二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシングトルーパー 036

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

 さらにブライアンの後に立っている銀髪少年を見れば、ハースタル機関の協力も得ているのは明確だ。
 出し抜かれた感が、半端じゃない。

 ブライアンから遠く離れた所に座っているイングラムは何かを考えているように、肘を机について、顔の前で指を組んで目を瞑っている。
 技術企業の社長として出過ぎた発言はしないが、クリスをブライアン事務総長の後ろに立たせたことで、彼は自分の立場を示している。

 「諸君の不満はごもっともです。では、今から諸君に説明しましょう」
 手を上げて代表達の声を制し、ブライアンは自信満々な表情で口を開いた。後ろのクリスは彼の合図に合わせて、モニターの画面を切り替えた。
 五月のときにIS学園のアリーナを襲撃した無人機ISを、エクスバインが記録した映像だった。

 「あのISは……」
 「例のあれか」
 映像を見た代表達は心当りが有りそうな言葉をつぶやく。
 この一件はとっくに各国の情報部にキャッチされたが、真相は未だに調査中とされている。
 とは言え、現存情報から犯人は既に決まったようなものだった。

 「IS学園を襲撃した所属不明のISです。調査結果によると、使われたコアは未登録、つまり世界に現存するコアのどれでもないコアです。そして諸君が知っての通り、この世界でコアを製造できる人間はたった一人だけ」
 「篠ノ之束博士……」
 IS委員会運営局の代表が、苦虫を噛み潰したような顔で拳を握り締める。
 この会話の流れだと、彼らは間もなく非難の的にされてしまう。
 既に酷く不愉快な気分が、さらに重くなった。

 「そう、彼女です。しかしいくら行方不明とは言え、証拠もなく人を疑うのはよくありません。なら一体誰がどこから手に入れたコアで、どんな意図でこんなものを作って、IS学園を襲撃させたのでしょうか。もし犯人は本当に篠ノ之博士なら、彼女に資材を提供したのはどこの組織でしょうか」
 「……まだ調査中だ」
 「そうですか。まあ、事件からまだ一ヶ月しか経ってませんから、無理もありません。しかしイチカ・オリムラとリュウセイ・ダテのことでお忙しいなのは分かりますが、IS学園はこの場にいる方々の祖国が納税人の金を使って運営している重要な教育機関。今度はたまたま学生として入学しているクリス君が状況を処理してくれましたが、次にまたこのようなことが起きた場合は、どうします? 毎年大量な会費を納めて運営している貴会としては、関係ないと仰るのですか?」
 案の定、ブライアン事務総長は攻撃を仕掛けてきた。
 一ヶ月以上も経っているのに、明確な調査結果はまだ出てこない。
 各国のパワーバランス調整及びコア動向の監視が主の役目だから、襲撃事件の責任ははっきり言ってかなり曖昧なところにある。しかし世界的権威を持つ組織として、IS委員会も知ったことじゃねえよ! なんてことは言えない。

 「そ、それは……IS学園には相当のISと腕の立つ教職員が配置されている。たとえそこの少年がいなくても、この件は処理されていた」
 「そうですか。確かにそうかもしれませんね。……クリス君」
 「はい」
 モニターは一旦光が消えた後、今度は別の機体が映し出された。
 悪鬼のような風貌を持つフルスキンタイプのIS、グレイターキンがエクスバインと死闘する時の映像だった。

 「その機体は……!?」
 「さっきの無人機の後に続いて現れた、所属不明なISです。性能はご覧の通り」
 アリーナのバリアをいとも簡単に突破できる火力、エクスバインを凌駕する機動性、グラビトンライフルの照射にびくともしない防御力。
 これは明らかに競技用ではなく、軍事用の規格で開発したものだ。
 そんな機体が存在するなんて知らなかった代表達は、目を丸くして驚嘆する。

 「こっちも幸いなことに、クリス君が撃退してくれました。では質問です。軍事用ISが襲い掛かってきた場合は、誰が責任を持って対応しますか?」
 「それは……」
 「それに、これはIS学園だけの話ではありません。最近に起きたヒューストン基地襲撃事件はご存知でしょうか。あと、イギリスが開発したビット兵器搭載ISの二号機『サイレント・ゼフィルス』が何者かに奪われたという情報も耳にしましたが」

 「それは本当か!?」
 場内の目が、一斉にイギリス代表に集まった。周囲の視線を浴びて、イギリス代表は小さく舌打して眉の間に皺を寄せた。
 テロリストに新型のISを奪われることが知られては、恥をかくくらいでは済まされない。しかしここで事実を隠して、後で知られたらさらに余計なことを勘繰られてしまう恐れがある。
 実はテロリストと何か取引をしたのでは? とか。
 
 「……本当だ。我が国の新型ISは何者かによって強奪された。あくまで推測だが、相手は恐らく亡国機業(ファントム・タスク)」 
 目を逸らして、イギリス代表はあっさりと事実を認めた。
 そして亡国機業の名を聞いた代表達はざわつく。
 亡国機業(ファントム・タスク)とは、長年に渡って各国を苦しめてきた秘密結社であり、国際の定義上ではテロ組織として認定されている。イギリスの新型を奪ったのは彼らなら、これは忌々しき事態である。

 「ではIS委員会としては、この件に関して一体どのような対応を?」
 「そ、それは……イギリスの自己責任としか……我々としては、あくまで今後のコア配分において……」
 ブライアンに問われて、IS委員会運営局の代表が言葉を濁す。
 しかしこの一言で、場内での味方はほぼ居なくなった。
 とは言え、双方の様子見だと決め込んだ代表達は最初から誰の味方でもない。一瞬だけ余裕そうに口元を吊り上げた後、ブライアンは厳粛な表情に戻って代表達に向けて話を続ける。

 「皆さん、聞いてください。ISを戦争に使うことを条約で禁じたのは、善意と良知による結果だと僕は信じています。しかしこれらの事件はすべて正体不明、意図不明、さらに条約や理屈も通じない相手によるもの。世界の平和と安全がこのような者たちに脅えられているのに、我々は黙っていい筈がありません!」
 ここまで来て、お膳立てはやっと済んだ。ここからが本題となる。
 正義感に満ちた目と凛とした表情で、ブライアンは席から立って、代表達の顔を見回した。

 「そこで僕は考えたのです。このような事態を処理するための専門組織を設立できないものかと。幸運なことに、我々に保護を求めた四人の男は僕の考えを賛同し、世界の安全を脅かす敵と戦ってくれることを承諾してくれました。だから僕は感激しながらもこの四人にISを与え、部隊を結成させました」
 そこで彼は一旦言葉を止め、モニターに「Special Tactics Technical Training Squad」の文字と、開かれた本と一本の剣によって構成されたエンプレムが表示された。
 「我々国連総会が運営する、ISに関わるテロ行為やトラブルを専門的に処理する特殊部隊。その名も……『特殊戦技教導隊』です」

 「特殊戦技教導隊……」
 「ISに関するを事件を処理する、特殊部隊か……」