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【かいねこ】桜守 前編

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いろはは三日間滞在した後、竹村様の元へ帰っていく。
笹井様からかなりきつく叱られたようで、さすがにしおれた様子だった。
いろはには、藤林様から魔道書を渡されたことを言っていない。言えば、余計な心配を掛けてしまうだろうから。
笹井様は部屋に籠もりっきりなので、こちらも特に話はしないでおいた。今はまだ、何も身に付いていない状態なのだから。



柿野さんの手伝いを終えてから、自室で魔石作りの練習をする。藤林様からは、まず基礎を身につけ、魔力への耐性をあげろと、再三指導されていた。
まず魔石を作ること自体が想像以上に難関で、少しでも気が逸れれば失敗してしまう。何とか作れる様になっても、『術を使えば反動がある』と言われた通り、小指の先ほどの魔石を作っただけで精根尽きてしまった。


こんな様で、妖魔に対抗することが出来るのだろうか。


ふがいなさを感じながら寝台に横たわり、渡された魔道書をめくる。魔道の基礎となる事柄が解説されていて、人形の作成方法にも触れられていた。人形の核に拳大の魔石が必要だとあって、気が遠くなる。


笹井様は、身を削る思いで人形を作られていたのだな。


貧しさから人形遣いに売られ、生きるために人形を作らねばならぬ。そうまでして作った人形は、道具として扱われ、簡単に打ち捨てられる。何度修繕しても傷ついて戻ってくるいろはを、あの方はどのような思いで迎えているのだろうか。いつも暢気に笑っているだけだと思っていた主人の苦悩が、垣間見えた気がした。



何度も繰り返すことで、少しずつ安定して魔石を作れるようになる。大したことのない大きさだが、極度に消耗することもなくなり、これならば近いうちに具現化の術へと進めそうだった。


作品名:【かいねこ】桜守 前編 作家名:シャオ