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IS  バニシングトルーパー 034-035

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 「俺だ。隆聖だよ。ジャーダさんが降りて来いってさ。早くしないと食べ物がなくなるぞ?」
 「分かりました……っきゃああ!!」

 小さな足音の後、部屋の中から聞こえたのガタン! という大きな音とそれに続く、ドザーと何かが雪崩れるような音。そして最後に聞こえたのはラトゥーニの悲鳴だった。

 「どうした、ラトゥーニ!!」
 ドアの向こうに何かアクシデントが起きたのは確かだ。ラトゥーニの安否を確かめようと隆聖は慌ててドアの開けて部屋の中に入った。
 そして彼の視界に映り込んだのは、カオスと化した惨憺な有様だった。

 お菓子袋、空き缶、パッケージに複数の美少年がプリントされている小さな箱、CDなど、様々なものが床に散かっている。さらに部屋の主であるラトゥーニは、崩れた大量のな薄い本の下敷きになって痛そうに頭を抱えている。 
 どうやら部屋から出ようとした時に転んで、うずたかく積み上げられていた本の山を崩したようんだ。

 「大丈夫かラトゥーニ!?」
 ラトゥーニを埋めている本の山を掻き分けて、隆聖は彼女を助け出す。

 「ありがとう……大丈夫です。ちょっと頭が痛いだけで」
 「そうか。ならよかった。立てるか……っ」
 ラトゥーニを手を引いて立たせようとする時、彼女の足元で偶然に開いてしまった薄い本の内容が目に入り、隆聖は言葉を飲み込んだ。
 服装が乱れている美少年の二人が、ベッドの上で抱き合っている絵だった。  

 「うん? どうしました……ってうわああ!!」
 隆聖の視線の先に自分の好物があることに気付いたラトゥーニは、慌ててそれを拾って背中に隠す。
 しかし無駄だった。
 なぜならそれは、同じ薄い本は今、部屋の床を埋め尽くしているからだ。

 「あっ、えっと……」
 「み、見ました?」
 「あのさ、ラトゥーニ?」
 「見ましたね! お姉様にも見られたことないのに!! もう終わりです……今まで頑張って優等生を演じてきましたのに……」
 全身の力が抜けていったように、ラトゥーニは床に崩れてorzになる。それを見た隆盛は慌ててフォローを入れる。

 「ああいや、個人の趣味に口出しするつもりなんてないし、誰にも言わないからさ、だからその……気にするなよ」
 「……本当? 本当に誰にも言わないでくれます?」
 Orzのまま顔を上げて、ラトゥーニはまじまじと隆盛の顔を見てそう聞いた。

 「ああ。言わないって」
 「信じますからね? 言ったら殺しますからね?」
 勢いよく立ち上がったラトゥーニは隆聖の襟元を締め上げ、隆聖の顔が紫色になっていく。
 ラウラといいラトゥーニといい、最近の幼女体型のパワーを甘く見てはいけない。

 「わ、分かったから絶対言わないから! 早く離してくれ! こ、呼吸が……!!」
 「分かりました」
 首を絞める力が急に消え、隆盛は床に座り込んで咳をするが、彼を解放したラトゥーニはさっき隠した薄い本を彼の前に差し出した。

 「では契約の証として、これを差し上げます。読み終わったら、感想を教えてください」

*

 一方、暗くなって来た空の下で、ベネルディ家の庭は食欲をそそる美味しそうな匂いに満ちていた。
 赤く燃える炭に、僅かに飛び散る火花。三台のグリルによっていい感じに焼き上がった野菜と肉に、皆は談笑しながら舌鼓を打っていた。

 「はい、クリス。あーん~」
 「あーん」
 バーベキュートングで焦げ目のついた肉を裏返しながら、クリスは頬が赤くなっているシャルが箸で摘みあげた肉を口に含んで咀嚼する。
 「うん……味がちょっと薄いな。もっとソースをかけてくれ」
 「もう~健康に悪いよ?」
 クリスの注文に、シャルは眉を吊り上げて却下した。やれやれと苦笑いしながら、クリスは庭に入ってきた隆盛とラトゥーニに気付き、近くにいるラウラに話しかけた。

 「おいラウラ、嫁が来たぞ。行けよ」
 「ああ、貴様の教えた通りにやってみる!」
 肉と野菜を載せた皿を抱えて、ラウラは小走りで隆聖の元へ向かった。

 「これを食べてみろ、隆聖」
 「ああ、ありがとう……って何の真似だ!!」
 礼を言いながら目を向けると、隆聖が見えたのは肉を咥えたままキスを迫ってくるラウラの顔だった。

*

 「一夏!」
 「一夏っ!!」
 「一夏さん!!」
 同時に、もう一台のグリルの前に立っている一夏の隣に三人の少女が集まっている。
 箒、鈴、蘭は三人揃って一夏に箸で摘み上げた肉を差し出している。
 「さあ、食べてみろ」
 「このアタシが食べさせてあげるから、さっさと口を開けてよね」
 「あの、私のも、食べてください!」
 「えっと……」
 六つの目に注目され、一夏はまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。周りに見回して援護を要請するが、クリスと弾は一斉に目を背けた。
 ジャーダは遠い所でビールを飲みながらガーネットを話している、全然こっちの様子を見てない。
 隆聖はラウラに肉の口移しを迫られて、援護するところじゃない。
 孤立無援、四面楚歌だった。
 しかし一夏は、この場に存在する歩く自然災害のようなものを忘れていた。

 「皆さん、喉渇いてませんか?」
 一夏が迷っている間に、愛用の水筒を抱えている楠葉の姿が三人の少女の後に現れた。
 「うわっ!」
 「いつの間に!!」
 「まったく気配がなかった……」
 
 蓋を開けてその中にあるカオスな液体を紙コップに注ぎ、楠葉は無邪気な笑みを浮かべて三人へ差し出した。

 「はい、どうぞ飲んでください!」

*

 「仲がいいですね、あなたたち」
 庭で繰り広がれている賑やかな光景を見て微笑みながら、桜花は追加の野菜と肉を持ってクリスとシャルの隣に来た。
 「今日は色々とありがとうございました、クリスさん」
 「いやいや、どういたしまして」
 桜花の礼に笑いながら返事をした後、クリスは新しい皿に焼きたての野菜と肉を載せて桜花に差し出した。

 「まだ食べてませんよね? よかったらどうぞ」
 「ありがとうございます。何だかクリスさんと一緒にいると、私の方が年下みたいですね」
 「まあ、これでも一応給料を貰ってる社会人ですからね。周囲の女性には気を配らないとやっていけないって、会社の先輩からそう言われたのです」
 「なるほど。羨ましいですね、自立できるのは」 
 寂しげな表情で、桜花は笑顔のまま空を見上げて遠い目になる。 

 「凪沙さんは進学はしないんですか?」
 その表情を見て、クリスはジャーダが言っていたことを思い出した。
 桜花はジャーダたちの負担を減らすために、進学をやめて就職して家から出て行くつもりだ。

 「……しませんよ。これ以上、ジャーダとガーネットの負担を増やせません」
 新たに生まれてくる子供も加えて、三人の子供を抱えてはキツすぎる。だからこそ、桜花は一歩早く大人になる道を選んだのだろう。
 ラトゥーニはそれを理解しているから、桜花を止めたりはしなかったが、ジャーダやガーネットはそれを望まない。

 クリスも所詮他人、この家のことに過ぎた口出しはできない。しかしそれでも、桜花に不本意な選択をしてほしくない。