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IS  バニシングトルーパー 030-031

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 さっきまで落胆した表情はすでに消え、シャルロットは上機嫌な笑顔になる。しかしセシリアは不満そうに手を胸に当てて、上半身を乗り出す。

 「あの、シャルルさんを連れて行くのなら、ぜひわたくしも……!」
 「いや、遊びに行くわけじゃないし、流石にセシリアまでは無理だよ」
 「そんな……」
 「まあ、すぐ戻ってくるし、お土産も奮発するからさ、そんな顔するなよ」
 申し訳なさそうな笑顔で、クリスはセシリアの申し出を断った後レオナに話題を振った。

 「そう言えば、レオナお前はこれで一応任務終了って訳だし、これからどうする?」
 「さあ……次の指示が来るまで分からないわ」
 「もしかしたら学園から出て行くかもしれないってこと?」
 「そうね」
 「じゃ、それまではお休みをしても一度京都に行った方がいい。どうせまだ行ってないだろう? 」
 「……分かってるわ」

 「……?」
 二人の会話の意味が分からずに、シャルロットは首を傾げた。


 結局この簡単な打ち上げ会も30分後に終わり、満腹になったクリス達は一緒に寮に入ったあと、それぞれの部屋に戻った。
 今日一日の出来事が多すぎて皆は疲労しているけど、明日からは通常授業だから、色々と準備をしなくてはならない。
 特にシャルロットの場合は、別の用意が必要だ。
 明日から、彼女は女の子に戻る。

 「ねえ、私がこの部屋から居なくなったら、寂しい?」
 自分のベッドに座って細かい荷物を整理しながら、シャルロットはノートパソコンと向き合っているクリスに問いかけた。

 『もう、誰にも頼らない』

 「ほむほむ……」
 ディスプレイの向こうに居る少女の悲しげな言葉に、クリスは切なそうに呟いた。
 黒いストレートロングにストッキングを着用しているこの心強き少女に、クリスは心が奪われた。
 あえて言おう、めぐり合う運命であると!!

 パッ!!
 「痛い! 何だよいきなり!! わけが分からないよ!!」
 「アニメなんて見てないで私の話を聞いて!!」
 「ええ~あと二話で終わりなのに、続きが気になるよ」
 「ああ~!?」
 「す、すみませんでした。お言葉を拝聴します」
 「ふんっ!!」
 椅子の上で正座して頭を下げるクリスに、ちょっと怒ったのようなシャルロットは腕を組んで頬を膨らませた。

 「……ねえ、クリスは私のこと、面倒くさい子だって思う?」
 「えっ? どうして?」
 顔を上げてみると、シャルロットの顔には僅かに不安そうな色が見えた。

 「私はね、凄く嫉妬深いの。クリスとレオナが仲良くしているのを見ただけで不安になっちゃう。レオナは多分クリスのことが好きで、クリスも本当はまだレオナのことが好きなんでしょう?」
 地面に視線を向けて、シャルロットは服の据をぎゅっと握り締めた。
 もし肯定の返事が来たら、どうしょう。

 「それは違う。今の俺は、レオナのことを友達としか思ってない」
 「そうかな。私にはクリスしかいないけど、クリスは私以外にも仲良しの女の子が一杯いる。そう思うと、この部屋から出て行くのが怖いよ……」
 「おい、それ以上言うと怒るぞ」

 「えっ?」
 視線を上げてクリスを見ると、彼は明らかに不機嫌そうな顔をしていた。しばらく見詰め合うと、クリスは椅子から降りてシャルロットを腕の中に抱きしめた。

 「確かに俺は女友達が少しばかり多いかもしれない。でも俺が恋人として好きなのはシャルロット一人だけだ。シャルロットは優しくて可愛くて、料理も家事も上手で、最高の彼女だと思っている。この部屋から出て行ったとしても、遊びに来ればいい。織斑先生にばれなければ、泊まって行っても全然問題ない。だから、俺の気持ちを疑うな。泣くぞ」
 「ご、ごめん……」
 クリスの言葉に安心したような笑みを浮かべて、シャルロットは腕をクリスの背中に回して、彼を抱き返した。

 「シャルロット」
 「クリス……あっ」
 シャルロットの頬に手を添えて、ゆっくりと彼女の桜色の唇にクリスは口付けを落として、その柔らかさを貪る。
 そのまま二人は長いキスを交わし、互いの心臓の高鳴りを感じあう。

 「ねえ、その……いい、よ?」
 やがて二人は唇を離れ、シャルロットは甘い吐息を漏らしながら上目遣いで期待な視線を向けてきた。
 その意味を理解できないほど、クリスは鈍感じゃない。しかしクリスはシャルロットのおでこにもう一度キスした後、ゆっくりと彼女をベッドに座らせた。

 「いや、今日はやめておく。明日になってお前が女の子だって分ったら、先生は真っ先に俺とお前の関係を疑うだろう。その時に後ろめたいことをさせたくない。それに……」
 「それに……?」
 「俺はお前にも教えてやれないことが多すぎる。なのに一方的にお前を求めたら、嫌われるかもしれない。それが怖いんだ」
 「そんなこと、気にしなくても……私はクリスを信じてるよ?」
 「本当に? 例え俺は人間じゃなくても? 人殺しだとしても?」
 「えっ……?!」

 「……冗談だ、忘れてくれ。とにかく今日はやめておくよ。お前はさっさと寝ろ。俺は続きを……」
 「結局はアニメが観たいだけ!?」
 シャルロットの不満に満ちた視線に背中を刺されながら、クリスはマウスを握って苦笑をした。

 秘密を明かすことができないと明言しても、シャルロットは信じてくれた。それほど嬉しいことはない。彼女の気持ちを答えるためにも、できるだけ早く彼女にすべてを話せるようにしたい。
 そう思いながら、クリスは再生ボタンを押した。

 

 「み、皆さん、おはようございます・・・・」
 翌日の朝、SHR中の一年一組の教壇に立っている副担任、山田真耶はとても疲れ切ったような顔をしていた。

 「今日は、そのですね・・・。転入生を紹介します。紹介といいますか、既に紹介はすんでいるといいますか・・・」
 転校生という単語に反応して、クラス中が一気に騒ぎ始めた。しかし既に事情を知っているクリスだけがまったく反応せずに、携帯で何らかのデータを閲覧していた。
 (ヒュッケバインMK-IIIはこれで一気に完成する、か。臨海学校に間に合うのか。それとも先にAMガンナーだけを?)
 やや気になるのは、なぜかラウラは欠席している。事情聴取でも行っているのか。

 「じゃあ、入ってきてください」
 「はい」
 聞きなれた声と共に教室の引き戸が引かれて、一人の少女が金色に染まる髪を靡かせて入って来る。
 「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いしますね」
 教壇の上で丁寧にお辞儀をして、女子の制服を着たシャルロットはクラスメイトたちに向けて微笑みかけた。

 「「「「「えええええええええ!!!!」」」」」」
 クラスメイト全員が一斉にポカンと口を開いて、大きな驚き声を上げた。

 「えっ? デュノア君って女の子だったの?!」
 「そんな……男の子が一人減ってしまった!!」
 「ちょっと待って。クレマン君はデュノア君と同室だったのに、まさか知らないなんてことは……」
 誰かさんの言葉に、クラスメイト全員はクリスとシャルロットを交互して見ながら議論し始めた。

 「……」