可能性が非常に高いと思われます』
 「……そうか。ご苦労だったな」
 『いいえ。では私はこれで失礼します』
 「ああ」
 電話を切った後、ラウラはゆっくりと自分の眼帯を外して、空に光っている月を見上げた。
 拳を握り締めた彼女の表情は、とても険しくて、辛そうだった。

 「私は……私達は……あんな奴のなり損ないだというのか?」
 その眼帯によって隠されていた彼女の左目は、金色に光っていた。
 

 
 淡い月の下、学生寮から少し離れた所の空地で、一人の少女が竹刀で素振りをしていた。
 長い黒髪のポニーテールを揺らしながら、一心不乱に竹刀を振り下ろすその道場着姿少女の名は、篠ノ之箒。
 今この場で、夜風に吹かれた樹の葉が揺れる音と、彼女の素振りの音以外、何も聞こえない。

 一夏に「優勝したら即交際!」と宣言したものの、専用機持ちだらけの一年で優勝なんて決して簡単なことじゃない。
 専用機をもってない自分では、こうしてせめての努力を尽くすしかないだろう。
 「九百九十九! 千! ふう……」
 素振りがひと段落ついて、彼女はタオルで顔の汗を拭く。帰ったらシャワーを浴び直さないと。

 「よっ、お疲れさん」
 「うわっ!」
 突如に話しかけられて、びっくりして跳び上がりそうになった。慌てて竹刀を構えて確認すると、目の前に立っているのは、自分へドリンクを差し出しているクラスメイト、クリスだった。

 「こんな時間まで練習か。頑張り屋さんだな、篠ノ之は」
 近くのペンチに腰をかけて、クリスはドリンクを喉へ流し込んでる箒に話しかけた。
 「いつものことだ。クレマンこそ珍しいな、ここに来るなんて」
 口元をタオルで拭いて、箒はドリンクを地面に置いて再び素振りを再開した。

 「まぁ……ちょっとシャルルに締め出されて、それで散歩のつもりで」
 「喧嘩したのか?」
 「いや、喧嘩はしてないよ。ただの誤解だから。今は少し冷静になる時間を作っただけさ」
 「そうか」
 「それより篠ノ之の調子はどうだ? 優勝目指してるだろう?」
 「うむ……正直に言って、難しいな。基礎身体能力をいくら鍛えても、量産型のISでお前達専用機持ちを勝つにはやはり簡単ではないだろう」
 「確かにそうかもな。俺個人としてもお前の機体を何とかしたいけど、さすがに難しいな」
 「有難うな。でも別にそこまでしてくれなくても……」
 「しかしお前も不器用だな……優勝したら交際だなんて。あの朴念仁は多分意味分かってないぞ」
 「うぐっ……」
 クリスにそう言われると、箒も本当にそんな気がして来た。あの鈍感な奴なら、買い物の付き合いとかだと思っていても不思議じゃない。

 「だからさ、別にそんなに気を負う必要はないと思うんだ。というか正面から大好きだと言えばいいじゃないか。それでもあいつが分からないならさっさと諦めた方がいいよ」
 「いいいい言える訳ないだろう!!」
 顔を真っ赤に染めて、やけくそ気味に叫びながら箒は素振りのテンポを上げる。
 
 「そうかな……まぁお前の自由だし、好きにすればいいさ。そう言えばこの間、あいつはお前の料理がうまいって褒めてたぞ」
 「それは本当か?!」
 「ああ。また食べてみたいってさ」
 「そうか……頑張った甲斐があったというものだな」
 「健気なだ、お前は。男のために頑張って手料理を作るなんて、ポイント高いぞ」
 「そ、そうか。ポイントが高いのか」