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IS  バニシングトルーパー 048-049

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 イングラムの隣に座っている深青ショートヘアの女性は、クリスの義理の姉であり、IS操縦の教官であるヴィレッタ・バディム。
 長い金髪を後ろで一つに結んだ青年は、何回か話したことのあるロバート・H・オオミヤ博士。
 そしてやや無愛想な顔をしている痩せ気味な男は、クリスにIS技術理論を実際の仕事で学ばせている先生、カーク・ハミル博士である。
 四人は真剣な表情でクリスの報告を聞き、時に質問し、敵味方の機体特性について検討する。

 「……とくに篠ノ之束が製作した紅椿という機体の性能について、まだ不明瞭な点が多く、もっと調べる必要がありますが、操縦者である篠ノ之箒も完全に発揮しきれない状態です。よって今は教導隊メンバーによる鍛錬成果を期待するしかありません。……自分からの報告は以上です」
 手元の端末を一瞥して、クリスは報告の終わりを告げた。そしてご苦労と言い、イングラムは席から立った。
 会議室の照明が点り、全員は手元の資料に視線を落として、ページを捲りながら鉛筆で色々と書き込む。

 「質問はもうないようだな」
 最後の確認をするように、視線を周りの顔に巡らせた。そして数秒間の沈黙の後、イングラムはクリスへ顔を向けた。

 「では解散だ。……クリス、お前は俺のところに来い」
 「はい」
 簡潔に返事して、クリスは自分の端末と書類を持って立ち上がり、会議室から出て行こうとするイングラムの後を追う。
 その背中を、シャルはちょっと寂しい目で眺めていると、横からクールな女声が聞こえた。

 「シャルロット・デュノア」
 「あっ、はい!」
 慌てて椅子から立ち、シャルは呼びかけに応じてヴィレッタの元へ向かう。
 ドア際にいるクリスが振り返り、一瞬だけ優しい笑顔でシャルにエールを送った後、会議室から出て行った。 
 何だかんだで、心配性な男である。
 
 「初日でいきなり悪いけれど、あなたにテストを担当してもらいたい計画があるわ」
 イングラム、クリス、カークの三人が退室した後、ヴィレッタは計画書らしきものをシャルへ差し出した。緊張してガチガチな動きでそれを受け取り、シャルは捲ってみる。

 「量産機汎用パッケージのモジュール化、ですか」
 「そう。それに加えて戦況に応じて換装できるシステムで、量産機の汎用性をさらに向上させるプランだ」
 ヴィレッタの隣に立つオオミヤ博士は相変わらず温厚な笑顔で、そう説明してくれた。

 「アルブレードと量産型ヒュッケバインMK-IIのパーツ規格はラファール・リヴァイヴと統一しているってことは、前に説明したよな?」
 「あっ、はい。確か、整備性と生産性を上げるためですよね」
 前に聞いた話を思い出しつつ、シャルはそう返事した。

 パーツ規格を統一すれば、ラファール・リヴァイヴを採用している国がアルブレードと量産型ヒュッケバインMK-IIを採用した時、色々と楽ができる。
 現有のパーツで修理できる部分が多いし、生産ラインも全部変える必要ないし、整備員が一からマニュアルを読む必要もなくなる。機体自体のハイスペックを確保している以上、ラファール・リヴァイヴを採用しているヨーロッパの国もゲシュペンストに変えようとは思わないだろう。

 「今回のプランは、この三機を対象としている。新たに開発したパッケージは、この三機のいずれにも対応できる。さらに換装の時間は五秒以内に抑えているし、同型機がパージした装備を拾って装着するのも可能」
 端末を操作して、オオミヤ博士は何種類かのパッケージ設計図をシャルに見せた。
 右腕の大型クローアームで戦う格闘戦用パッケージ、R-2パワードと似た重装甲の砲撃パッケージ、さらにブルー・ティアーズのようなオールレンジ攻撃可能の中距離高機動戦用パッケージまで。
 このシステムによって、実戦で同型機がお互いのパッケージを一瞬で交換したり、破損したパッケージを手軽に交換して戦闘続行することも可能になる。欠点としてはスポーツの試合では運用し辛いことでしょうけど、そもそも量産機の汎用性を上げるというテーマ自体、スポーツ向けじゃない。

 「元々うちの量産機はカスタマイズのしやすさが売りだから、アイデアさえあれば可能性は無限大。実験的な武装を投入した一部の第三世代よりもフィードバックが反映しやすいし、信頼性もずっと高いと思うよ。どうだ、やってくれるかい?」
 「あっ、はい! 是非やらせてください」
 「クリスは報告書であなたを様々な機体や武器を使いこなし、特性を引き出せる貴重な人材と評価していて、ラングレー研究所のマリオン博士も君が欲しいと何度か交渉してきたことがある。その腕、期待させてもらうわ」
 「はい。頑張ります!」
 期待に満ちた目をしているオオミヤ博士と、薄い笑みを浮べたヴィレッタに、シャルは元気よく返事したのだった。





 *




 「そうか。篠ノ之束がそんなことまで……」
 「やはり、捕獲しておくべきでしょうか」
 「放っておけ。不完全とは言え、ズフィルード・クリスタルを模造できた才能は称賛に値するが、彼女は世界に追われる身だ。我々まで手を出す必要はない」
 社長室の中、イングラムとクリスは机越しに会話を交わしていた。
 「インスペクター」と名乗った侵略者、そしてそれに協力する秘密な組織「亡国機業」。今回はかなり戦力を晒したが、まだ底ではないとみた。
 しかし二人の話題の重心は、それだけじゃなかった。

 「R-2パワードの稼動データは見た。初めての割りには、中々のものだったな。パイロットは、例のドイツ軍の?」
 「はい。ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐です。操縦技術が優れており、伊達隆聖との信頼関係も厚い人物です」
 「そうか。お前がそう言うなら、交渉してみる。それより、R-3だ」
 コーヒーを一口含み、イングラムは淡々とした口調でそう言った。
 技術さえよければ誰でも乗れるR-2と違って、R-3のパイロットに念動力は必要だ。ヒュッケバインMK-IIIと違って、SRXの稼動は最低でも二名の念動力者がいる。
 机の引き出しから薄い書類を取り出して、イングラムはクリスへ差し出す。

 「新しい念動力者を発見した。説得を任せたい」
 「R-3のパイロットに……ですか」
 微妙に浮かない顔して、クリスはその書類を手に取り、ざっと目を走らせる。そこに貼られている顔写真が目に入った瞬間、彼は顔を僅かに曇らせた。
 見慣れた白い制服を着た、気弱そうな女の子だった。

 「やはり、IS学園の生徒ですか」
 「……気に病む必要はない。あの薬は念動力者を発見されやすくするという副作用があっても、人体に害はない」
 「はい」
 残りのページを捲って、クリスは彼女のプロフィールを閲覧する。
 しかし学園は今夏休み中。接触するために家まで訪ねるのはさすがに露骨すぎる。というか、この子の家は結構やばい。できれば家までいきたくない。
 どうせR-3の本体はR-GUNのプラスパーツの後にロールアウトする予定で、プラスパーツはさらに遅れると聞いているから、そこまで急ぐ必要はないはず。

 「分かりました。この件に関しては任せてください」