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IS  バニシング・トルーパー リバース 001-002

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 「いや、鈴のTC-OS設定いつも無茶苦茶だし、よく今まで生き残れたなって思ってるし。異○生存体じゃないか?」
 「何だと!!?」
 「うぐっ!」
 ベッドにある枕を掴んで、鈴は思いっきり一夏の顔へ投げ付けたのだった。


 一方、向こうの部屋では、あかりが消えていた。
 薄暗くて静かな部屋の中、ベッドが揺れる音と甘い喘ぎ声だけが小さく響く。
 四角に切り取られた淡い月光に照らされ、絡み合う雪のような白い肢体に青年が指を這わせ、下にいる女性は敏感に声を上げながら、シーツを握り締めて体中に奔る快楽の衝撃に身悶える。

 「やっぱセシリアって、ベッドの上に居る時が一番可愛いよね」
 「はぁ……はぁ……もう……変なことを……言わないでください……」
 「こんな敏感になってるなんて。いやはや、手を繋いだだけで気絶してしまうあの頃のセシリアはどこに行ったのやら」
 「ぜん、部……クリスさんのせい……うっ……ではありませんか……!」

 荒い呼吸の合間に片言のような返事を返しながら、セシリアは愉悦の海に溺れぬように目を瞑って、必死な表情で唇を噛み締める。
 そんな頑張ってる彼女の姿を、クリスは堪らなく愛おしく思った。一旦責めを止め、彼女の額に薄く浮いた汗を手で拭いた後、かかった髪を掻き分けてセシリアの頬と耳にキスをした。

 「はぁ……はぁ……クリスさん?」
 焦点の合わない潤った目から蕩けたような視線を送ってきながら、薄く開いた唇から甘い息と共にセシリアが呟いた小さな声を聞こえたクリスは、彼女の耳元で囁く。

 「愛しているよ、セシリア……っくうっ!!」
 繋がっている体の芯から、セシリアの純粋な嬉しさがダイレクトに伝わってくる。
 危うくカウンターを喰らうところだった。眉を顰めて何とか体の共鳴を耐え抜き、クリスは口元を吊り上げてわざと怒ったような表情をして、顔が真っ赤なセシリアを睨んだ。
 たっだの一言でここまで悦んでくれてるのか。本当、可愛いやつめ。

 「不意打ちとは、卑怯なり」
 「だって~! クリスさんがいきなりあんなことを言いますから~!」
 「問答無用だな。アタッカー&リベンジを同時発動したお仕置きだ、覚悟しろよ?」
 「ええええっ!!」
 セシリアの耳元に口を近づけて懲罰宣言しながら、クリスは手を彼女の太ももの側面に添えて、ゆっくりと撫で回す。体から力が完全に抜けている彼女に、抗う術がない。
 そもそもよく見ると、見つめてくるその切なそうな瞳の奥には、情欲の炎が揺らめいていた。
 このドMっ子め。抵抗ところか、超期待をしているな?

 「よし、ならツイン精神コマンド『連撃』!! SPが尽きるまで落とし続けるぞ!! 因みに俺はSPアップLv9だからな!」
 「そんな使い方、絶対間違ってますわよ! ちょ、い、いきなりそんな、激しいすぎますわ~!!」
 穏やかだった風が一瞬で暴風へと変わり、女として男に求められる悦びの激流が神経末端を衝撃して彼女をピークへ押し上げていく。クリスの首の後に手を回して、セシリアは彼を力いっぱいぎゅっと抱き締めた。

 「やれやれ、とんだ甘えん坊だな。でも……」
 可愛がっている恋人の上半身を抱き上げて、クリスは彼女の背中に広がっている長い髪を指で梳きながら、その白い首筋に口元を寄せて自分の刻印を刻み付ける。
 爆発しそうな快楽と僅かな鋭い痛みに、セシリアは喉を晒して甲高い喘ぎ声を上げた。

 「……ありがとうな、セシリア」
 激しい行為を通して、互いが求め合い溶け合う中、セシリアへの感謝の気持ちを零しながら、自分が刻んだ印を見て小さな満足感に浸っているクリスはギアを上げて行き、セシリアもクリスの求めに応じるように彼を深く受け入れる。


 セシリアはクリスを必要としている。
 没落した家から追放され、行き場を失い軍に入ったばっかりの頃の彼女は、まるで死を急ぐような目をしていた。
 そんな彼女の射撃腕を見込んで、別部隊から引き抜くように上司へ進言した後、さらに自分の愛情を注ぎ込んだクリスのお陰で、彼女はもう一度立ち直った。
 今では四六時中クリスにべたべたしてくるセシリアにとって自分の帰る場所は軍でも部隊でもなく、クリスの隣だ。

 そして同様に、クリスにとってセシリアは掛替えのない存在になっている。
 バイトで溜め込んだすべての金を使い尽くしても、恩人の病気を治せなかった。最後に娘と会いたいという願いですら、叶えてやれなかった。
 段々と冷たくなっていくその手を握り締めて、恩返しの一つも出来ない自分の不甲斐なさを悔みながら静かに涙を流すしかできなかった。
 誰も帰ってこない家なんて、もう要らない。もはや自分は、軍隊にしか居場所がない。
 幸いなことに、命の奪い合いをしている時とセシリアを愛でる時だけ、不思議なくらいに落ち着く。
 セシリアは自分にとって最後の人間性の証かもしれない。
 彼女が居なければ、自分はただの殺戮マシンになってしまいそうだ。
 でも、オルコット家の復興なんて真っ平御免だ。平和な生活はあの幸せだった頃を思い出させてくれる。
 そんなの、苦痛なだけだ。
 セシリアが自分への気持ちは本物だと分かっていても、彼女の願いを叶えてやれない。ならせめて恋人として、彼女を支えていこう。

 そう、手のひらを合わせて共に頂点へ昇る今この瞬間のように。


 「ねえ、クリスさん?」
 「うん?」
 荒れていた呼吸を整えた後、セシリアはクリスの腕に頭を乗せて彼の名を呼びながら、手で自分の腹部をゆっくりと撫でる。
 その穏やかな微笑みは、まるで我が子を慈しむ母のようだった。

 「クリスさんは……男の子と女の子、どっちが好き?」
 「……おい、まさか」
 「何ですかその汗まみれの顔は!?」
 「いや、だってさ……」
 まだ軍に居たいし、子供とか好きじゃないし、本当なら流石にセシリアを軍に残らせるわけにも行かないし。

 「酷いです……責任は取らないおつもりですね!!」
 「……べつにそういうわけじゃ」
 「分かりました。一人で育てますからクリスさんはこの子の存在を忘れて頂いて結構です」
 「くっ……わ、分かった。責任は必ず取る。今までの給料は全然使ってないから、子供一人や二人くらいなら……」
 「……くすくす」
 子供が苦手でも、責任から逃げるわけにはいかないし、なによりセシリアを悲しませたくない。覚悟を決めて、クリスはセシリアと向き合って自分の考えを告げるが、なぜか彼女はクリスの顔を見て幸せそうな笑い声の漏らした。

 「冗談ですわよ、クリスさん」
 「……おい」
 「でもクリスさんが責任を取ってくださるのなら、これからは……って何をしますの!?」
 「何を、だと? 決まってるだろう。反撃だ!!」
 「きゃっんぅ……んぅ、んん……ちゅ……ちゅぶ……!!」
 セシリアの嬉しい悲鳴が部屋に響く前に、クリスは彼女の唇を塞いた。そのまま舌を絡めて、クリスは彼女の理性を責め崩す。
 この部屋の防音性能はあまり頼りにならない。大声を出して人に聞かれたら明日は顔を合わせ辛い。
 とくに向こうは一夏の部屋だ。高い確率で箒か鈴がいる。