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零崎空識の人間パーティー 7-12話

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 空識は哀川潤が言った言葉を思い出しながら京都の町を歩いていた。
「あんな事をしてから、信頼なんて言葉が自分に掛けられるわけないと思っていたんだけどなー。ホントに潤さんは身内に甘いなー」
 そうぶつくさ言いながらも空識の顔は自然と綻んでいた。
 そのことに空識は気づいていなかった。
「……しかし、本当にこんな所にアパートがあんのかー? 曰く付きな物を売っている店がありそうなんだがー……」
 空識は京都の町を歩いている、しかし今は世間一般の京都の町のイメージから遠くかけ離れ、さらには路地裏と言うことさえおこがましいような、建物と建物のただの間隙、裏通りのさらに裏の裏、そんなところを歩いていた。
「《戯言遣い》の『いーたん』さんが住んでアパート場所ってこれであってんだよなー?」
 哀川潤に渡された住所が書かれているメモを見ながら空識があきらめず歩き続けていると、奥まった行き詰まりに、京都の町を漠然と歩いていたらまずたどり着けないような、隅の隅みたいな、隙間を縫うようなかんじで一つの骨董品みたいなアパートがあった。
「おおー、マジで在ったよー。やばいなー、ちょっと感動して、ウルルン滞在記のナレーションのものまねをやりそうになったよー。まっ、別に出来ないんだけどねー!」
 と、意気揚々とアパートの中に入ろうとしていた空識は、後ろから声を掛けられた
「なんのようだ?」
 空識が振り向くと、甚平姿の、妙に凛々しい武士のごときポニーテイルの女性が立っていた。
(ふうん~。こっち側の世界の人ではないけど、ずいぶんと変わった人だなー。)
 と空識は甚平の女性を見て感じた。 
「だから、この家に、なんのようだ?」
 短く区切るように繰り返される質問にやっと空識は自分が怪しがられていることに気づき、答えた。
「ここに住んでいる『いーたん』さんに用事があって来たんですー」
「……いの字にか?」
 甚平の女性は明らかに信用していないといった表情を浮かべた。 それは家族を危険にあわせたくないと思う人の顔でもあった。
 そういえば、この人このアパートのことを家って言っていたな。 一つ一つの部屋を家と言うならともかく、集合住宅そのものを言うのにはあまり使わない言葉だな、ということはこのアパートに住んでいる他の人と家族みたいな付き合いをしているのかな。
 と、そこまで推理してみて、空識は思った。
 『家族』かー……。 
 俺が『零崎一賊』の中で異常というのは分かる。 
 だけど、俺は『殺人鬼』『零崎』においては誰よりも正常だと思っている。
 第一、自分以外の全員を殺す事が存在意義である『殺人鬼』『零崎』が徒党を組み、『家族』だなんて矛盾している。
 おかしい。
 笑える。 
 他の『零崎』もそのことをおかしいと思っている。
 のにけっして否定をしたりしない笑ったりしない、それが俺には理解できない分からない……。
「――おい。話を聞いているのか?」
 どうやら空識が上の空になっている間いる間に甚平の女性は何度も話しかけていたようだ。
「すみません、少し考え事をしていましたー」
 と空識が謝ると甚平の女性は、
「浅野みいこだ」
 と言った。
「………?」
「だから、私の、名前だ。おまえを、信用してやる」
 よくはというか全く分からないが、この人、浅野みいこは空識の言葉を信用することに決めたそうだった。
「俺は、ゼロスカイと言いますー」
 と空識は哀川潤の仕事をしているときは《無陽無陰(ゼロスカイ)》の方を名乗ると決めているのでそっちを名乗り返した。
 その明らかに偽名というか本名でない名前を言われても浅野は動じず気にせず、「そうか」とだけ言った。
「ではまたー」
 と空識が言うと、浅野は出かけるつもりだったらしくそのままどこかに行った。
 そして空識は、浅野の甚平の背中に白字で書かれていた『達観』を横目で見ながらアパートに足を踏み入れた。

<第十話 零崎対面>

(まあ、なんというかー)
(……とんでもない人だなー)
 空識は『戯言遣い』に対しての第一印象でそう思わざるえなかった。
 この世界で生き始めてから、数多(あまた)の有象無象(うぞうむぞう)を見てきたけど、この人はそれと比べても全く遜色(そんしょく)ない。
 潤さんが言い淀むのも分かる。
 俺はこの人のことを言葉で表現することが出来ない。
 いや、十九歳の死んだ人間みたい目をした少年だとかの外的表現をすることは可能だけど、一歩この人の内面を表現しようとなると、もう無理だ。
 いや、一つだけなら表現することが出来る。
(ああ、あの人に似てるんだー)
 俺に似ているけど全く似ていない、あの刺青の『殺人鬼』にそっくりなんだ。 そっくりだけど左右逆だけど。
(『だけど』連続はおかしいだろー)
 空識は自分自身に突っ込むことで『戯言遣い』に飲まれそうだった心を立て直した。
「初めまして『いーたん』さんー。俺はゼロスカイと言いますー。哀川潤さんの使いで来ましたー」
「……哀川さんの?」
 そんな反応見せた後「どうぞ」と戯言遣いは空識を部屋の中に招き入れようとした。
「すみませんー。『いーたん』さんに直接的な用が在るわけではなくてー。玖渚友さんに用があるんですー」
「玖渚に?」
「はいー。友さんにこのCDを渡して欲しいと言われましてねー。それであなたに会っておいた方が良いと言われましたのでー」
(頼まれたというか、無理やり命令されたんだけどねー)
「それで、玖渚のところまで付いてきて欲しいということだね」
「そういうことですー」
 少し考えるようにした後、戯言遣いは、
「ちょっと、待ってて、出かける用意をするから」
 と言った。
「分かりましたー。アパートの前で待っておきますー」
 そして、空識は戯言遣いの部屋をあとにした。



(『いーたん』さんねぇー。危険な気がするけど、じっくりと話してみたいなー)
 浅野さんに『戯言遣い』、もしかしたらこのアパートには変人が集まっているのかもね。
 そう空識が考えながら歩いていると、
「戯言遣いのお兄ちゃんになんのようですか」
 突然、首筋にバタフライナイフを突き立てられた。
「……なかなかに情熱的なアプローチだねー。だけど、俺はロリコンじゃないから、君みたいな女の子はストライクゾーンじゃないんだよねー」
 空識はバタフライナイフを突きつけているワンピース姿のおかっぱ頭の少女。
 もとい美少女に向かっておどけてみせた。
「ふざけないでください。私がその気になればあなたはすぐにこの世とさよならするんですから。
もちろんあなたが反抗の意志を見せても同じですから」
 そんな少女、じゃなくて美少女の脅しを気にせず、空識はぶつくさと独り言を呟いていた。
「……やっぱり、双識さんの冗句を真似するのはだめだったかー。というよりつまんないかー」
「私を無視しないでください」
 そのことに美少女は怒りバタフライナイフを少し首筋に食い込ませた。 皮膚が裂けそこから血が垂れてきた。 
 それでも空識は気にせずおどけたまま言った。
「ああ、ごめん『闇口』のお嬢さん」
「!?」