二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

IS  バニシングトルーパー 048-049

INDEX|8ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

 女扱い上手いし、顔結構いいし、金そこそこあるし、真面目の皮を被ってるし、IS操縦できるから、女だらけのところに行ったらそりゃ彼女くらい簡単に作れるけどさ! でも考えたくなかったよ!!

 「で、でも、別に何もなかったよね? シャルロットちゃんがベッドで、お前が床に寝てたよね?」
 最後の勇気を振り絞って、祐はおずおずと目を上げてそう聞いてみる。
 そうだ。一緒に住んでいるのに手を出さないのが定番だろう!
 だが返って来るのは、そんな小さな希望も打ち砕く絶望だった。

 「……俺がそんな草食系に見えるのか?」
 「見えねえよコンチクショウ!!」
 思いっきり地面に拳を叩きつけて、祐は歯軋りする。
 まただ。また離反者が出たよ!

 「まあ、そう落ち込むな」
 体をしゃがんで、クリスは落胆した祐の肩に手を乗せ、優しく微笑みかける。

 「お前に貸した『とら○る ダ○クネス』単行本、もう俺に返さなくていいから」
 「えっ! いいのかよ!?」
 「いいよ。俺はもう……矢○先生から卒業したからな」
 「お前フォローする気全然ねえだろうおおおおおお!!!!」
 トドメの一撃を受けた祐は、悲傷に満ちた魂からの絶叫を発したのだった。




 *




 夜八時、クリスは空きっ腹を抱えてようやく寮の部屋へ帰還する。
 溜まった書類の作成やらカーク先生の手伝いやらで、結局はシャルを先に帰らせた。今頃は部屋で拗ねているのだろう。 
 というか、自分からプライベートの関係を仕事に持ち込まないとか言って、結局は初日から心配して格納庫まで行ってしまった。自分は意外と割り切れない男かもしれない。

 「あっ、やっと帰ってきた」 
 IDカードで扉を開くと、案の定シャルはぷぅっと頬を膨らませて恋人の帰りを待っていた。
 既に昼間の仕事服からTシャツとホットパンツに着替えて、テレビを見ていたようだが、クリスが帰ってきたのを見て、ぱたぱたと軽い足取りで玄関まで寄ってきた。

 「ああ、ただいま」
 「……それだけ?」
 威嚇するように眉を大袈裟に吊り上げて、シャルは不機嫌そうな目で睨んでくる。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し? を期待したい所だが、さすがにやってくれそうにない。

 「ごめんな。AMサーバントに新しい技術を投入するって、カーク先生が……」
 「言い訳はいい。誠意を見せて」
 「……はいはい」
 初日からいきなりの遅い帰宅ですっかり拗ねてしまったシャルの機嫌を取ろうと、クリスは彼女の華奢な体を思いっきり抱き締めた。

 「今日はどうだった? 疲れた?」
 「別に。機体の分解を手伝ってただけだよ。本格的なテストは明日から」
 玄関で抱き合ったまま、二人は静かな声で囁きあう。
 今日は格納庫の一件以後は殆ど顔を合わせられなかったから、最近ずっとベタベタしていた二人のバッテリー減り具合は酷い。いい傾向とは言い難いかもしれないが。

 「手を洗ってきて。ご飯はまだでしょう? もう用意してあるから」
 「シャルが用意したのか?」
 「うん! 食堂のおばさんから材料を分けてもらったの」
 「それは楽しみだ」 
 食堂の冷たい料理を覚悟していたが、シャルの手料理があれば、もっと早く帰ってくるべきだった。深刻な空腹に陥っているクリスはすぐ部屋着に着替えて手を洗い、食卓についた。
 小さなガラスダイニングテーブルの上には、既に二人分のサラダ、スープと肉料理が綺麗に並んでいた。

 「凄いな……作るのが結構大変だったんだろう」
 「私を甘く見ないでね。これくらい、簡単だよ?」
 もっと簡単なものを想像していたけど、意外とちゃんとした手の込んだものが出てきてビックリしたクリス。
 そしてちょっと自慢げな笑顔を浮べて、シャルはクリスの対向の席に腰をかけた。

 「じゃ、いただきます」
 ナイフとフォークを取り、料理を一口食べると、出てくる感想はやはり美味いの一言だった。シャルの料理の腕は知っていたつもりだけど、やはり凄いもんだなとクリスは再認識する。
 でも仕事帰りに料理を作って、しかも自分が帰ってくるまで待つなんて、シャルにとって負担が大きいのではないかと心配してしまう。

 「だから別に無理しなくてもいいぞ。それに、俺が遅れる時は先に食べていいから」
 「そんなの、勿体ないよ」
  頭を横に振り、シャルはクリスに微笑みかけながらそう言った。
 確かに待つのは辛いけど、一人だけの食事は寂しすぎる。母をなくしてから、クリスと出会うまでの冷たい時間を思い出してしまう。

 「食事は一日に三回しかないんだよ? やはりクリスと一緒に食べた方が幸せだよ」
 「……そんな大袈裟な」
 「全然大げさじゃないよ」
 ナイフとフォークを動きを止めて、シャルは真っ直ぐにクリスの目を見て、頬を染める。

 「クリスと一緒に仕事して、ご飯を食べて、テレビを見て、隣で寝て、それでまた明日がくる。この感じが、凄くすきなんだ。だから作るのも待つのも、全部好きでやってることだよ」
 「……それじゃ俺の気が済まない。何か欲しいものはないかな? 可愛い服とか、大きいベッドとか。言ってくれれば」
 「別にいいよそんなの。服とかは足りてるし、ベッドもくっつけないと落ちちゃうくらいのが丁度いいよ」
 「俺としてはちょっと困るな。激しい時とか特に」
 「もう~! すぐ話をそういう方向にもって行くな! 」
 手を拳にして振り上げて、シャルはちょっと怒ったような表情をしてクリスを叩くふりをする。誤魔化すように笑いながら、クリスは両手を挙げて降参のポーズを取った。

 楽しく食事を済ました後一緒に借り物の食器を洗って、順番にシャワーを浴びて、ベッドの上で寄り添ってテレビを見る。穏やかな時間を過ごしていくうちに、いつの間にか日付が変わるまであと一時間の所まで来てしまった。
 そろそろ寝ようと部屋の電気を消して、クリスとシャルはシーツの中に潜り込んだ。

 ギシ、と軋む音と布の擦れる音が部屋の中に響き渡り、少々狭いベッドの上で二人は体をべったりとくっつけて、手を繋いで指を絡める。
 エアコンの効果は弱めに設定しているが、部屋の空気はそれほど暑く感じない。密着している体から寝巻き越しに伝わってくる体温が心地よくて、二人は一つの枕に頭を乗せて視線を交わす。
 しばらく無言のまま見つめ合った後、二人は軽く額を合わせて目を瞑った。互いの熱い吐息が触れ合うこの距離なのに、不思議と気分が落ち着いていた。

 「ねっ、週末、行きたいところがあるんだけど」
 「母さんの墓参り?」
 「……うん」
 今の距離でしか聞こえないような低い声で、二人は囁きあう。

 「じゃ、一緒に行こう。娘さんを美味しく頂いたからどうかご安心をって、挨拶するから」
 「なにそれ……」
 「まあ、とにかく外に出るのは賛成だな。最近のシャルは、ちょっと運動不足みたいだし?」
 「触らないでよ。……気にしてるのに」
 「はいはい。ついでに食器とかも買おう」
 「お皿とかは……可愛いのがいいな」
 「あまり……子供っぽいのは、勘弁してくれよ……?」
 「分かってるよ……」