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IS  バニシングトルーパー 032-033

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 「知らん。俺は凪沙さんの荷物運びを手伝って彼女の家まで行ったら、なぜかあのジャーダって男に草野球を参加しろ、ついでに戦力を呼んで来いと言われただけだ。というか一夏お前らは敵だろう、向こうに行けよ」
 少し離れている所で音を立ててバットの素振りをしている三十代後半の黒人男性に視線を向けて、クリスは腕を組んで小さなため息をついた。
 ジャーダ・ベネルディ。桜花とラトゥーニを引き取った男。若い頃はアメリカでミュージシャンとして活動していたが、妻のガーネットと結婚した後引退して日本に定住し、本屋を開いたとのことだ。
 因みに妊娠中の妻ガーネットと養女のラトゥーニは今は家で留守番している。

 「ごめんなさいね。強引に参加させちゃって」
 長い黒髪をポニーテールに纏め上げて、ジャージ姿に着替えた桜花が、クリスの後ろから近づいて話しに参加してきた。

 「あっ、凪沙さん。いやいや、決して嫌というわけではありませんよ。あとその髪型、似合ってます」
 「ありがとうございます。でも、可愛い彼女が睨んでますよ?」
 クリスのお世辞を軽く受け流して、桜花はみんなに向かって説明を始める。
 桜花の説明によると、この近の神社には毎年の八月に祭りをやる習慣がある。ここ数年の慣例では近くにある二つの商店街が主催していたが、今年はちょっと意見の入れ違いがあったから、二つの商店街はそれぞれチームを組んで野球の勝負で主導権を賭けることになったらしい。

 「でも俺達、商店街の人間ではありませんよ?」
 「外部の人間でもオッケーというルールでしたから、問題ありません。皆さんは深く考えないで、おじさん達の娯楽だと思って適当に付き合ってあげてください」
 「そういうことですか……」
 桜花の説明を聞いた後、みんなはようやく今の状況を理解した。
 IS学園の生徒なら運動神経の悪いやつは居ない。それを気付いたジャーダと弾はそれぞれクリスと一夏を確保してきたんだろう。
 そして隆聖はクリスが弾より一歩先に電話で確保したから、ジャーダたちのチームに入れられた。

 「まあ……特に予定もないし、草野球くらい別に構わない。箒と鈴は大丈夫よな」
 「一夏が参加なら、私も参加させてもらおう」
 「アタシも構わないよ」
 どうせ三人で一緒に行動する以上、デートにはならない。箒と鈴はあっさり一夏の意見に同意した。

 「俺も別に構わねえぜ。楠葉とラウラはどうする?」
 「私は野球が苦手だからいいよ。飲み物とタオルを用意して応援するよ」
 楠葉がとんでもない発言をした気がするが、あえて反応しないでおこう。
 「嫁が戦に出るなら、夫として出ない道理はない。ただルールがよく分からんのだが……」
 眉を顰めて、ラウラは指で顎を押さえて困ったような顔で考え込むが、その前にクリスに声をかけられた。

 「大丈夫。俺もわからんが、ついさっきジャーダさんの店で『タ○チ』を立ち読みしてきた。要は守りのときに守備範囲に飛んできたボールを掴んだ後、近くにいる敵隊員をグローブで殴って、攻めのときにボールをバットで出来るだけ遠くまで撃ち飛ばせばいい」
 「なるほど。少々バイオレンスな気もするが問題ない」
 「大有りだ!!」

 「あの、IS学園の先輩たち……ですよね?」
 作戦会議の最中に、クリス達に声をかけてきた女の子が現れた。
 黒いロングヘアを白いリボンで一本結びにしている、可愛らしい顔立ちで強気な表情をしている女の子だった。
 なぜか巫女服っぽい道着を着ているが、その上からでも彼女の豊満な胸や括れた細腰を備えた、抜群なプロポーションを確認できる。
 来た方向から考えると、どうやら敵チームのメンバーのようだ。

 「そうだよ。ここに居るのはほほ全員IS学園の生徒。何か用かな?」
 シャルが微笑みながら彼女に返事を返すと、その女の子は一瞬で嬉しそうな笑顔になって頭を下げた。
 「初めまして。北村美菜と申します、IS学園を目指してます。 今日は先輩達と会えてとても嬉しいです」
 ご丁寧に、美菜と名乗ったこの子は落ち着いた声で自己紹介を済ませた。

 「へえ~IS学園を目指しているのか。蘭と一緒だな」
 「はい。蘭とはクラスメイ……って!!」
 そう言って一夏は美菜に一歩だけ近寄ったが、彼の顔を一瞬だけ見た美菜はまるで怖いものから逃げるように怯えた表情で素早く一歩後ろへ下がり、右手を掌にして押し出した。

 「わ、私に近づかないでください!!!!」

 「くはっ!!」
 空気の爆裂音と同時にまるでブーストハンマーで殴られたような衝撃が一夏の胸を襲った。破壊力抜群の一撃を受けて数メートル吹き飛ばされた後、一夏は地面に仰向けて、大の字の状態で倒れた。

 「「一夏!!」」
 倒れ込んだ一夏の元に、鈴と箒が慌てて駆けつけて彼の上半身を抱き起こす。
 「ちょっとアンタ、何すんのよ!!」
 「くっ……! 仇は必ず取る!」
 「か、勝手に殺すな……」

 「あっ、ああすみません! すみません!!」
 一夏に攻撃を放った張本人である美菜は慌てて謝罪の言葉を連呼しながらぺこぺこと頭を下げる。
 さっきまで落ち着いた大人しい雰囲気を放っていた彼女とは、まるで別人のようだ。

 「ごごご誤解しないでください! じ、実は私、だだ男性恐怖症なんです!」
 「男性……恐怖症?」
 「はい!! 男の人と目が合うと……」
 「合うと?」
 「な、殴り倒してしまいます!!!!!」
 まるで警察に尋問されている犯人が精神的に我慢できなくなって自白する時のように、美菜は空に向かって大声で叫び出した。

 「……はあ?」
 男性嫌いは今時別に珍しくないが、男性恐怖症で男を一発で殴り倒すやつが居るのは初めて聞いた。意外な答えに、クリスは首を傾げた。

 「小さい頃から、お父さんに男は危険だから護身術を覚えろって、ずっとそう教え込まれてきたのです! 今じゃ男の人と目があっただけで殴りたくて仕方がないんです! で、でも目が合った時に近くにいなければ大丈夫ですから、だからその、決して先輩のことが嫌いとかそういう訳では……!」
 早口のように弁明しながら、やや亢奮気味な美菜は持っていたボールを震えている細い指で握りつぶし、周囲の皆は思わずゾッとしてしまった。

 「そ、そうか……とりあえずそろそろ試合が始まるから、美菜ちゃんも戻った方がいいよ」
 「あっ、はい! とにかくすみませんでした!!」
 三歩に一度振り返って頭を下げながら、美菜は弾達の居る休憩場に戻って行った。離れて行く彼女の後姿を見て、クリスは胸元を押さえている一夏の肩に手を乗せた。

 「おい、お前達のチームにはとんでもないやつがいるみたいだよ?」
 「言うな。むしろあの子が走塁したらお前たちの方が心配だ」

 「てめえら来い! ポジションを決めるぞ!!」
 バットを振り回して、ジャーダはクリス達を呼びかけた。それを見たクリスは一夏の肩を叩いて、笑いかけた。
 「俺、絶対外野にいくから」