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IS  バニシングトルーパー 045

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 メキボスの射撃を紙一重でかわし、二人は接近戦を挑もうと距離を詰めていく。バーニア全開して直線的な進路で突っ込んでいくシャルを中心に、セシリアは腰部のスタスターを順番に吹かして回転しながら、巧みにオクスタンライフルのWモードで後方から牽制射撃を送る。

 「……」
 セシリアの言葉を聞いたシャルは微妙な表情で押し黙ったまま加速し、腕部のスプリットビームを乱射しながら、肩部のコンテナを解放する。
 内部に残ったスクエア・クラスターの残弾が、このタイミングで一斉に飛び出し、セシリアの牽制を受けているメキボスへ飛んでいく。

 「動きが、違う!? ……くうっ!!」
 さっきまで動きがぎこちなかったオレンジとブルーの機影がいきなり息ぴったりに連携し、スピード溢れる電光石火のコンビネーションを仕掛けてきたのを目にして、メキボスは驚愕の色を隠せない。
 しかし彼が自分の驚きを整理する前に、マイクロミサイルの群れが既に目の前まで迫ってきた。炸裂する弾幕から抜け出せずに、メキボスは両腕を交差してセンサーが潰されないように防御する。

 「ちょっと、合わせるんじゃありませんの?!」
 「挟み込む!!」
 「人使いが荒いですわよ?!」
 先制攻撃は成功と判断したシャルはさらに加速しながら左腕のリボルビングバンカーを構え、セシリアはその高機動を生かして曲線を描き、メキボスの背後に回り込み、エクセレンの真似みたいにオクスタンライフルを槍のように振り回し、銃口をグレイターキンに向けた。
 二つの銃口が交差してビームと実弾を打ち出してグレイターキンの背後から衝撃を与え、正面からメキボスの至近距離まで侵入したシャルはリボルビングバンカーをぶち込み、弾倉を作動させる。

 「なにっ……!!」
 「ただでは済まさないよ!!」
 爆音と共に打ち出されたバンカーの杭がメキボスのグレイターキンに猛撃を与え、震動が全身に伝わっていき、手に握った武器を落としそうになる。
 そのままシャルはさらに前進し、杭をグレイターキンに押し当てたまま弾薬を撃ちつくす勢いでバンカーを連撃する。
 弾倉には全部六発の弾薬がある。この一点突破の必殺武装を全部打ち込まれては、どんな機体でも無事では済まされない。
 だがそれが完成する前に、メキボスは強引に抵抗した。
 真正面にいるシャルの腕を拘束し、腹部のフォトンビーム砲口を開いて彼女に向けてチャージを始めた。

 「野蛮人が……調子に乗るな!!」
 「えっ……!!
 「シャルロットさん!!」
 一目でシャルロットの状況の危険性を理解し、セシリアは機体を翻らせてスタスターを全開にし、二人へ駆けつけていくのだった。


 *


 「そっちのエネルギー残量はどれくらい?」
 「残り三割程度!」
 「こっちも同じだ」
 「このままでは、不味いわね……」
 空中で合流した一夏、箒、鈴、レオナは互いのダメージ状態を確認しながら、シルベルヴィントと銀の福音との交戦を続行していた。
 シルベルヴィントの斬撃とフォトンビーム砲、さらに銀の福音のビーム弾の雨。
 高速で飛び回るこの二機からの攻撃を避けるだけで精一杯で、反撃のチャンスすら見つからない。三つ巴の戦いと思われるこの場面で、四人はもっとも劣勢の立場に追い込まれていた。
 どんなに闘志を燃やした所で、機体の性能に限界がある。敵のスピードについていけないなら、自然とダメージを与えにくい。
 特に接近戦のみで戦う一夏の場合、接近できないようでは攻撃のしようすらない。

 「くそっ! もっとスピードがあれば……!!」
 悔しげに雪片弐型で空を切って下唇を噛み締め、一夏は苦渋に満ちた表情になる。
 諦めるつもりはないけど、早めに何とか別の手を考えないと、嬲り殺される。
 しかし彼に結論を出すまでの時間をやるほど、敵たちは甘くなかった。

 「そろそろおしまいにしてやるよ! クソガキ共!!」
 「こいつ……鈴っ!!」
 装甲の奥で残虐な笑みを浮べて、アギーハはシルベルヴィントを急停止しながら回頭した。
 後を追ってくる白式の横を一瞬で通り抜けて、両腕の高周波ソードを交差して構え、シルベルヴィントは急進する。
 まずは手始めに、衝撃砲を連射しながら年増を連呼している生意気なツインテールを殺してやる!
 29だって立派な二十代だぞ! この貧乳が!!

 「微塵切りにしてやるよ!!」
 「このっ……!!」
 瞬きの間で目の前まで迫ってきたシルベルヴィントへ青龍刀を振りかぶった瞬間に、アギーハの姿が消えた。
 直後に背後から衝撃を感じ、鈴は体勢を崩す。
 シルベルヴィントのスピードは、既に彼女の動態視力の限界を超えている。

 「あたいを怒らせたらどうなるか、思い知らせてやる!」
 「きゃああああ!!」
 相手が隙を晒したこのチャンスに、アギーハは一気に攻撃を畳み掛けてきた。全身のスタスターを噴射して乱舞しながら、高周波ソードで甲龍を切り刻む。
 繰り出される斬撃の嵐で龍砲が破壊されていき、全身が痛みを受ける鈴は悲鳴を上げていく。

 「まだ終わりじゃないよ!!」
 思う存分痛めつけた最後に鈴を下方へ突き飛ばし、アギーハは胸部の砲口を展開してエネルギーを集中し、高速回転させる。
 ――さあ、これでトドメだ!

 「呑まれちまいな!」
 「……っ!!」
 刹那、シルベルヴィントの胸部から発射されたエネルギーが高速に回転して渦となり、蛇のようにうねりながら伸び、その射線上にいる鈴を飲み込んだ。
 渦の中へ巻き込まれて、無数の風の鎌に嬲られていく鈴は戦慄して息を飲み込み、恐怖に顔をゆがめながら大ダメージを覚悟して目を閉じた。
 そして鈴の表情を満足そうに眺めながら、アギーハはその渦の中心に飛び込み、高周波ソードを構えて鈴へ高速接近し、最後の一撃を喰らわせようとする。
 
 「喰らいな! ボルテックシューター!!」
 しかしその前に、渦の中に飛び込んだ真っ白の機影がアギーハの視野に映った。

 「鈴っ……! くはああっ!!」
 間一髪のタイミングでこのエネルギーの渦の中に飛び込んで、甲龍を突き飛ばしたのは、一夏の白式だった。
 エネルギー渦の中央を突破したシルベルヴィントの必殺の一撃を、自然に甲龍ではなく、白式が受けてしまった。

 「……一夏!?」
 鋭い刺しを受けて意識を失い、白い装甲の破片と共に海へ落ちていく一夏を見て、鈴は全身に震えを走ったのだった。


 *


 「一夏! どうした?! 何があった!?」
 銀色装甲と光の翼を持つ敵――銀の福音を追いかけている箒は異常事態の発生に気付き、攻撃を停止して一夏を呼びかけた。
 しかし、返事が一向に来ない。
 一夏の身に何かあった。それだけは確実だ。
 エネルギー尽きて白式が沈黙した? 一夏が怪我した? それとも、まさか……
 ネガティブな可能性が、次々と箒の頭の中を過ぎって、彼女の戦意を削っていく。

 「……あっ!」
 しかし戦場では、一瞬の油断が命取りになる。
 動きが鈍くなった紅椿に向けて、銀の福音は振り返って遠慮なく砲弾をぶっ掛けてきた。
 気付いたときには、箒は既に視野を覆い尽くす弾丸の最中に居た。