二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【かいねこ】桜守 前編

INDEX|13ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

掃除が終わりに近づいた頃、玄関先で人声がする。
笹井様を呼ぶ声に慌てて駆けつけると、案の定竹村様といろはがいた。酷く傷ついたいろはの姿に、驚いて足を止める。

「竹村様」
「ああ、カイトか。すまないが、笹井を呼んできてくれないか。見ての通り、かなり酷い怪我なので」
「竹村!!」

竹村様の声を遮るように、罵声が飛んだ。
振り向けば、階段の上から笹井様がこちらを睨んでいる。

「お前、何度言えば」
「違います。私が勝手にしたことですから」

いろはが傷ついた体で、一歩前に出た。
笹井様が何事か言おうと口を開くが、

「静かにしろ」

その場に響いた藤林様の声に、場が静まる。
藤林様は竹村様に近づくと、

「いろはは預かる。お前は帰れ」
「しかし」
「お前がいると、笹井が集中できない。何度も手を煩わせている自覚があるなら、邪魔をするな」

藤林様の言葉に、竹村様は唇を噛んで俯いた。

「すまない。俺がきちんと見ていれば」
「済んだことだ。今日は帰れ。明日以降連絡する」

竹村様は暫し躊躇った後、階段の上にいる笹井様に頭を下げる。笹井様は何も言わず、冷ややかな目で竹村様が出ていくのを見下ろしていた。

「いろは、来なさい。カイト、手を貸してやれ」
「はい」

刺々しい声に、相当腹に据えかねていることが分かる。背を向けて部屋に戻っていく笹井様の後ろ姿を見送り、俺はいろはの手を取った。

「随分無茶をする。先日のことがあったばかりなのに」
「すまない。また怒らせてしまったな」

ふらつくいろはの体を支えながら、ゆっくりと階段を上る。痛ましいその姿に、妖魔に襲われた時の光景が蘇った。
振り下ろされた鋭い爪と、噴き出す鮮血。ゆっくりと崩れ落ちる小さな体。


もう、あのような光景は見たくない。


今度こそ、守りたいと思った。



作品名:【かいねこ】桜守 前編 作家名:シャオ