二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【かいねこ】桜守 前編

INDEX|14ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

いろはを笹井様に引き渡し、掃除用具を片づける。
何か言いつけられたらすぐ駆けつけられるようにと、階段下でぐずぐずしていたら、

「カイト」

笹井様の声に、急いで二階へ駆けあがった。

「はい、ここに」

扉から顔を出している笹井様に、声を掛ける。

「手当ては終えた。昨日の部屋に連れていってくれ。明日の朝、もう一度点検する」
「はい」

笹井様は何かを言い掛けて、はーっと息を吐くと、部屋の中に戻り、いろはを連れてきた。

「今度は、勝手に出て行かせないでくれ」
「承知しました」

いろはを俺に渡すと、笹井様は黙って扉を閉める。
気まずそうに俯くいろはの手を取り、「行こうか」と促した。



昨夜、いろはを泊めた部屋に入る。
ベッドに大人しく腰掛けたいろはに、俺は「手伝わせてくれないか」と言った。

「何を?」
「妖魔を倒す手伝いを。お前一人では無謀すぎる」

いろはは俺を見上げ、

「無理だ」
「何故?」
「「化粧(けわい)」は、女の人形にしか使えないのだ。私は他の術を知らぬから、お前に教えることも出来ない。それに、お前まで巻き込んでしまっては、笹井様に申し訳が立たぬよ」

そう言われては、引き下がるしかない。
他に妖魔に対抗する術も思いつかず、

「ならば、せめて言うことを聞いて、大人しくしててくれ」

それだけ言うのが精一杯だった。
いろはは俺の言葉に頷き、

「そうだな。笹井様には迷惑を掛け通しだ。いい加減にしろと、言われても仕方がない」
「いや、笹井様はそのような方ではないよ」
「ああ、そうだな」

ふと笑みを浮かべると、こちらを見上げる。

「あの方のような主人を持って、カイトは幸せ者だな」
「・・・・・・・・・・・・」

何故そのようなことを言うのだと、問い詰めたい衝動が沸き起こるが、今は彼女に負担を掛けたくなかった。

「そうだな・・・・・・俺は、良い主人を持った。手は掛かるが」

俺の言葉に、いろはがころころと笑う。
この様子なら大丈夫だろうと、俺は何かあれば声を掛けるよう言って、部屋を出た。


さて、そろそろ夕飯の支度をしなければ。


台所へと向かう途中、階段の下で二階を振り仰ぐ。
誰も出てくる気配がないのに安堵して、俺は台所へ向かった。


作品名:【かいねこ】桜守 前編 作家名:シャオ