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GO NEXT! -最強魔道士達と最強戦士の珍道中膝栗毛!?

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5.完全無欠に一撃!! テキトーすぎる魔道士ロン!!



 ある街中、その中にあの男がいた。全く見慣れない服を着て。
 彼を知る者は誰もいない。ただの黄昏者である。そんなことはどうでもいい。
 彼が旅をしているのはただ何となくである。ふと旅がしたくなったという単発的な欲によって動かしたのであった。何の目的もないが、目的がないことでただ自由奔放にどこでも行くことができ、自分の知らない事を経験することができる。
 また魔道士でもある。先ほどのように、杖付きでも、素手でも、両方の手段で呪文を発動することができる。また、魔族の事も知っている。しかし、これに関してはこの先の出来事につながる事柄なので、説明するのはやめておこう。
 ある時、金を求めるボロ布の女を見かけた。建物の日陰で、奇妙な顔をしているお守りを、まるで大事にしているかのように強く胸に抱いていた。彼女の前に置かれているのは、あちこち罅があってもう使い物にはならない茶碗である。その中には数枚金貨か銀貨が入っている。

―哀れなヤツだなぁ…。

 男はコートのポケットから金貨一枚を取り出した。左手の親指の上にのせ、ピンと音を鳴らして高く上げた。そして、そのまま彼は去っていった。
 彼が飛ばしたコインは回転しながら、貨幣の山の上に一回跳ねて乗っかった。その音に動じて女は茶碗の方にハッと目を向けた。
 すぐに茶碗の中を確かめ、今増えたか増えていなかったか確認した。その瞬間、何故か茶碗が真っ二つに割れ、コインがあちこちに転がっていった。

「ひゃあああああっ!!!! 泣く泣く腰を低くして貯めた私の資金がぁぁっ!!!!」

 彼女は慌ててコインを拾った。その周辺での人々は白眼で見ていた。金を一度見ると必死になるほどの困窮さであることが、彼女の容貌を一目見ただけでわかったからであろう。

―なぁに…、世の中にいい事もあれば悪い事もあるさ…。

 彼はニヤリと影で笑みを浮かべながら、何も無かったかのようなオーラを醸して去っていった。そもそも、ちょっとした悪戯をする気は彼にはあったのだが。

―待てや…。"資金"とはなんだ…? …ま、オレとは無縁のことだろ…。

 男は混んでいる喫茶店を訪れ、ベランダにて、男は椅子にもたれて座っていた。

「ふわぁぁ…」

 欠伸をかいていた。紅茶を一杯飲んだはずなのに、自然に喉の奥から漏れてくる。
 先ほど“異界黙示録”を求めて旅をいるリナ達を見かけて、少しずつ気になり始めていたのであった。

―あのリナという魔道士は何の名目で、あの魔道書を手に入れるつもりなんだ…?

 頬杖をつき、歩きまわっている人々を眺めながら推理していた。しかし、何も思いつかない。

―よくわからん…。だが、追ってみる価値はありそうだ。何かこの世界で不穏な動きがあるそうだしな…。

 紅茶を飲み干し、テーブルにお金を置いておくと立ち上がった。

―やれやれ…。オレは旅を楽しんどるというのに…。あいつめ…。

 八つ当たりする男。
 気楽に旅を続けたかったのだが、とある事情を思い出したことによって、早速彼女達を追うことにしたのだった。彼は一度興味を持ったものをそのまま受け流すことができない。そのまま野放しにすればムカムカしてくる。
 杖をつきながら喫茶店を後にした。ウェイトレスが通ってきたが、次の瞬間、階段が坂になり、その人は足を外して転げ落ちた。

「おわぁぁぁっ…!!!」

 男は立ち止まり、振り向いた。こういう悪戯をついしてしまう癖があったのだった。
 それを聞きつけた店長らしき男性が現れ、仁王様みたいな顔つきをした。

「こらぁぁぁっ!!! 足元に気をつけろ!!」
「違うんですよ店長!!! 今階段が……ってあれっ…?」

 店員が階段を確認した時には元に戻っていた。

「階段がどうした?」
「おかしいなぁ…? 今坂道になってたはずなのになぁ…」
「アホ! 階段が坂になるなんてそんな…どわぁぁぁっ!!!」

―へへへへ……。

 男は口の両端を緩めて微かに笑い、また杖を強く地面に突いた後歩き始めた。

***

 一方リナ達は“異界黙示録”を求め、次の地へと旅を続けていた。しかし、今のところ状況は平行線のままだ。

「てか、これからどうすんだ?」
「どうするのなにも…、まず、とんだ邪魔が入ったってことよ!! そいつに横取りされないうちに、とっとと“異界黙示録”を手に入れないと…!!」
「だが…、あの時あいつに攻撃呪文を発動したが、明らかに結界を張っていた。ということは、奴もまた魔道士かもしれん…」
「そんなのアタシだって承知の上よ。あんな唐突にアタシ達の前に現れたり消えたり…」

 唯一変わった事は、ゼロスという不気味な青年が顔をつっ込んで、同じくそれを狙おうとしていることだ。ゼロスがまた何か干渉してくるに違いない。その時は“竜波斬”をぶっぱなして彼を懲らしめよう…。リナはそう心に決めていたのであった。

「ところで私達、今どこに向かってるんですか?」

 するとリナが一歩前進もうとするポーズのままで止まった。彼女は振り向いた。

「き、決まってんじゃないの! 情報収集のためにあちこち回るのよ!!」
「あちこち回る…、そんなの時間の無駄だ。何の段取りも無く、転々と彷徨って物色するなど…。このままでは、ゼロスに先を越されるのも無理はないんじゃないのか?」

 ゼルガディスは、彼女のカムフラージュに構わずに、重箱の隅をつつくような一言を漏らした。

「邪魔が入ったんじゃあなぁ…。確かに今のペースだと、写本取られるのは時間の問題かもな。でも、あいつなんか変な気が出てたんだよなぁあの時…」
「仕方じゃないの…!! じゃあアンタに何か案でもあるってわけ!?」
「おやおや…。そこらにお困りのアホどもがおるわ」

 聞きなれない声がしたので、一行はその方を向いた。そこには男が大きな岩に杖をついて座っていた。

「アホどもとは何よ!! 誰なのそこのアンタ?」
「なぁに…、オレは見ての通り、通りすがりのさすらい魔道士ってもんよ…」

 自分の顔を指差しながら、そう答えた。しかし、魔道士にしてはリナ達よりも見窄らしい格好である。

「魔道士…?」
「あちゃ〜、こりゃまた胡散臭い人がお出ましみたいね…」

 ゼロスの次で出会った人も魔道士か…。リナは片手で顔半分を覆ってそう言った。
 男は岩を滑り台のようにして滑り下り、着地すると立ち上がった。しかし、しばらくして彼はお尻を押さえて、後ろに捻るように跪いた。

「あの人…、痛かったんでしょうか…?」
「みりゃわかるでしょ…。あんなごつごつした岩をわざわざ滑って降りて来るとはねぇ…。普通に降りなさいよ…」
「おーい大丈夫かそこのおっちゃん?」
「バッチリや」

 すぐに振り向いて、親指を上に立てながら笑顔で立ち上がった。立ち直るまでの速度があまりにも速すぎて、一行はこけそうになった。
 男は立ち上がり、一行に近づいてきた。

「何なんだあのおっさん…!?」
「ところでお前ら、“異界黙示録”を探しとんのか…?」
「ふえっ…?」

 彼女はとぼけたような声を出した。突然“異界黙示録”の事を突き付けられたのだ。そう反応してしまうのも無理はない。