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IS  バニシング・トルーパー リバース 001-002

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 黒いガーリオンはまるで勝利を確信したように、クリスと接触する瞬間に真っ直ぐに貫手を振り出した。
 「くっ!!」
 ガードに使った左前腕が、一瞬でバラバラに叩き潰された。体勢を僅かに倒して胴体への直撃を逸らしながら、クリスは機体の膝を突き上げる。
 「さっきのお返しだ!!」
 膝蹴りでガーリオンの胴体部に衝撃を与える。ガーリオンの機体重量が軽くて、装甲も硬い方ではない、この一撃はパイロットにもダメージが届いたはず。
 そしてこの一瞬について、クリスは敵と密着した状態でもう一度バーニアを全開にした。
 咆哮するバーニアのパワーでそのままガーリオンを盾にして、輸送機の後部格納部へ突入した。
 ドカーン!!
 急加速した70t以上の鉄塊をぶつけられた輸送機は激しく揺れ、格納庫の装甲壁が大きく凹む。整備用の機械が倒れて、備品箱に入ってた消耗品のパーツや弾薬などが格納庫の地面にぶちまかれる。

 自動作動したコックピットのエアバッグに構う暇もなく、クリスはコールドメタルナイフを逆手に振り上げて、自分の下敷きになっている黒いガーリオンに止めを刺す。
 「終わりだ!!」
 ガーリオンの胸元の突起、コックピット部に、クリスは思いっきりナイフを刺し込んだ。体を動かす心臓部が潰され、まるで人間が苦しんでいるように一瞬もがいた後、ガーリオンのセンサーから光が消えた。
 ここは格納庫の中。下手に攻撃して機体を爆発されたら、回収目標まで吹っ飛ばされるかもしれない。ビームソードからナイフへ切り替えたのもそれが原因である。

 目を黒いガーリオンから離さないまま、クリスはゆっくり後退して、残った右腕で重要物資のコンテナを抱き上げた。
 軽い。大きさはヒュッケバインの頭部ユニットとほぼ同じ。
 だが中身には興味ない。
 好奇心を自制できない人間は早死する、という上官の言葉を忘れるわけにはいかない。
 コンテナを脇に抱いて、クリスは敵の輸送機から飛び出した。

 「ノートゥング01より各機へ。ターゲットは回収した、直ちに撤収せよ。ポイントα115にて合流する」
 輸送機から一定距離を離れた後、クリスは味方に指示を出した。

 「こちらノートゥング02、わかった」
 「ノートゥング03、了解だ」
 「ノートゥング04、了解しましたわ」
 返してきた隊員たちの返事が、全員の無事を証明した。それを確認したクリスは安堵の表情を浮べて、ペダルを踏んでいる足に僅かな力を加えた。

 月の下で、暗い灰色のカラスが甲高い声を上げ夜空を横切って、闇の向こうへ消えた。






 三日後、朝十時。
 地球連邦南欧方面軍支部・アビアノ基地の滑走路に、一台の飛行機が着陸した。飛行機が完全に停止した後ハッチが開き、中から白衣を着た数人が降りてくる。
 階段を降りている途中に、先頭に立っているメガネをかけた四十代女性が手を振って、地面で自分たちを迎える軍人に得意げな笑みを見せた。
 「よっ、まだ会ったな……ダンスト司令」
 「……っ」 
 軽く頷いて、地面に居る軍人は渋い顔のまま唇を閉じて沈黙する。全員が降りた後ダンストと呼ばれた軍人は無言に歩き始め、白衣達と共に輸送車に乗り込む。
 エンジンの震動と共に、輸送車が走り出す。滑走路を後にして、基地の奥へ進む。
 基地中央の倉庫地帯を通る時、倉庫の奥に佇んでいる鋼の巨人達の姿が視界に飛び込んだ。

 青くてウサギ耳状のブレードアンテナを持つパーソナルトルーパー「量産型ゲシュペンストMK-II」。
 飛行機に手をついたような姿を持つ空中戦アーマードモジュール「リオン」。
 そして、連邦軍が正式に採用した最新型量産機「量産型ヒュッケバインMK-II」。

 「あれ?」
 メガネ女の顔に、意外そうな表情が浮ぶ。
 倉庫の奥に並んでいる五機のダークグレー色の量産型ヒュッケバインMK-IIの姿は、彼女の記憶にある一般機の形とは違うものだった。
 「やるね……生産量がまだ少ないのに、もうカスタマイズかい?」
 「あの部隊は情報部直属だ。俺の管轄範囲ではない」
 「ほう……」
 ダンストの返事を聞いたメガネ女はその丸いメガネを押し上げて、遠くに立っている量産型ヒュッケバインMK-IIに興味深そうな視線を投げる。
 「ついでに言うが、例の物を奪還したのもあの部隊だ」
 「それは……益々興味深いな。後で資料を回してはくれないか?」
 「……それは情報部と交渉してくれ。こっちにも詳細な資料を持ってない」
 「そうか」
 残念そうな声で、メガネ女はボケットからキャンディを出して、舐め始めた。

 十分程移動した後、輸送車は白いビルの前で止まった。白衣達は車から降り、ビルに入り込む。
 ロビーを横切ってエレベータに乗りこみ、「F15」のボタンを押して上の階を目指す。エレベータのドアが再び開いたとき、目の前にあるのは、銃を持っている兵士によって封鎖されている研究室だった。
 ポケットから認証カードを出して、ダンストはロックを解除した。僅かな摩擦音を立てた後開かれた分厚いドアを潜り抜けて、白衣達が入室する。
 研究室の真ん中には、人間用の冷凍睡眠カプセル一つが陣座してた。横まで歩いてメガネ女はカプセルを見下ろして、狂気じみた表情を浮かべて陰険に笑った。

 「さて、目覚めの時間だ……お姫様」

 カプセルのガラス越しに見えるのは、安らかに眠っている15歳前後の金髪少女の姿だった。