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IS  バニシングトルーパー 034-035

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 想像したのと違った手応えに美菜は咄嗟に瞑った目を開いてみると、美菜のパンチを左手で受け止めたクリスの姿が目に入った。
 「受け、止められた!?」
 この意外な事実に、美菜は思わず目を疑った。
 いままで拳を正面から受け止められた異性は、父だけだった。それなのに目の前にいる年上の少年は顔色一つ変えずに美菜の全力パンチを受け止めてくれた。 

 「凄いパンチだな。でもISの操縦者を目指すには、まだまだだよ」
 「えっ!?」
 「こっち来い」
 困惑している美菜の手を強引に引いて隆聖たちのいる所まで歩いて、クリスは彼女の手から皿を奪い取り、その上に焼きたての肉と野菜を載せた後美菜へ差し出した。

 「これくらいでいい?」
 「はい……ありがとうございます」
 差し出された皿とクリスの笑顔を交互して見てしばらく迷った後、美菜は浮かない顔のままで手を伸ばし、それを受け取った。
 料理の温かさが、美菜の指に伝わってくる。

 「じゃ、また欲しくなったら言ってくれ」
 「あっ、あの!」
 トングをテーブルに置いて、クリスは美菜に背を向けて離れようとするが、その前に美菜は声を出して彼を呼び止め、そしてもう一度全力で右拳を押し出した。

 スパッ!!
 「また!?」
 今度は最初から仕掛けるつもりで背後から攻撃したのに、クリスは体を斜めに捌いて容易く攻撃を左手で受け止めた。
 「まさか……」
 さっきの一撃を防げたのはまぐれか実力か、美菜は確かめたかった。そして今のことで結論は出た。
 目の前にいるこの男の子は、自分より遥かに強い。

 「何がしたかったんだ? 美菜ちゃん」
 美菜の手を握ったまま、クリスは美菜と向き合って彼女の目を見つめてドス黒い笑みを浮かべた。
 美菜の意図は大体察しているから別に怒ってはいない。しかし、今すごくこの子を苛めてみたい。
 こういう腕っ節の強いタイプの女の子は大体力が通用しなくなると、すぐ脆くなってしまうから、余計にいじめ甲斐がある。

 「可愛い顔して、闇討ちが趣味か?」
 「か、可愛いって」
 美菜の手を拘束したまま、クリスはドス黒い笑顔のまま彼女に迫る。自分では遠く及ばない腕力の前に、美菜は抜け出せずにいた。
 「お仕置きが必要のようだな。どんなのが好き?」
 そう言いながら、クリスは美菜の瞳から目を逸らさない。

 「お、しおき……?」
 今まで自分の力で異性を周囲から遠ざけてきたのに、いざ距離を詰められるとどうすればいいのかまったく分からない。
 しかし普段は歩く核弾頭と呼ばれて男から敬遠されてきた美菜にとって、異性に容姿のことで褒められるのも初めてだ。
 この男は自分より強くて、そして可愛いと褒めてくれた。
 頭の中が真っ白になって、美菜は胸の奥底から不可解な気持ちが湧き上がって来て、心臓の鼓動が速まったのを感じた。

 しかしその時、美菜の手を拘束している力が消えたのを感じた。

 「悪い、少し冗談が過ぎたようだな。さすがにこれ以上はシャルに怒られる」
 バツの悪い笑みを浮かべながら、クリスは美菜から離れてまだ彼女に詫びを入れた。
 少しからかっただけで美菜は顔が真っ赤になって、頭の上から湯気が上がっているし、手を離した今でもまるで魂が抜けたように呆然としている。
 これ以上からかってシャルにでも見られたら、間違いなくリボルビングバンカーを食らう羽目になる。

 「あ、あの、先輩!!」
 抜けた魂がいきなり戻ってきたように、美菜はいきなり大声出してクリスに袖を掴んだ。彼女の急な行動に驚きながら、クリスは反射的に返事を返す。
 「なっ、何?」
 「携帯番号を教えてください!!」
 「えっ? ああまあ、別にいいけど」
 美菜に言われてクリスは携帯を出し、赤外線で彼女と番号とメアドを交換した。受信したデータを嬉しそうに眺めた後、美菜は頭を下げてもう一度口を開いた。

 「ありがとうございました! あともう一つ、お願いがあります!」
 「お願い? とりあえず言ってみて」
 「あの、私がIS学園に入って先輩の後輩になった時、その、わたっ、わたしと……」
 一呼吸して、美菜は自分の願いを大声で叫んだ。
 「……私と、お付き合いしてください!!」
 「ええっ!?」
 まさかの告白だった。この子、Mじゃなかろうか。

 「待ちなさい!!やっぱり諦められません!! クリスさんの気持ちを奪い取れるのはこのわたくしですわ!!」
 庭の隅から、悪趣味なマスクを捨てたセシリアが焦った表情急速で走ってくる。

 「あらら、モテモテですわね。私も混ぜてもらおうかしら」
 いつの間にかクリスの隣に来た桜花が、艶やかな笑みを浮かべて彼の耳元でそう囁いた。

 「ねえ、どうしてこんなことになっているの?」
 最後に現れたのは、天使の笑顔を浮かべながら暗黒のオーラを発散し、左腕のリボルビングバンカーを展開してゆっくりと近づいてくるシャルだった。

 「話せば分かるから、とりあえずその物騒なものを仕舞ってくれ!」
 「言い訳なんて聞きたくない!」
 「うわあああああああ!!!」

 リボルビング・バンカーの火薬爆発音とクリスの悲鳴が、商店街に響き渡る瞬間だった。