【かいねこ】桜守 後編
屋敷の裏手から庭に入る竹村様。
一体何をしているのだろうと注視していたら、植え込みの陰から数体の妖魔が姿を現して、思わず声を上げそうになった。
口元を手で押さえながら、状況を見守っていると、姿を消したと思った妖魔が現れ、他の者と合流する。妖魔の群を植え込みに隠し、竹村様は玄関へと向かっていった。
一体、何を・・・・・・。
胸騒ぎがして、俺は妖魔に気づかれないよう館の裏に回る。
以前、柿野さんから聞いていた、隠し通路の出口へ向かうと、一体の妖魔がうろついているのに気が付いた。
・・・・・・ここで引く訳にはいかない。
俺は一旦角に身を隠すと、目を閉じて意識を集中させる。一振りの刀を思い描き、己の魔力をその姿へと変化させた。
手の中に、ずしりと重い感触。目を開ければ、ぬらりと光る刃がそこにあった。
そっと頭を出して、妖魔の姿を確認する。躊躇っている暇はない。
妖魔が俺に背を向けた瞬間、素早く走り寄ると、その体に刃を突き立てた。妖魔が振り向き、腕を振りあげたが、構わず刀を斜めに引き上げる。
「ぐっぎゃああああああああああああ!!」
断末魔の悲鳴を上げて、妖魔が倒れ伏した。
同時に、俺も全身の力が抜けて、その場にへたり込む。
これが・・・・・・これが、妖魔の感触なのか。
俺は・・・・・・俺が、自分の手で倒したのか。
手は震え、体に力が入らない。具現化した刀はとうに消えていたが、未だにその感触は残っていた。
いろはは・・・・・・いろはは、一人でこれを。
彼女の姿を思い出し、自分で自分の頬を叩く。
呆けてる場合かっ。他の妖魔に気づかれる前に、中に入らねば。
俺は急いで植え込みに近づくと、巧妙に隠されている扉を引っ張り、薄暗い通路へと体を滑り込ませた。
作品名:【かいねこ】桜守 後編 作家名:シャオ