【かいねこ】桜守 後編
「いろはに代わって、竹村の身辺を探っていたが、奴も用心深いからな。なかなか証拠が掴めず、行き詰まっていたんだ。下手に動けば、いろはの身が危険だからな」
いわば、いろはを人質に取られているような状況だったのか。だからこそ、藤林様は強硬に止められなかったのだ。疑いをかけていることを知られれば、何をされるか分からないから。
「お前が散々引っかき回してくれたからな、竹村も焦ったのだろう。自分から尻尾を掴ませてくれた」
「す、すみません・・・・・・」
「まさか、お前が妖魔退治に参戦してくるとは、計算外だっただろうよ。だが、お前がいたおかげで、いろはを助けられた。礼を言う」
「いえっ、とんでもありません」
慌てて座り直し頭を下げると、藤林様はにやっと笑う。
順調に減っていく大福の山を見ながら、理由はそれだけではないだろうと感じ、俺は思いきって疑問を口にした。
「藤林様は、いろはの言葉だけで、疑いをかけられたのですか?」
「いいや。その前から、薄々おかしいとは感じていたんだ。いろはが引き取られてから、やたらと妖魔が人里に現れ始めたからな」
藤林様は、そうそう都合良く、妖魔が人里に現れるはずがないと言う。
「お前も、実際に襲われるまで知らなかっただろう?確かに、妖魔は桜の匂いに酔う。だが、桜なら山にもあるからな。危険を冒して人里に降りてくるのは、ごく少数だ」
確かに、妖魔が出現するのは、決まっていろはが駆けつけられる場所ばかりだった。その不自然さに気付けなかったことが、少し気恥ずかしい。
作品名:【かいねこ】桜守 後編 作家名:シャオ