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IS  バニシング・トルーパー リバース 001-002

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 「重要物資が搭載されていると思われる輸送機を中心に、敵はアーマードモジュール部隊を展開している。現在確認したのはリオンタイプ8機、ガーリオンタイプ2機」

 「残党如きが、随分と奮発したものだ」
 表示されている情報に目を通しながら、クリスは言い捨てるように呟く。
 軍事勢力として既に崩壊したDCの残党では残存機動兵器の数が限られているし、補給源も連邦に押さえられてちゃんとしたメンテナンスを受けるチャンスが少ない。
 なのに一気に十機のAM(アーマードモジュール)を投入してきた。
 それだけ重要な作戦なのか、それとも戦力に余裕があるのか。

 「いずれにせよ、向ってくるなら排除するまでだな」
 さっき一夏と喧嘩した時と違い、今の篠ノ之箒は至って冷静な口調になっている。この雰囲気は、冷酷な兵士のものだった。
 黙って聞いているセシリアと一夏も、今は同じ表情になっている。

 「物資を奪還すれば全滅させる必要はないが、状況的に難しいだろう。速やかに敵を排除し、重要物資のコンテナを確保せよ」
 「「「「了解」」」」
 間もなく、四人は殺し合いの戦場に飛び込む。だが心を乱すものは、一人もいない。
 クリス、一夏、箒、セシリア。いずれもL5戦役から戦い抜いてきた歴戦の兵士。ホワイトスターでの修羅場と比べれば、DC残党相手なんて生ぬるい。

 「なお、今回のフォーメーションだが、鈴が不在のため、クレマンはバックアップに回れ。現地での指揮も任せるぞ」
 「了解」
 凰鈴音。部隊の五番目隊員だが、量産型ヒュッケバインMK-IIのカスタマイズ化が間に合わなかったため、近くの基地で技術顧問と留守番している。

 「では出撃だ。くれぐれも重要物資の確保と、生還を最優先にしてくれ」
 「「「「了解」」」」
 メインモニターから千冬の姿が消え、輸送機後部のハッチが低い音を立てて開いていく。外から吹き込んできた強い気流を感じたのと同時に、クリスはヘルメットを被って、操縦桿を握り締めた。
 丁寧に操作で機体をしゃがんだまま後ろへ移動して、ウェポンハンカーへ手を伸ばす。
 フォトンライフルをリアスカートアーマーにマウントして、レクタングル・ランチャーを握った後、クリスは肩に01と書かれた、自分専用にカスタマイズ化された量産型ヒュッケバインMK-IIの背後に取り付いてるバーニアユニットを展開させる。
 標準仕様の量産型ヒュッケバインMK-IIだと、テスラドライブの体積が小さくて、わざと展開する必要は無いが、クリスの機体は特注品のバーニアユニットに換装されている。
 高機動性を活かして敵陣をかく乱する切り込み役がクリスの本来のポジションだが、今回ではバックアップの人手が足りないため、やむなく後衛に回された。

 「ノートゥング01、クリストフ・クレマン、出る!」
 淡々とした口調で、クリスは自分の出撃を告げ、ダーククレーの機体を夜空へ飛び立たせた。



 一方、DC残党の輸送機の格納庫では、小柄の銀髪女性一人が静かに佇んでいた。左目に眼帯をつけている彼女は、一機のAMを見上げている。
 DC戦争の中期から大量生産されていたリオンシリーズの指揮官用上級機体であり、完全に人型をしているガーリオンだった。
 そのガーリオンの塗装はDC戦争の時、黒き竜巻と呼ばれる勇将・エルザム・V・ブランシュタインが使っていた機体と同じ、黒と赤のツートンカラーに塗装されているが、全体から見れば全く違う機体だ。
 背部に固定されて機体正面へ向けている大型レールカノン、太ももの側面に増設された大きなサイドアーマー。両腕の前腕部装甲にはマシンキャノンが固定されており、マニピュレーター、つまり人の手に当たる部分はかつてとある人物が搭乗したガーリオンのカスタム機と同様の撃発型貫手に換装されている。
 これらの改造により、機体の攻撃パターンが大きく変わるのは必然。癖の強そうなこの機体のパイロットは、技量の高い人間と見て間違いないだろう。

 この部隊はまだ連邦の追撃を受けている最中。他の搭載機体は全部出撃中だが、この機体だけがここで静かに陣座しているのは、指揮官の体力を温存するためでしょう。

 ―――!
 突如、格納庫に警報音が響き渡る。

 『こちらへ接近中の敵部隊発見!! 数4、 距離6500!! 間もなく接触します!!』

 スピーカーからオペレータの状況報告が聞こえる。早足で壁に設置されている通信機を手に取り、銀髪の女性は外に居る部隊の指揮を執っている副官への通信回路を開く。
 「私だ、クラリッサ」
 「ラウラ隊長、ご指示を」
 「敵の目的は恐らくコンテナの奪取、輸送機に近づけさせずに足止めしろ。私も直ぐに出るから、それまで持たせろ」
 「はい。ですが相手はたっだの四機、こっちの数の半分以下です。レーゲンの予備パーツも残り少ない以上、ラウラ隊長は温存すべきかと」
 通信機の向こうから、クラリッサと呼ばれた副官が上官に戦力温存を進言した。

 「……わかった。が、無様な姿を晒すなよ?」
 ラウラと呼ばれた少女は自分の部下を信頼している。しかし今回強奪したコンテナが連邦軍にとっての重要性を考えると、来る敵はかなりの手練と見るべきだろう。
 「はい!!」
 クラリッサの返事を聞こえた後、ラウラは通信機を壁に戻して自分の愛機のコックピットに乗り込んだ。

 「安心しろ。お前は、せめてお前だけは必ず私が……!!」
 格納庫の中央に入っている小さなコンテナに決意満ちた視線を向けてそう呟きながら、ラウラは機体の起動シーケンスを始めた。


 夜空の下、ダークグレーの量産型ヒュッケバインMK-II四機が、安定したスピードでフォーメーションを維持したまま疾翔する。
 前方のフォワードポジションに居るのは、接近戦仕様にカスタマイズされた一夏機と箒機。
 胴体、肩そして足に追加装甲とバーニアを増設され、胸元にバルガン砲二門が固定されている二人の機体は一般機より防御力と運動性が優れている。さらに追加装甲の裏には、大量の接近戦用武装が内蔵されているため、格闘戦においては高い戦闘力を発揮する。

 そして後のバックアップポジションに居るのは、高機動戦用のクリス機と狙撃戦用のセシリア機。
 クリスの機体ではパイロットの癖に合わせて各部にバーニアを増設され、背部のバックパックが高性能のスーパーバーニアニュットに換装されているため機体の反応はかなり敏感になっているが、無茶苦茶な機動を大好物とするクリスは至って満足している。
 そしてセシリアの機体では、高性能カメラユニット付きタイプの頭部に加えて、機体の肩にも高感度センサーを追加されている。専用武器の超長距離狙撃ライフルと相俟って、ワンオフ機にも引きを取らないトップクラスの狙撃能力を誇る。

 「ノートゥング04より各機へ、敵にキャッチされましたわ。リオン部隊がこっちに向かってきました」
 一番探知性能の高いセシリアは、レーダー画面にある敵マークの動向に変化があったことを皆に知らせる。