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GO NEXT! -最強魔道士達と最強戦士の珍道中膝栗毛!?

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「って事は、あいつそのためにあんなカッコをして、城に向かったってわけか?」
「ホントかよ?」

 リナには強力な魔力容量(キャパシティ)だけでなく、かなりの推理力と洞察力をもつ。しかし、彼女の性格のために偏見で決めつけられるパターンが少なくなかった。そのため、保護者の彼は納得出来なかった。

「それしか考えらんない!! だってアメリアはあたしに絶対服従を誓ったはずだもん!!」
「いつ誓ったんだよいつ!?」
「さっきリナはそう言ってたな」
「ええっ!!?」

 ガウリイは困惑しながら突っ込みを入れた。

「とにかく!! 今はアメリアを助けてやんなきゃ!」
「ええっ!!?」
「何よ? 今度は?」
「いや…。なんか珍しくまともな事を言ったなって…」

 その一言を言った途端、ガウリイはリナに背後から強く両頬を抓られた。

「あたしだってたまにはまともなこと言うわよ!!!」
「痛いたいたいたい、あ〜〜〜っ…!!!」

 リナはパッと離し、拳を握りしめた。

「それに!!」
「それに?」
「あの子はあれでも一応セイルーンのお姫様なんだから!! うまくいけば、手をまわしてゾアナの魔道書を優先的に見せてもらえるじゃない!!」
「あのぉ…。さっきからなんだ、そのゾアナの魔道書って…?」

 今度は屋台の売り物に顔を叩きつけられた。悟空は困惑していた。

「も〜〜〜〜〜っ!!! 何回も説明したでしょうがこの脳みそヨーグルト男!!!」
「食べます?」
「いらないよっっ!!!」
「それじゃあオラが―」
「わざわざノラなくていい!!!」

 そういうショートコントはさておき、リナは眼を輝かせながら、またゾアナの魔道書を説明することにした。
 この世界で最も有名な魔道書の一つに“異界黙示録(クレア・バイブル”が現存し、しかもその内容は魔王の復活などに関わる事項が明記されている。ゾアナの魔道書はそれに匹敵するような代物で、ここの王国に保管されている。ちなみにそれは50年に一度王室にて限定公開されるようになっている。丁度今が50年たった日である。
 リナはそれが目的でゾアナ王国にこの上なく行きたがっていたのであった。

「ふ〜ん、そのゾアナの魔道書っちゅうもんを手に入れて、魔族を倒す方法を見つけるってことか」
「ってこと。わかった?」

 リナはもうこれで理解しただろうと思い、彼に確認を取った。

「あっ、すまん。聞いてなかった」
「“炸裂弾”!!!」
「どえええええええっ……!!!!」

 またもやリナはその呪文を使い、ガウリイをお仕置きしたのであった。

「あのなぁ、ちっとは手加減てぇのを…」
「うるさい!! これが彼に対するあたしなりの調教なのよ!!!」
「ちょ…、調教…?」

 一瞬、本当に保護者と子供との間の均衡が成り立っているのかと少し混乱した。

「さて、つべこべ無駄話してないでゾアナの魔道書を見に行くわよ!!」
「お、おい…!!」

 悟空はマイペースのリナを追いかけていた。一体どっちが重要なのかさっぱり分からなくなってしまった彼であった。

***

 アメリアは2人の家来と共に、巻物を持ちながら入城した。
 扉が開くとそのまま渡り、廊下に沿って歩きだした。
 フィリオネル王子はモロス国王との間にある用事があり、そのためにアメリアを派遣して果たそうとしたのだ。彼女はやる気満々であった。
 ただ、一つ懸念している事があった。リナのことである。

―あ〜あ…、リナさん達に悪い事しちゃったかなぁ…? でも、今回私はセイルーンの外交特使として来てるんだし! そんなとこに騒動と破壊の象徴であるリナさんに首を突っ込まれたら、それこそ戦争になりかねないし…!

 もしかしたら、自分の事でリナ達が駆け付けて来るのだろう。自分の代わりに、過剰なお返しを仕出かしてくるのだろう。それを封切りに戦争を好まないセイルーンが弦を持たなければならないのだろう。そう不安を抱いていたのであった。
 彼女は知らない。まさにそうなりそうになるとは。
 彼女が気付くと、もう王室の扉の前にいた。そこにいる家来がゆっくりと扉を開けると、中から吹奏部による歓迎の曲が鳴り響いた。その中を彼女は渡っていった。
 彼女が玉座の前で立ち止まり、座っているモロスが手を上げると演奏は止まった。そして彼から口を切った。

「これはアメリア殿、遠い所をよく来た」

 モロスが念を押す。アメリアはため息をつくと、巻物を広げモロスにバッと見せた。

「モロス国王、上意である!! 貴国が我が国との約束を大きく違い、著しく兵力を増強しているのは明白!! よってこれ以上軍の拡大を続けるならば、正義の名のもとに、セイルーンは貴国を敵対国家と見なします!!」

 それを聞いた家来や兵士達はざわめき始めた。

「アメリア殿、我が国の軍備はあくまで自衛のための―」
「お黙りなさい!! 自衛のための軍備であろうとも、他の国が脅威となっているのは確か!! それにより、国と国の間にいらぬ緊張が高まり、何れはどこかで争い事が起きましょう…! そうなった時、いかに責任を取るつもりか!!」

 彼女の持論は説得力が高く、内容もまた事実であった。彼の顔からは焦りの色が出始めていた。

「あっはははははは!!! あっはははははは!!!」

 マルチナが今のやり取りを聞いて笑い始めた。王室にいる全員が、シャンデリアに乗っかっている彼女をすぐに見た。

「とおっ!!!」

 マルチナは大きくジャンプし、そのままゆっくりと降下した。全員が彼女を目で追っていく。

「うわぁっ…!!!」

 しかし、着地は見事に失敗した。派手に頭から地上に叩きつけられたのだった。

「ひねりが甘いです!! 着地の時はこう回転を加えて―ぐわっ…!!!」

 そう忠告して実践するも、アメリアもまた頭ごと地面にぶつけた。

「あんたに指図される意味合いはないわ!」

 マルチナは罵倒した。気を取り直して彼女は次のように宣言した。

「責任は我が国が、この世を支配することで取りましょう」

 彼女の言葉を聞いたアメリアはゆっくりと立ち上がり、彼女と目を合わせた。

「この世を支配ですって…!?」
「その通り。そしてこの世を魔人ゾアメルグスターに捧げるのよ!」

 マルチナはゾアメルグスターのレリーフを誇りよく見せながら宣言した。むしろ、明らかに今のところ、マルチナとモロスの立場が逆転していた。
 モロスは今の発言に動揺を隠せなかった。

「いやぁ、わしはただ世界征服がしたいだけなんだけど…」

 彼は念のため、こう補足を付けた。

「いずれにしても、私の野望の一番の邪魔になるのは、セイルーンよ!」
「この世を支配し、怪しげな魔人に捧げようとする野望、それはつまり悪!! 天が許しても、このアメリアだけは許さない!!」

 両者一歩譲らず。

「言ってくれるわね!! 皆の者、この小娘を取り押さえなさい!!」

 すっかり兵士にアメリアを取り押さえるよう命令するまでにいった。するとモロスが彼女に寄り縋った。

「あくまでも王はこのわしなのだぞ、マルチナ…」
「お父様は黙ってて!!」
「あ、はい…」