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IS  バニシングトルーパー 046

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 下方の島で戦っている恋人に心配して、アギーハは通信チャンネルを開く。
 シルベルヴィントの方はいつでも離脱できるが、ドルーキンの方は動きが鈍い。もしもの場合は、援護しなければならない。
 だがそんなの彼女の考えを読んだかのように、赤と白のISがシルベルヴィントの前に出てきた。
 一夏と白式と、箒の紅椿だった。

 「ゼンガー少佐。この敵は、自分たちに任せてください」
 雪片弐型を構えて箒と肩を並べ、一夏は真っ直ぐな目でゼンガーを見てそう言った。
 自分自身の全てを、己の剣に預ける。
 ゼンガーは行動をもって示してくれた。
 その姿を見て、同じようになりたいと思った。
 いや、なってみせるさ。

 「……」
 一夏の瞳を見たゼンガーは斬艦刀を収納し、腕を組んで目を閉じた。
 そして、その渋い声で返事する。

 「織斑千冬の弟であるお前の言葉を、俺は信用する。言ったからには、やってみせろ」
 「はい。千冬姉の名に恥じないように、頑張ります!」
 ゼンガーの許可を得て、一夏は気合を入れなおす。

 「力を貸してくれ、箒。俺は、千冬姉のように強くなりたい」
 「ふん、気色悪いシスコンめ。いいだろう」
 「ありがとう」
 軽い笑いあって、二人はそっと無機質な手のひらを合わせた。
 刹那、二人の機体全体から金色に輝くが眩しい光が爆風の勢いを持って、一気に周辺区域まで広がっていく。
 同時に、機体のAIから表示が出た。
 それは、進化と覚醒を意味する単語だった。



 *


 アギーハが撤退を考えている頃、彼女の恋人であるシカログと重装甲遠距離支援IS「ドルーキン」は突如に現れた強敵、北村開とその愛機である量産型ゲシュペンストMK-II改に圧倒されつつあった。

 「ふんっ、そんな攻撃など!!」
 上体を屈めてドルーキンが振った鉄棒を回避して、相手の懐に飛び込んだ開はその粗末な攻撃を鼻で鳴らして笑い、ゲシュペンストの右拳を一旦引っ込めて、腕にある三本のプラズマ・ステークを唸らせる。

 「ジェット・マグナム!!」
 「……っ!!」
 電撃効果が篭ったゲシュペンストの必殺パンチで、カイは思いっきりドルーキンの軸足の膝関節を撃ち抜く。
 重装甲のフルスキンタイプだろうと、関節まではかばいきれない。
 空気が爆発したような打撃音と共にスパークが炸裂し、ダメージを食らったドルーキンの図体が大きく揺れ、膝が地につきそうになる。
 ドルーキンの両脚の膝部アーマーには、既に大量な凹みがきっちりと打ち込まれた。  

 「いいか、お前ら! パンチとは、こう打つものだ!! もっと気迫を入れろ!! 気迫を!!」 
 「「はっ、はい!!」」
 ドルーキンと戦いながら、開は余裕的な口調で後方に控えている隆聖とラウラへ説教を飛ばす。
 その見事なインファイトに、呆気を取られていた隆聖とラウラは名を呼ばれて我に返り、慌てて返事する。
 元ラーメン屋の店主がいきなりIS操縦者になったのを知った時は十分に驚いたが、今開が披露している戦いっぷりに更なる衝撃を感じる。
 まさに元戦闘プロの面目躍如、と言ったところでしょうか。
 標準サイズの体型を活用して敏捷に動き回り、適切な部位を狙って相手を打撃する開の量産型ゲシュペンストMK-II改を相手に、動きの鈍いドルーキンは反撃もままならずに半ばサンドバック状態になっている。

 「……」
 ドルーキンを纏うシカログという男は、極めて無口な人種であるらしい。交戦を始めてから今まで、一言も喋っていない。
 鉄棒を杖にして立ち直り、シカログはドルーキンの鉄拳を振り出す。

 「その程度か! 素人並みだぞ!!」
 紙一重でドルーキンの拳をかわし、開は一歩踏み込んで腕を下から上へ突き上げ、スーパーアッパーを食らわす。

 「……っ!」
 体が揺れるドルーキンはなんとか踏み止まろうとしても、膝関節がダメージを蓄積過ぎて上手く機能できない。
 大きな音を立てて、バランスを保てなくなったドルーキンは地面に跪いた。
 そして素早く相手の胸板を蹴って距離を取り、開は手招きして挑発する。  

 「立て、デカブツ。次で終わりにしてやる!」
 相手にKO通告を言い放ち、開は広げた両手で空中に円を描き、腰を低くして構えた。
 渋い髭が生えたその口元には、勝利を確信したかのような不敵な笑みを浮べていた。

 「……っ!!」
 舐められたことに腹立ったか、シカログという男は激怒に任せて鉄棒で乱暴に地面を叩き割り、再び立ち上がる。
 相変わらず無言だが、この行動から彼はかなり腹立っていることがわかる。
 血のような赤い光が宿るその四つ目の頭部センサーは開を見据え、ドルーキンはゲシュペンストへ大股で突進する。
 走り出したその図体の足は島の地面と接触するたびに深くめり込み、地震のような震動をもたらす。
 だが真っ直ぐに向かってくるその自分の二倍くらいの大きさを持つ敵を、開は恐れを見せることなく、動じもしない。

 「……!!!」
 開との距離を詰めたシカログは地面を踏ん張り、ドルーキンの全力を篭めて拳を振り出す。
 が、その攻撃を放った矢先に、開は視界から消えた。
 次の瞬間――ドルーキンは地面から浮いた。
 これはシカログが意図的にスラスターを吹かしたわけではなく、ドルーキンが拳を振り出す慣性を利用され、バランスを崩されたからである。

 「おりゃあああっ!!」
 振り出されたドルーキンの腕を取った開は大きく叫びながら、ゲシュペンストのバーニアを全開にして、背負い投げの要領で敵を投げ飛ばす。
 柔道を得意分野とし、レオナをも指導していた開の十八番である「背負い投げ」だった。
 シカログの視界が反転し、ドルーキンの巨体が宙を舞う。
 あれだけ重い体だ。地面に叩き付けられたら、大ダメージに間違いないだろう。
 しかし今はISでの戦いだ。叩きつけられるくらいの衝撃では倒すまでには行かないかもしれない。
 空中にいるドルーキンの腹部に、開は押し上げるように掌打する。 

 「吹っ飛べ!!」
 一瞬激しい気流が吹き荒れて、開の叫びと共にドルーキンの図体が宙に打ち上げられるていく。

 「ウソッ!!」
 「馬鹿な……」
 目の前に起きた信じ難い事実に、隆聖とラウラは目を丸くして驚きの声を上げる。
 地面を蹴って、開は空中のドルーキンに接近して、両腕のプラズマ・バックラーをセットする。

 「はぁぁぁあああああ!!」
 至近距離から、開は両腕による拳の雨をドルーキンの腹部に降らせる。
 凄まじい打撃音が爆竹の如く鳴り響き、火花が散っていく中、ドルーキンの表面装甲が激しく歪んでいく。
 そこから開は一旦打撃を止め、両腕にエネルギーと気迫を集中させる。
 そしてそれが限界に達した時――開は電光石火の速さでドルーキンを貫くように交互して撃ち出した。

 「ジェット・ファントム!!」    
 雷鳴が轟くような打撃音が響き、ドルーキンは装甲の破片を散らしながら殴り飛ばされていく。
 そしてそのまま脳天から落下して下の地面に衝突し、重い音を立てて砂の上に倒れ込んだ。