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IS  バニシングトルーパー 030-031

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 握っている雪片弐型の刀身をスライドさせエネルギーの刀身を形成して、「零式白夜」を発動した一夏の白式は全身に金色のオーラを発散させている状態で突進して、雪片を持つ異型へ切りかかって相手を押し込む。
 相手のパワーは尋常じゃない。最初は優勢だった一夏も段々と押し返され始めた。
 だが、一夏は一人で戦っているわけではない。

 「うおおおお!!!」
 緑色に光る拳に粉砕の念をこめて、敵を脇を取った隆盛は懐に飛び込んで必殺技を相手の横腹部へ叩き込む。
 「受けろ!! T-LINKナッコォ!!!」
 胴体部に念動力を乗せたパンチを食らって一歩引いた泥人形の手が緩めて、そこで一夏は一旦下がって体勢を立て直し、隆聖と合流した。

 「一夏、またやれるか?」
 「心配するな! 所詮は偽者、本物の千冬姉には遠く及ばねぇ!!」
 「なら一気にカタを付けるぞ!!」
 「ああ!!」
 地面を蹴って疾走し、二人は同時に左右へ散開して相手を包囲する。

 「はああっ!!」
 雪片弐型を右横に構えたまま上半身を前へ倒し、側面から顔面へ切り払ってくる泥人形の一撃をかわした後一夏は左へ回転しながら、剣を右下から左上へ振り上げて逆袈裟切りを放つ。
 狙いは、泥人形が握っているその雪片もどきだけ。

 「貰った!!」
 一夏の叫び声に応じて零式白夜が一閃して、剣閃の後に雪片もどきがすで両断されて、切り落とされた泥人形の腕一本が空を舞う。

 「ナイス! 続けて俺もいくぜ!!」
 一夏に続いて今度は隆聖が両手を拳にして横腹に構え、肩部のスラスターユニットを全開にして敵との距離を詰める。
 救いたいという思い、正したいという思い、そして、閉ざされている心を解き放つためにこの硬い殻を叩き割ってやるという思いを、強く念じる。
 隆聖の真っ直ぐな思いを汲みこんだ念動力発生装置はとっくにフルスロットル状態。R-1と同調した隆聖の全ての力を集束している両拳を、隆聖は交互して振り出す。

 「さっさと目を覚ましやがれ! ラウラ!!」
 元々成り行きで手に入れたこの力も、今この瞬間を持ってその意味を成した。

 「くらえ! T-LINKダブルナッコォッ!!」
 二発連続して命中したT-LINKダブルナッコォに泥人形が吹き飛ばされて、隆盛は両手を掌にして新たな念をイメージする。

 「念動集中…!!」
 泥人形の外部装甲は既にヒビが入った。その中からラウラを引っ張り出すまであと一息。なら今必要なのはもう粉砕の念ではなく、切り裂く念だ。
 そう、刃だ。あの硬くて殻を切り裂き、なおかつ中にいるラウラを傷付けない鋭くて優しい刃が必要だ。
 イメージは一瞬ではっきりと浮かべて来た。あとは形にするだけだ。
 大丈夫。それが出来るのが、R-1というIS(マシン)だ。

 「破を念じて…」
 地面を蹴って空中に跳び上がって、隆聖は緑色に輝いている両手を掌にしたまま、胸の前で合わせて一斉に前下方へ、地面から立ち上がってこっちに襲い掛かってくる泥人形へ突き出した。

 「刃となれ!!」
 突き出した両手のひらから隆聖の念によって形を得た新必殺技、光の刃が放たれた矢のように飛び出し、その技に名をつけて隆聖は口に出して大声で叫ぶ。

 「天上天下! 念動破砕剣!!」

 シャッ!!
 隆盛が放った念動力の刃が敵の胸元に命中してそのまま貫き地面に突き刺さり、泥人形は上半身が後ろへ倒れた体勢で動けなくなり、切り口を境に泥人形の頭から腹部までヒビが走った。そこから体を丸めて意識を失っているラウラを見えた隆聖は手を手刀にして、そのヒビの方向に沿って上から前へ空を切った。

 「破ぁぁっ!!」

 その掛け声を合図に光の刃は形を保つ念から解放され、エネルギーが一気に爆散して標的を粉砕していき、泥人形の全身が砂のように崩れ去って行く。

 「出て来い! ラウラ!!」
 泥人形が完全に崩壊する前に隆聖は接近してラウラの手を掴み、そこから引っ張り出して、抱きとめたままゆっくりと地面へ降りる。

 「私は……また負けてしまったのか」
 隆聖の腕の中で両目を薄く開けて、ラウラは虚ろな視線で少年の顔を見上げて小さな声で呟いた。しかしその言葉を聞き取った隆聖は彼女の異なる色を持つ瞳からの視線を真正面から受け止めた。
 「いい加減にしろこのバカヤロウ! お前は兵器じゃなくて人間だ! 女の子なんだぞ!!」
 「私、が……?」
 まったくの予想外の言葉に、ラウラは目を大きく開いた。

 「人間の価値は力だけじゃないんだぞ! これ以上お前を欠陥品扱いする奴が居たら、俺がぶっ飛ばしてやる! だから、自分の足で自分の人生を歩けよ!!」
 「自分の……?」
 「ああ……そのための手助けくらいなら、いくらでもしてやる」
 日差しを背に、隆聖はラウラに微笑みかけた。

 「伊達、隆聖……」
 耳に入ってきた少年のセリフを最後に、ラウラの意識は再び途切れたのだった。



 「結局、俺達の出番はなかったな」
 「元々学園側が何とかするつもりだったのでしょう。というより、開少佐の機体はまだ改修中ではありませんか」
 一連の出来事に騒ぎ立てている観客席の中に二人の男、北村開とギリアムは席を立ってゆっくりと出口へ足を運びながら会話をかわす。
 「しかしこれで、多分トーナメントも中止せざるを得ないだろう」
 「確かに可能性が高いですね。学園側の対応を確認しておきます」
 「頼んだぞ。俺はエルザム……いや、レーツェルに連絡を入れておく」
 「分かりました」
 そう言いながら、男二人の姿はグラウンドの中へ振り返らずに出口の方へ消えて行った。



 「う、あ……」
 瞼の隙間から差しこんできたオレンジ色の光に、ラウラはベッドの上で目を覚ます。
 白い天井が視界に映り、消毒液の匂いに鼻を突かれて、ラウラはここが保健室だと気付く。体を起こそうとするが、力がまったく入らなくて直ぐに諦めた。
 喉から声を出すことすら、困難に感じる。

 「目が覚めたか」
 横になっているベッドの横から、聞き慣れた声が響いた。目だけを動かして横へ向けると、パイプ椅子に腰をかけてこっちを見ている織斑千冬の姿が見えた。

 「私は……」
 「ただの筋肉疲労だ、心配するな。しばらく動けないが、安静にして休めば直ぐに回復する」
 「何が、起きたんですか?」
 辛うじて首を回して、その赤と金のオッドアイで千冬を見据えてラウラは尋ねた。彼女の視線を受け止めた千冬はしばらく黙り込んだ後、言葉を再開した。

 「……一応機密事項だが、『VTシステム』を知っているな?」
 「はい。正式名称『ヴァルキリー・トレース・システム』、過去のモンド・グロッソ部門受賞者の動きを再現するシステムですよね。あれは確か……」
 「そう。条約により研究、開発、使用は一切禁じられている。が、お前の機体には積み込まれていた」
 「そんなのことが……」
 「機体のダメージレベルとパイロットの精神状態、そしてパイロットの意志などの条件が揃った場合に発動するように設定されていたそうだ。現在学園はドイツ軍方に問い合わせている。近々IS委員会の強制捜査が入るはずだ」