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IS  バニシングトルーパー 027

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 「悲しいけど、これが恋(せんそう)なのよね……あっ、しっぽ落ちた」
 三人のやり取りに聞き耳を立てながら、エクセレンはゲーム機の液晶ディスプレイに向かって小さな歓声を上げた。



 「やれやれ、結局今日も来てなかったな、あいつら」
 「本当、何やってんだろうな」
 鞄を脇に挟んで、アリーナから寮への道に沿ってゆっくり歩いている少年二人が疲れた顔で不満をぼやく。
 練習メニューを終え、寮の部屋へ帰る途中の隆聖と一夏だった。
 クリス、セシリアそしてシャルロット、今日もアリーナに来なかった。結局、男子二人は箒と鈴に練習を見てもらうことになった。
 「そう言えばさ、一夏の白式って学園側が用意したものだよね?」
 ふっと、隆聖は一夏に唐突な質問をした。

 「そうだけと……どうしたんだいきなり?」
 「いや、なんでお前の機体は日本製で、俺のはクリスの会社製なのかなって」
 「さぁ……結構大手みたいだけど、詳しいのは知らないな」
 「そうか。……ん?」

 話の途中、道の前方にある二つの人影が男子二人の視界に入った。
 片方はスーツを着た黒髪の長身女性、もう片方は銀色髪の小柄少女。

 「千冬姉と……」
 「ラウラ・ボーデヴィッヒ!?」
 前方に居るのは、一組担任である織斑千冬と最近の危険人物ラウラ・ボーデヴィッヒだった。ラウラは何かを力説しているようだが、千冬は無表情のまままったく反応しない。なにやらで揉めているように見える二人に、隆聖と一夏は足運びを速めた。

 「お願いです、教官! 私とドイツに帰りましょう! ここはあなたが居るべき場所ではありません!」
 いつもの冷たい声ではなく、ラウラのかなりに感情的な口調で訴えている。それに対して、千冬はただ黙って聞いているだけ。
 「……大体織斑一夏も含めて、この学園の生徒は教官が教えるに足る人間ではありません! 危機感がまったくなく、ISをファッションか何かと勘違いしている。そのような者達に、教官の時間が割かれるなど……!」
 「そこまでにしておけよ、小娘」
 延々と学園への不満を語るラウラの話を折ったのは、千冬のイラついた声だった。その口調に含まれている怒りのような感情を感じ取ったラウラは、口を篭る。

 「少し見ない間に、偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りか。恐れ入るな」
 「わ、私は!!」
 「寮に戻れ。私は忙しいんだ」
 千冬が言い放った拒絶な言葉に、胸に手を当てて弁解しようとラウラは何もいえなくなり、納得行かないって顔をして視線を地面に向けた。
 夕日のせいで地面で長く伸びている二つの影が、視界に入り込む。視線を向けると、数メートル離れているところに居る隆聖と一夏の存在に気付く。
 
 「やはり……本物の方が教え甲斐があるということですか?」
 このセリフを口にするラウラは、とても悔しそうな表情で隆聖の顔を睨み付けた。

 「……何?」
 ラウラの言葉に、千冬の眉は一瞬反応した。
 「そういうことでしょう? あいつが本物で、私はなり損ない!! だから教える価値もないということですか!!」
 「ちょっと待て。本物と言うのはまさか……」
 「恍けないでください! あいつが、伊達隆盛が本物の念動力者でISも動かせるから!教官がここに居ることに執着しているじゃないですか!!」
 まるで見捨てられた子供のような悲しい表情で、やや亢奮状態のラウラは僅かな泣き声まで交えている言葉を叫び出す。
 「……所詮私達は念動力者の模倣品(フェイク)でしかないから、教官は……」

 「それは違う。伊達が念動力者だなんて初耳だ。とにかくさっさと戻れ」
 一瞬の驚きの後、千冬はいつもの冷静を取り戻した。

 「……くっ!!」
 ここまで言ってもまったく譲歩しない。千冬の横を通って、ラウラはこの場から走り去ろうとするが、この前に隆聖は彼女を呼び止めた。
 「ちょっと待てよ! 何の話だよ本物とかフェイクだとか、説明くらいしろ!」

 隆聖の呼び声を聞いたラウラは一旦足を止めて、隆聖に向って嘲笑うように鼻を鳴らした。
 「……ふんっ、それも知らずにISに乗ったのか。所詮お前も利用されているだけの愚か者だ!」
 とだけ言い残して、逃げるようにこの場から去った。

 「千冬姉、今の話は……」
 「……一体何の話だ? 念動力者とか何とかって」
 段々と小さくなっていく彼女の背中を見て、隆聖は一夏と一緒に千冬の方に近寄った。

 「伊達……先生に向って敬語も使わんのか」
 「いや、いつもの癖でつい……ってそんなこと今はどうでもいいんだよ。説明してくれよ、念動力者って何? 俺と関係ある話だろう?」
 「……」
 質問してくる隆聖に、千冬をしばらく考え込んだ後口を開いた。
 「……今は忙しい。どうしても知りたいなら今夜私の部屋に来い、クレマンも連れてな」

 「クリスを?」
 「ああ。いいな?」
 「わかった」
 「敬語を使え!!」
 「いたっ!!」
 隆聖の頭に出席薄を炸裂させた後千冬も早足でこの場を後にし、残ったのは去っていく千冬の後姿を見送って、浮かない顔している男子二人だけだった。



 「あのな、セシリアを挑発するような言い方は止してくれよ」
 ノートPCのキーボードを叩きながら、クリスは自分の肩に頭を寄り掛かってる自分の彼女に話をかける。
 「だって……」
 口を尖らせて、シャルロットは責めるような口調でクリスに上目遣いを向ける。しかしその不機嫌そうな仕草も、クリスには可愛く見えてしまう。

 夜の七時、二人は自分の部屋でのんびりしていた。室内温度はやや高いが、互いの肩から感じる体温は心地よい。
 さらさらとした金色の髪から、ほのかによい香りが立ち上がっていた。シャルロットの体から発する甘い匂いに鼻をくすぐられ、胸が僅かに高鳴る。
 いかんいかん、報告書はまだ書き終わってないんだ。と自分に警告して、精神集中し直す。
 昨日のうちに、クリスは「AMサーバント」の設計データを本社に送った。製造許可が降りるかどうか、数日で審査結果は出るだろう。
 
 「セシリアは彼女なりに大変だ、家とかのことでな。俺は友達として少しでも力になれたらいいな、と思ってるけど、それだけだ」
 「でもセシリアの方はそんな風に思ってないよ」
 「だからって、邪険にするなよ。少なくとも今の俺はシャルロットのことでいっぱいいっぱいだ、余所見の余裕なんてない」
 「じゃ、セシリアかレオナさんから迫ってきた場合は?」
 「そりゃもちろん据え膳を……あっ、いや断るよ」
 「……言いかけた前半がとてつもなく気になる」
 「細かいことは気にするな。シャルロットだけだよ、俺は」
  少年の簡潔な一言で、少女の鼓動が速まった。
 
 「……シャルロット」
 わずかに強ばったシャルロットの肩を抱きしめ、至近距離で彼女の瞳を見詰めながら、クリスはゆっくりと彼女の唇に、自分の口を寄せていく。
 「クリス……」
 彼の意図を理解したシャルロットは、唇を僅かに突き出して目を瞑った。

 そして二人の唇が重なる前に響いたのが、ドアを叩く音だった。
 「おいクリス~居るのか? 俺だ」
 「……チッ」