【かいねこ】桜守 後編
「いろはを守る為とはいえ、警告も出来ず、少なからぬ被害を出してしまったことは、心苦しく思っている。誰にも何も言えぬと言うのは、辛いものだな」
藤林様の言葉に、ふと柿野さんが隠し通路を教えてくれたこと、山吹様の死について話した時の事を思い出す。
『守っておやり。お嬢は妖魔に対抗する力は持っているけれど、あの子の武器はそれだけさ』
「柿野さんは、ご存じだったようですよ」
俺が言うと、藤林様は一瞬目を見開いてから、ふっと笑い、
「昔から、あいつにだけは隠し事が出来なかったな」
と言った。
「笹井とも話したが、いろはは私が引き取る。他に手がなかったとはいえ、あの子には辛い思いをさせた。これからは、落ち着いた暮らしをさせてやりたいな」
藤林様の言葉に、俺は頷く。
この方なら、いろはを大切に扱ってくれるだろう。
「いろはが、あの時、よく思いとどまってくれたと思います。どのような理由があろうと、人を手に掛けた人形は、処分されてしまいますから。藤林様にも、ご迷惑をお掛けしてしまうでしょうし」
「・・・・・・・・・・・・」
「え?あの」
藤林様は、大福を持った手を止めて、まじまじと俺を見てきた。
何かおかしなことを言ってしまったかと考えていたら、藤林様は「ふはっ」と笑い、
「お前は、主人にそっくりだな」
やたら「そっくり」に力を込めて言うと、残っていた大福を一度に平らげ、さっさといなくなってしまった。
何だったんだ・・・・・・。
作品名:【かいねこ】桜守 後編 作家名:シャオ